~再会~
長い長い階段を一歩一歩確かに登っていく。全部で何段だろうと、一度数えたことがあったけれど途中で諦めてしまったことを思い出した。
いつもの切り株。他の人から見たら、きっとどれも同じように思えるかもしれないけれど、少なくても僕には見分けがついている。そこには――彼女が立っていた。
「っ!」
木々の間から差す光が照らす黄金の髪は七年前と同じく、腰までとはいかなくいがかなり長い。顔立ちもあのときからかなり大人っぽくなり、長い睫毛や薄い桜色の唇などがその印象を強めている。いかにも御嬢様といった装いの服は、彼女の気品に満ちた容姿に合っていた。
「~~~♪」
曲は歌詞から考えて、辛い恋の歌だった。彼女の透き通った声がどこまでも響いていく。
彼女が歌い終えると僕は、七年前までと同じようにスッと木の陰から姿を現した。
「ぱちぱちぱち」
幼稚な拍手が山の中で反響することなく鳴る。何故、彼女の歌はあんなに響いていくような感じがするのか不思議だ。
「誰?」
いかにも不審そうな顔で僕を見る。
「覚えてない? 僕だよ」
僕のこと、覚えててくれてるかな?
そんな僕の期待をよそに彼女の応えはこうだった。
「誰か知りませんけれど、ここは私の家の領地です。早く出て行って下さい」
「……え?」
その、不審者を見るかのような目が僕を捉えていることがわかり、絶望が心の奥からやって来た。
「聞こえませんでしたか? 早く出て行きなさいと申したのです」
「ちょ、ちょっと待って!」
強引に僕を追い出そうとする彼女に話しかける。しかし、彼女の目は冷ややかなままだ。
「僕のこと、覚えてないの?」
「私、貴方と会ったことがあります?」
あくまで初めて会ったかのように話す彼女。
「だって、七年前に――」
「七年前? そんなこといつまでも覚えているわけないでしょう」
何で、何で彼女からこんな言葉をきかなくちゃいけないんだ。
「まず、本当に私でしたか? 誰か違う人と間違えているのではありませんか?」
何で、彼女が僕のことを忘れてるんだ。
「私を騙そうとしてわざと嘘をついたのではないですか?」
――私たちが大きくなったら、一緒にいきましょう。
あのときの言葉は嘘だったのか?
「何、泣いているのですか。早く出て行きなさい」
「……わかった。戸惑わせて、ごめんなさい」
声が震えていた。涙が頬を伝っているのにも関わらず、僕は逃げるように走り出した。