ゴシップ
「お前昨日俺を食い物とは思ってないっていったよな…?」
やつれた顔で蓮は隣にいる美咲を問いただす。
「それは…あなたがどうしても起きなかったから…」
自分がした事に少しは責任を感じているのか、美咲は蓮と視線を交えようとしない。
「本当に何が起こったか分からなかったんだからな」
「ごめんなさい。いつかこの埋め合わせは必ずするわ」
目が覚めてすぐに、蓮は怒り狂う妹を言いくるめるというミッションをこなさなければならなかった。携帯には一時間起きに朝まで着信が残されており、無事を伝えたものの、今日一日なでなで禁止を言い渡されてしまった。蓮に癒しを与えてくれる唯一の存在が失われたことは、彼の精神を憔悴させている一番の要因であった。
「半端なことで済むと思うなよ」
「それ以外の事はなんでもするから…下着を嗅ぐのだけは勘弁して頂戴」
「俺にそんな性癖はねえよ!」
二人が教室まで一緒に入って行くと、クラスメイトの視線が一斉にこちらに向けられた。
「…朝帰り…」
「…あれはもう事後なのかな…?」
なんだか不穏なワードがクラスを飛び交ってきた。居心地の悪さを感じながら自分の席へ向かうと、後ろの男子生徒が肩に手をおいてきた。
「柳川、男なら責任はとれよ」
「はぁ⁉︎」
何やら根も葉もない噂が流れているようだ。蓮は事の元凶に思い到り、それを目の前にこう言った。
「俊、お前か」
「正解♪」
「てめぇえええ‼︎一発ブン殴る‼︎」
蓮に胸ぐらを締め上げられる俊だが、臆した様子を見せない。
「少し落ち着きなって。皆こっち見てるから」
「チクショウ!」
こいつには学校が終わってから生き地獄を味合わせる、蓮は強く決意した。美咲の方はというと、「いつから付き合ってたの?」とか、「大人の女になったのね」などとゴシップ好きの女子に迫られててんやわんやになっている。
これがしばらく続くと思うと、頭が痛かった。




