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最強魔法師の隠遁計画  作者: イズシロ
11部 第1章「不吉な贈り物」
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AWRの可能性



 アルスは仮想キーを巧みに操作しつつ、以前のAWRの魔法式一覧を開いた。


「俺も成長はしている。昔と同じで良いというわけでもないんだ。まず無系統の魔法式……ん〜まあ、この場合はショートカットキーみたいな物だが、この辺りは完全に不要だ。他系統についても魔力消費をそこまで心配しなくて良くなった。複雑な魔法式だけは構成に影響が出るから単一魔法式を用いなきゃいけないが……正直スペースの確保が困難だろうな」

「魔法式を削るということですか? 圧縮ではなく」

「圧縮はこれ以上不可能だ。それに二種のメテオメタルを使うことの弊害も考慮しなきゃならない。俺が使ったメテオメタルはかなりの質量があったからな。鎖に回せる分もあったわけだが」

「使えるメテオメタルの量がどれくらいになるかですか?」

「だから皮算用になりかねないんだ。ましてや一つ一つに特性がある以上、望むものができるとも限らない」


 アルスをもってしても、こればかりはどうしようもない。


「ですが、アルがそういった縛りのない条件で描いた設計図なのですから、理想形ということですよね」

「残念ながらな。こればかりはまだ魔法の方が融通が利く。それにエレイン女教諭に任せた鎖も使える部分はかなり限られているだろうな。ひとまずブドナの爺さんには伝えなきゃな」


 これが一番気が重い。

 老齢の名工で名だたるブドナ・ヨルツの最高傑作がアルスのAWRなのだ。アルス自身も心血を注いで共同制作したのだから、あれ以上のAWRはこの世界に存在しないと断言できる出来だった。

 ブドナの誇り、生きた証としてアルスのAWRはきっと上位に位置するだろう。


「ロキ、一応ブドナの工房に行って仕事の依頼を……いや、俺が直接行くか」

「そうですか。日程の調整は任せてください」

「あぁ、その時は頼む。さて……」


 アルスは以前に書き溜めた図案を開いて思案する。

 短剣型というのはアルスにピッタリあった形状だ。長剣であるメリットは魔法式を刻めるスペースしかないことくらいだろう。短剣であれば魔力刀を用いて刀身を自在に変えられる。


 物理的な刀身そのものも必要ないとも言えるが、全てを魔力に頼り切るわけにもいかない。

 刀身はもっと細く、鍔はシンプルに……この際片刃にしても良い。取り回しを重視しつつ、武器として活用できればいい。

 クロケルが使っていたようなシンプル過ぎる刀でも良いのだが、魔法も多用することを考慮すれば片手での操作性が必要だ。


「どうだ?」


 軽く手直しした図案をロキに見せてみる。

 すると彼女は頬を赤らめて「かっこいいです!」と即答した。

 実用面を重視したのに、見た目の評価を得たことにアルスは苦笑してしまう。かっこよさは求めていないが、わざわざダサいものを携帯するつもりはない。

 一先ずロキの合格はもらえたようだ。


「問題はいくつもある単一魔法式の方だな。鎖部分と本体部分の材質が上手く調和できれば理想的だが、難しいだろうな。それとそもそも鎖部分に用いるにしてもメテオメタルの特質が問題だな。あれは複数の系統の魔法式を一切干渉せず呼び起こせたからな。普通は阻害作用が生じる。だからこそ系統魔法式があるわけだが、俺には縁のないものだからなぁ」

「では無系統の系統魔法式を考案されてはいかがですか?」

「無なのに系統式か?」

「すみません、浅薄でした」

「わからなくもないがな。そもそも無系統に系統式は存在しない。基幹となる系統がないし、それに対応するロスト・スペルがない。そもそも系統式ってのは【最古の記述(レリック)】から抽出したものに過ぎない」

「そうだったのですね」


 専門分野の話だからかロキが知らなくとも仕方のないところだ。

 魔法式というものはそもそも出土した古代の魔法の式が基となっている。人間はそれらを最適な形に編集したに過ぎない。


 ふーむ、とアルスは図案を眺めながら思考を巡らせる。

 以前使っていた短剣型のAWRはアルスのポテンシャルを最大限に発揮できていた。改良するにせよ、現状としては手を加えられる部分が限られているのだ。下手に奇を衒うと扱い難くなるだろう。

 かといって、そうそう都合良く必要量を満たすメテオメタルが手に入るとも限らない。


(あるもので最善を尽くすしかないか)


この図案はあくまでも理想形の一つだ。1位であろうとこれを実現するのは難しい。


「仕方ない。最低限クリアすべきは単一魔法式だな。書いていた魔法だけでも五十は超えるからな。それをまた刻み込むのは不可能か」

「それなの……ですが」


 研究室内に響いた着信コール音がロキの続きの言葉を遮った。



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