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「ゴットフリードヴォルフガング」   adventure of german student W・アーヴィング作 w irving (旅人の物語集)より。  ダークファンタジーの傑作。

作者: 舜風人

「ゴットフリードヴォルフガング」       原題(ドイツ人学生の冒険)1824年アーヴィング執筆



フランス大革命まっ只中のころだった。一人の若いドイツ人が嵐の夜パリの古い町並を抜けて自分の宿舎に向かって歩いていた。


ところでこのドイツ人はいったい何者?

この男、ゴットフリードボルフガングは良家の出でゲッチンゲンでしばらく研究生活をしていたのだが、

彼の研究とはもっぱら精神病理的な神秘の研究であって、スエーデンボルグの心霊科学に傾倒していた。


そのため次第に憂鬱と悲観で心が侵されて次第に世間から遠ざかり隠遁生活さながらの生活と化していた。

それを見かねた友人が、転地療養を進めてこうして今パリに滞在しているという次第だったのだ。


始めてみる巴里は革命の熱気に満ち溢れていた。しかしやがてほどなく恐怖政治と鮮血の処刑の連続に彼の心はむしろドイツにいる時よりも暗くふさがれてより一層ひきこもってしまうのだった。

彼が出かけるときといえばパリの大図書館とか暗いソルボンヌ修道院。あるいはカタコンベの墓地くらいだった。


そんな彼ではあったが心の中には一つの女性の理想像があり、その理想像といつも心を通わせていたのである。


さてそんなゴットフリードヴォルフガングが、今、、嵐の夜、古いパリの街並みを抜けて帰宅途中だった。

雷は鳴り、尖塔はがたがた震え、そんな中彼は公開処刑場の広場へと差し掛かった。

そこには稲光が、血糊のこびりついたギロチンを妖しく照らし出していた。

おそらく今日も昼間にはここで大量の処刑が行われたのであろう。

恐ろしさに震えながらゴットフリードヴォルフガングはそこを通り過ぎようとした時だった。

稲光にてらしだされてそこに黒い影が浮かび上がったのだ、


ぎょっとして目を凝らしてみるとそれは黒い服をまとった女性だった。

しゃがんでうつむいて黒髪が長く垂れ下がっていた。

おそらく処刑された者の親族だろうか?こうして死者を悼んでいるのであろうか。

彼は同情に囚われてその女性に声をかけた、

ふっと頭をもたげて彼を見つめた彼女の顔は、はっとするほど美しかった。

しかし、、そのわびしげな表情は蒼白だった。

「こんなあらしの夜にどうされたのですか?」

おんなは無言でギロチンを指差した。そしてこういった。

「アイ・ハブ・ノー・フレンド・オン・アース」

(私はこの地上に友人がいない)

「でも家はあるんでしょう?」とボルフガング。

「イエス・イン・ザ・グレイブ」

(ええ、お墓のなかにね)


彼はこの見知らぬ女性に深く同情し自分の宿舎を一夜提供しようと申し出るのだった。

彼のドイツなまりのアクセントは誠実さをあらわして、この女性の心を動かしたようだった。

女性は申し入れ受け入れてボルフガングの跡に従った。

もうそのころには、嵐は収まっていた。

ソルボンヌをぬけてロワール沿いに行くと、やがて彼のアパートが見えてきた。

彼のアパートに女性を招じ入れると灯りの中で彼はまじまじと女性の姿を見ることができた。

彼女の顔は蒼白だったが髪の毛は漆黒で光沢があり瞳は大きくブリリアントで野性的な光を放っていた。

そして黒いドレスは彼女の体をシンメトリーに包んでいた。

唯一の装飾品は彼女の首に巻かれた黒い分厚いカラーだった。

ボルフガングは言葉を込めて彼女を慰めた、それは次第に彼女の信頼を獲得したようだった。

彼のテンションは高まり、次第に夢に見た理想の女性像と彼女を一体視して

この女性こそ運命の女性だと信じるのだった。

「なぜ別れる必要がありますか?私たちは心も魂も一緒ですよ。名誉も体面も無用ですよ。

高い次元で私たちは結びついてるんですから」

見知らぬ女性は熱心に耳を傾けていた。

「あなたは誰も家族がいないといった。でも・私が家族になりましょう。あなたは私のすべてです。

永遠に誓います、私はあなたの手を取って。」


「永遠に?」見知らぬ女性は言った。


「永遠に!」ボルフガングが繰り返す。


手を握りしめて見知らぬ女性は「私はあなたのものです」といって彼の胸にほほをうずめた。


、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、


翌朝彼は眠っている花嫁をそっとしておいてもっと広いアパートを捜しに出かけた。


帰って来ると彼女はベッドの上に頭が引っ掛かり体は不自然に放り出された形で横たわっていた。


目ざめさそうと手を引っ張るとその手は氷のように冷たく、、、、


彼女は、、、、、、死体だった。


ボルフガングは仰天して警察を呼んだ。


やってきた警官は尋ねる。


「あなたはどこでこの女性と知り合いましたか?」

「昨夜、ギロチン台のところで」


そういって警官が検視のために彼女の首の黒い分厚いカラーを引っ張ると

彼女の首がごろんと抜けて床に転がった。



それを見ると学生は狂気に取りつかれたようになって、


「悪魔だ。悪魔だ。悪魔がおれをとりこにした。

俺は永遠に失われたんだ」



彼は悪霊が自分を地獄に落とすために、

死女を復活させたという妄念に取り付かれて、

その

妄想がとうとう回復せずに、その後精神病院へ送付されて

そこでほどなくして、そこで、死んだという。







ここで幽霊話の紳士の話は終わった。


「この物語は真実ですか?」別の紳士が聴いた。


「疑いのない事実は、、、、、この話は私がパリの精神病院で直接、


ボルフガングから聞いたということですよ。







終り
















ワシントン・アーヴィング原作、

wasington irving


「旅人の物語集」1824年刊行から

tales of traveller


「ドイツ人の学生の冒険」

adventure of german student


秋山川  早風蓮、   翻訳(というより、、意訳です)。















































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