お目通り
『お兄ちゃん、今日学校が終わったらその女の人を連れてきて』
受話器越しに、有無を言わさぬ口調で比奈が言い放つ。
「いや、待ってくれよ。そんな急にどうにかできる話でもないだろう」
目の前に妹がいるわけでもないのに、蓮はへこへこと頭を下げる。
『なでなで禁止一週間にするよ』
「…善処します」
また一つ、蓮を悩ませる厄介ごとが増えてしまった。この調子では胃に穴があいてもおかしくない。
妹の要望を叶えるために、蓮は貴重な権利を手放すハメになった。
「そんな事でいいならお安い御用だけど…家に連れ込んで何かするつもりなの」
「しねぇよ。比奈がお前に一度会っておきたいんだと」
美咲はわけがわからないよ、という顔をしているが、蓮もわけはわからない。かくして、美咲の妹へのお目通りが執り行われる次第となった。
柳川家。四人がけソファの片側に比奈が、そしてその向かい側に蓮と美咲が並んで座っている。これから何が始まるのか分かっていない美咲はキョトンとした表情。対して、蓮は妹から下される処罰をじっと待っていた。
「お兄ちゃん」
「……はい」
「私は応援するよ!」
「……はい?」
「こんな綺麗な人とお付き合いしてるなんて知らなかったよ!これも柳川家の発展のため…妹の私は身を引くとするよ」
「ちょっと待って!てか身を引くってどゆこと⁉︎」
「お兄ちゃんにもついに妹離れの時が来たんだね…」
「来てない!なんかしんみりするのやめて!」
必死に妹に縋りつく蓮をみて、美咲はドン引きしていた。自分が『眷属』にしようとしていた男の見たくもない醜態を目にして、やっぱり思い直そうかと考え始めている美咲であった。




