警告
「この一帯は『高橋』一族が取り仕切ってるの。全部で数十人になるから、かなりの規模の吸血鬼集団よ」
「それが、お前を脅かしてるやつらなのか?」
「えぇ。彼らはこの地域にいる他の吸血鬼の活動を厳しく管理してる。従わない場合は、実力行使も問わないわ」
「吸血鬼同士でも闘うことがあるのか」
「今の時代はしょうがないのよ。皆生きて行くのに必死だもの」
「それじゃあーー」
連が疑問を口にしようとした時、それを遮る様に玄関のチャイムが鳴らされた。
「客か?」
「噂をすればというやつよ……」
苦々しい表情で、席をたつ美咲。玄関の扉が開かれると、何人かの男の姿が目に入った。
「おや、まだこちらにいらしたのですね」
いやらしい笑みを浮かべ、長身の男が芝居がかった調子で言う。それに合わせて、後ろの男達も嘲笑する。
「…何の用かしら」
「いえ、この度私共の管轄する地域の皆様にお伝えすることがございましてね。こうして、ご挨拶に伺ったという訳です」
「早く本題に入ってくれないかしら。私はいま忙しいのよ」
「では、単刀直入に申し上げましょう。近々、我々『高橋』の傘下が新たにこの地域に参入することになりましてね。…くれぐれも、ご自分の領域をお誤りにならぬよう」
隠しもせず、忌々しげに舌打ちする美咲。そんな彼女の様子を満足げに眺めていた男だったが、今更奥にいる蓮に気がついたようだ。
「もしや、あれは貴方の『木偶』ですか」
「違うわ!私がそんなことするわけないでしょう!」
「それは良かった。食い扶持ちに困窮してプライドを捨てられたのかと思いましたよ。いまや『木偶』を作るのは禁忌とされていますからね。このエリアから犯罪者を出さずに済んだというものです」
「帰って頂戴」
「おぉ、恐ろしい。そろそろ退散するとしましょう」
控えの者達に帰ることを告げると、肩ごしに男は蓮に視線をおくってきた。
「そこの貴方。せいぜいこの女に『食い物』にされないよう気をつけることです」
突然吹き込んできた風の音が止むと、最初からそこには何もなかったかのように、男達は姿を消していた。




