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最強魔法師の隠遁計画  作者: イズシロ
第3章 「かつての栄華」
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夢見た世界と幼き少女

 アルスは自分が罠に掛かった獲物だと気付いた時、すでに手遅れだった。

 水は手首を放さない。

 単純な腕力では引き抜くどころか逆に引き摺りこまれる。


 そして偽りのイリイスの表面がボコボコと内側から押し上げるように波打つ。

 ――直後。


 無数に身体から水の棘が勢いよく生えた。ただの水でないことは魔力を内包し形を変えたことからもわかる。たとえ水だろうと魔法である以上容易く身体を貫通するだろう。


 上空の【異極引アシルド】は完成にはほど遠い。この一瞬で魔法として維持できなくなるほど魔力を吸収することはできない。

 魔法の選択など言っていられない。アルスは咄嗟に魔法を構築し眼前に放つ。


 水の身体に埋まったナイフの刃先から魔法が発現――瞬時に爆破散する。内部で小規模の【爆轟デトネーション】を撃つ。

 衝撃にアルスも吹き飛ぶが上手く空中で体制を整え着地した。


 イリイスは驚いたように目を見開き、含むように頬を緩める。

 それは明らかに過剰攻撃故だ。


「プハッハッハッハァ、ククッ……いや、すまんそこまで大した魔法じゃないんだ」


 破顔してお腹を抑える姿は見た目に違わない無邪気なものだ。


 直後、電撃が走った。

 アルスから放たれた電撃を意図も容易く防ぐ。まるで気にもかけていないように四つの尾が振り払った。そしていつの間にか上空に滞空していた【異極引アシルド】は尾を鞭のようにしならせ真っ二つに両断される。

 内包していた魔力とともに爆風となって空気が溢れ出した。


 アルスは奥歯を噛み腹立たしそうに見返す。

 あの魔法は使わせたくはなかった。直に見て確信する、最上位級魔法では計ることなどできない。



 アルスが過剰攻撃であの身代わりのような罠から脱したのは初めて見る魔法だからだ。下手に手を抜けば簡単に死ねる可能性すらある。

 外界でも当然のことだ。未知の魔法に対して用心に用心を重ねたとしても越したことはない。それがシングル魔法師に匹敵する者とあれば尚更だ。


 いつ魔法と入れ替わったのか……その答えは推測ではあるもののアルスは思い返す。一時も眼を離さなかったはずだ。恐らく彼女が最後に発した水の竜巻。

 あの一瞬だけは彼女を目視できていない。入れ替わるとすればあの時以外にありえないのだ。

 本人は竜巻に紛れて脱したのだろう。

 魔法で身代わりを作成することは不可能ではない。現に土系統の魔法ならばそっくりな土人形を造形することも可能だ。


 だが、自身の魔法とは言え水の竜巻に飛び込んで無傷でいられるはずはない。

 要約するならば、魔力はエネルギー体であり情報体であるだけだ。魔法として発現した物に対して間違っても人体を傷つけない意図はないはず。

 それはアルスをも攻撃の対象ではないと言っているようなものなのだから。

 

 意気揚々と不気味な笑みを浮かべ、未だ余裕を見せるイリイスへと向き直る。彼女は来た時同様、外見に変化はなく、ローブも綺麗なままだ。


「何か隠してるな」

「…………! どうかな」


 細めた眼でイリイスは内心苦汁を呑み込む。


(あれで気付かれるのかよ……)


 イリイスには他人にはない力がある。それ故に今の立場まで堕ちたのだが。

 本来彼女の100年にも上る魔力量でもこれだけ多彩に行使すればそろそろ疲労が見えてきそうなものだ。言うまでもなく今のイリイスにはまだ余裕がある。そう見えるのではなく実際に魔力の枯渇には遠い。それも水系統を使えばという限定付きではあるのだが。


 

 イリイスは深く呼吸を繰り返し乱れを整える。いつぶりに味わった焦燥感、確かに今のはヒヤリとさせられた。

 姿を消し、ダミーを残したが逃れたほうに違和感を持たれるとは思いもしなかったのだ。

 イリイスは誤魔化すように口を開いた。未だ優位は自分ですぐにでも殺し得る力があると。


「お前はもう終わりか?」


 そう発した直後、訓練場の防護壁が一層厚みを増した。



 20人以上の教員が等間隔に並んでいる。さすがに半透明というわけではなく、少し靄が掛かったような障壁だ。

 観客からのクレームは怒涛のように湧く。教員は一切反論せず黙々と魔力を注いでいた。


『観客の皆さまに申し上げます。苛烈になる試合にともない防護壁を強化させていただきます』


 フェリネラのフォローを経て次第に鎮静化する。誰が見てもわかるはずだ、いくら防護壁が対魔法用だったとしても心許ないと。

 騒ぎが収まったのは理由を述べたからだが、何よりも代替として大型の四面スクリーンが降りてきたからだろう。

 それほどまでにこの魔法戦は類を見ない規模で白熱している。

 次は何をしてくれるのか、何を見せてくれるのか、魔法がどれほど偉大で叡智ある力なのか、これを見た者は魔物の存在など頭の隅にもあるまい。

 今はただただ釘付けになった視線を離せないのだから。


 手に持った飲み物は疾うに握り潰され衣服を濡らしていた。それすら意に介さないのだからどれほど夢中になっているかがわかる。

 子供が目を光らせ魔法師を憧憬の眼差しで見てしまう。いや、それは子供であろうと大人であろうと、この場において皆同じモノを瞳に宿らせていた。


 同じ学院の生徒だろうとそれは変わりない。


「あれ、本当にアルス君だよ、ね」

「う、うん……」


 アルスと同じクラスの女生徒は顔を向けず発した。恐らく隣にいるだろう友人に独白のような問いが口を吐く。

 返ってくる返答も実に中身のない空返事だ。


「え、いやいや、だってアルス君って学期試験の結果普通じゃなかった?」

「たぶん、でもこんな試合……」


 ゴクリとカラカラになった喉が何も通さずに鳴ってしまう。

 偶然視界に入った見覚えのある大人。それは学院の生徒ならば一度は目にしたことのある人物だ。

 

「あっ! 先生なら何か知ってるかも」

「うん、絶対知ってる!」


 この好奇心に塗れた疑問を解消したいが一心だった。同意は声音の高さで示される。

 思いのほか大声で会話をしていた二人の女生徒は後ろに続く生徒に気付かず教員へと向かって人垣を割る。


「す、すみません、通して、通して下さい」

「あ、ごめんなさい」


 いきり立った視線を向けられ、女生徒は申し訳なさそうに、けれども急かされるように頭を下げながら最前列へと降りて行った。


「先生、あのっ……」


 振り返った教員は集中を乱されるとあって取り合わないようにしていたが、聞き覚えのある声に振り返る。

 そこには自分の講義を取ってくれている生徒が二人。名前までは覚えていなかったがさすがに前期の授業を経てまったく覚えられないということはない。


「二人とも何をしている、それに……」


 二人と言ってから気付く、その背後にも同学年だろう生徒が大勢集まっていた。

 さすがに話しながら障壁を張れるほど簡単な魔法ではない。ましてや他の教員と共同で展開しているのだから。


「悪いが今は忙しいんだ」

「すみません。では一つだけ聞かせてください。あそこで試合をしているアルス君は同じクラスなのですが先生は何かご存じありませんか? 私でも彼の使う魔法が異常な程高難度なのは見当が付きます」


 それについて教員も同じ疑問を抱いていた。まだここには来たばかりだが、ハイレベルなんてものでは片付けられない。学院内で1年生のアルスは教員の間でも有名な生徒だ。

 それもそうだろう。研究者も多い学院内で一番大きい研究室を持っているのだから。


 彼が何者なのか、さすがに理事長は知っているだろう。それを下っ端である教員に知らされていないということは推測する材料としては非常に単純だ。

 機密性が高い人物なのだろう。教員は安易な推測や予想を生徒に吹き込まないために口には出さなかった。

 しかし、口止めされていない以上自身の経験に基づいて意見を述べることだけは許容範囲内である。


 ここにいる教員は皆一度は軍に入っている。もちろんすぐに研究者として転身し机に向かう道に進んだ者も少なくはない。

 だが、彼は軍に5年は務めていた。もちろん外界での任務は僅かだったが、それでも彼は目安にするだけの経験を積んでいる。

 思い返しながら無意識に口が動いてしまう。


「まるでレティ様の戦いを見ているようだ――あっ!」


 呆然と自分に向けられる女生徒の視線に何を口走ったのか遅れながらに覚る。単に思ったことを言っただけだが、それを生徒がどう解釈してしまうかによって危うい立場になってしまうと思ったのだ。

 慌てて捲し立てるように口を開く。


「いや、違くてな、個人的な意見として聞いてくれ。私も実際に間近で最上位級魔法の撃ち合いを見たのは初めてで……」

「先生、本当ですかッ! 最上位級魔法って」

「お、おそらく……」


 訂正を加えるはずが、どんどんいらない騒ぎを誘発させている自分に気が付く。いや、もっと内側にある昂りに気付くべきだった。いつの間にか間近で見ていることで浮かれていたのだろう。

 魔法師を半ば諦めたとは言え、かつて憧れた存在――力を有した魔法師が目の前で至上の戦いを繰り広げているのだから。


 こんな試合は二度と見ることができないだろう。そう思えば高まる高揚も納得だ。


「やっぱり……アルス君って……」

「でも、相手の子も……」


 結論を口に出さずとも今の教員の見当を聞けば誰でも行きつける。

 だが、こんな夢でも見ているような戦いは一人ではできない。同様に戦う少女にも疑問が浮かぶ。

 見ればアルスよりも若く、まだ子供と言える見た目だ。


「君たちは一応離れていなさい」

「何でですかっ!! こんな機会滅多に」

「あぁ、滅多にない。だけど……」


 思考をリセットし、そう言って顎で同じように障壁に集中する教員を差す。


「訓練場の防護壁じゃ保たないだろうね。私たちが意地でも死守してみせるけど、念の為にね。見るなら後ろにしなさい」

「は、はい」


 そう言われては駄々をこねることはできない。

 女生徒は繰り広げられる魔法に心躍らせながらも、後ろ髪を引かれる思いで踵を返す。


 教員は生徒たちがチラチラとスクリーンを振り返りながらも戻って行く背中を確認して障壁に集中する。

 今はアルスがどんな事情で試合をしていようとどうでもよかった。

 教員は階下で戦うアルスを見て頬に汗を伝わせながら願うように言う。


「アルス君、頼むからこっちに飛ばさないでくれよ……それにしてもあっちの少女は一体」


 考えてもわからないものはわからない。

 教員は頭を振って障壁を張ることだけに専念した。



 生徒たちの中では幻想を現実のものとして捉える。

 きっと彼らは一様にこの試合がシングル魔法師に匹敵すると見ていた。彼らが計れる物差しの上限はシングル魔法師しかいないのだから当然と言えば当然だ。

 考えうる限界を超えた試合は予想を確固たるものとして見る者を魅了する。


 彼らが気にしているアルファが誇る1位。

 それを目の前にしている、と確証もないのに浮かれる心は無意識に跳ねていた。


 アルスにしても少女にしても生徒たちは信じていることがある。最強とは魔法師の中で最も栄誉ある称号だ。その頂きに立つ者は10万人を超える魔法師中最強である。

 だから最後に勝利を収めた者こそ彼らが願い、思い込む1位の姿なのだろう。


 気が付けば全校生徒に近い数が訓練場内を埋め尽くしている。魔法を知る者は息を呑むように英雄を見る憧憬の眼差しを向け、言葉を置き忘れる。



 アルスとクラスを共にする女生徒は全てではないにしろ、紐解かれる秘密に心躍らせていた。こんな近くに誰もが見ただけで分かってしまう高位魔法師がいたと。

 自分たちが目標とすべき姿を眼に焼き付けていた。



 ♢ ♢ ♢



 安い挑発に乗るべきか、そんな思案すら食指を動かす。アルスは戦いの中において一個人としての楽しみを抱いていた。まるで挑発すらも自分を鼓舞する発破に聞こえる。

 だが、感情の赴くまま行動の原動力にはしない。


 それでもあえて今の状況を形容するとするならば初めて競いあえるという単純で明瞭な言葉で言い表せるだろう。

 そう、やっとだ。

 魔物ではなく人の身でやっと自分は今まで積み重ね鍛え上げた力を競える。それを後押しするように障壁が展開されていった。


 防護壁による心配は緩和しただろう。

 アルスは自分が使える魔法を一段階解除する。さすがに最上位級魔法でも【永久凍結界ニブルヘイム】のような世界を塗り替える魔法は使えない。

 それでも制限が解放されたのはありがたいことだ。


「いいや、これからだ」


 不敵な笑みは生徒のそれではなく、1位として外界で――軍で経験した全てが集約されているような淡白で裏表のない笑みを湛えていた。


 思考は熱暴走を感じさせないほど滑らかに高速回転している。何も問題はない。不思議なほどに冷静だ。


(ここまでは一杯食わされた形になったが、ここからはこちらが披露してやろう……まずはあの魔法を正確に把握する必要があるな)


 アリスが使用した【光神貫撃シリスレイト】の速度は人間の反射速度を超える。到底視認してからでは反応できない速度のはず。無論まだまだ未熟ではあるのだから過大評価し過ぎただろうか。

 ともあれ、それを易々と後手で打ち砕いたことを考えても尾はアルスでも捉えるのは至難。


 アルスはナイフの切っ先をイリイスに向ける。


「こんなのはどうだ?」


 周囲の至る所の空間が捻じれ無数のナイフが創造されていく。


「それも初めて見るな……面白い、試してみな」


 中空をうねる4本の尾はまるで犬種が嬉しさを表現するように尻尾をバタつかさせる光景に似ていた。


 ざっと見ただけでもアルスの周囲には200近いナイフが出現し射出を今か今かと滞空している。空間干渉魔法の複合。


「【朧飛燕オボロヒエン】」


 魔法名が告げられた直後、複製した魔力刀が一斉に射出される。全てが狙いを定め確実に追尾した。しかし、イリイスは一歩も動かない。

 その必要がないのだろう。


 アルスも承知の上だ。あの尾がどれほどの性能を秘めているのか、それを確かめるための魔法だ――一先ずは。


 イリイスは半身になり前のめりに屈み、神経を尾に集中する。

 全ての尾が独立して魔力刀を叩き落としていく。実際は叩き落とすと言っても圧倒的だ。一本も後ろに取りこぼさず、的確に構成そのものを粉砕する。


 ガキンッ!!!


 その内の一本だけは実体としての金属音を発した。

 全てを魔力で構築したものと思い込んでいたイリイスはまんまと誘導されていたことに気が付く。


 隙間なく迫りくる魔力刀を叩き折りながら視界の端で実体あるナイフを見る。

 弾いたナイフの先端に煉獄の炎が生み出された。


「【煉獄アストラル・サン】」

「小癪な!」


 魔力刀を弾いていた尾の内、1本を完成する前の魔法に走らせる。瞬く攻撃ではあったが煉獄の火球は真っ二つに割れた。

 直後、爆発が巻き起こる。


 尾で身を守りながら爆発の衝撃に逆らわず、突き立てた尾で空中に逃れた。

 煙の中から飛び出たイリイスは更に下から追撃してくる魔力刀を鬱陶しそうに巨大化した尾で一気に粉砕する。


「多彩な魔法を使いやがる。一体何系統使えるんだか」


 悪態を吐くように真下のアルスを睨みつけた。

 しかし、返って来たのは不気味な笑み。


 イリイスはアルスの口の動きに注視する。これだけ離れていれば聞き取ることはできないだろう。しかし、何を彼が発したのか読み取るのは簡単だった。


堕ちろ・・・

「――――!!」


 空中で反転したイリイスは尾を伸ばす。防護壁に二つの大穴が空くが運良く二階と三階の中間の壁面に突き刺さり減速する。

 そこには低くなった天井が鋭利な切っ先を伸ばしイリイスの喉元に待機していた。


 無数に並び立った氷柱。


 眼前で止まれたのは良いが……。


「【凍獄デスピア・エクスキュート】か!!」


 このタイミングで連続して魔法を行使してくる戦略の組み立て、イリイスは自分がここに誘導されたことに怒りを覚えた。

 なんて不甲斐ないことか、ここまでいいように動かされたが結局この程度で打ち取れると思われたことが何よりも腹立たしい。


 聞こえていないだろう小声でイリイスは鬱積を吐きだした。


「舐めるなよ小僧」


 氷柱が揺れ、落下する。

 尾で固定していた身体を逆に地面へ落ちるように力を向けた。凍獄デスピア・エクスキュートよりも速く落下する空中で全ての尾が氷柱を全て打ち砕いていく。

 魔力は問題ないが尾を使うための体力が減りつつある。やはりこの身体では体力的な問題は付き纏う、尾に引っ張られるが今はそんなことも言っていられない。


 相手もここまでしたのだ。出し尽くしたと考えるのは当然。

 それでも彼女が知る魔法師を超える。魔力量だけでも自分を上回るだろう。


 1位は伊達ではなかった。そうイリイスは評価を下す。

 自分の敵ではなかっただけのことだ。久し振りにこれほどの戦いができた、魔法戦でここまで追い詰められたのはそれこそ初めてだろう。


 不思議とこれ以上ない程に清々しく満ち足りた気分だ。


 キラキラと氷柱が透明な魔力残滓を降らせる。落下までの少しの間で反転したイリイスは立ち竦むように自分を見るアルスにほくそ笑む。

 1位を超えた。無意識にそう思ったのはきっと犯罪者になる前は一人の魔法師として誇りを持っていたからだろう。


 人類を救う一助としての自負があったからだろう。

 順位に憧れていたからだろう。 

 魔法師の頂点に立ちたいと必死になったからだろう。

 当時は純粋な気持ちで魔物と戦う日々に充足感を感じていた。あの頃が懐かしい。あの輝いていた日々が愛おしい。



 哀愁を漂わせるのは鼓膜を振るわせる歓声のせいだろうか。

 それでも良い。こんな気分は久しいのだから。


 だが……そう……だが・・……。


(今は違う。もう認められない……誰にも……誰からも……)



 自分の功績は色褪せ、闇へと葬られた。

 なんでこんなことになったのか。

 なんでこんなことをしているのか。


 答えは疾うに出ているのに自問自答せずにはいられない。だって、眼下には彼女が羨望した位に位置している人物がいるのだから。

 もういくら望もうが、手を伸ばそうが届くことがない。


 それはイリイスがいる暗闇とは対照的に光に満ちている。眩し過ぎる優しい光は直視することもできなければ掴めるはずもない泡沫の幻なのだから。

 




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