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最強の眷属  作者: しば
3/25

使命

その日の放課後。またしても教室には蓮と美咲だけが残っていた。

「それで…俺は何をすればいいんだ?」

不満タラタラな声音で蓮は美咲に問いかける。そもそも、写真をネタに揺するというのは普通男女が逆のシチュエーションだと思う。

「そう焦らないでくれるかしら。今まさに説明をしようというところだったのだから」

「フン…」

美咲はあくまで偉そうな態度を貫き通すつもりらしい。所々綻びが生じている気がするが、それは今言うべきことではないだろう。

「私が普通の人間じゃないってところまではいいわよね?」

「あぁ、邪気眼ってこと?」

「ちが…、馬鹿にしないで‼︎」

ちょっとした茶々のつもりだったが、美咲の地雷を踏んでしまったらしい。今後の事も考えて、詫びを入れておくべきだろう。

「わかったよ、ちゃんと黙ってきく」

「今度言ったら絶対許さないから」

ごほん、とわざとらしく咳払いし美咲は場を仕切り直す。

「まず、昨日の事からね。あの時私があなたを襲ったのは、血を吸うためだった」

やはり、あの出来事は幻などではなかったのだ。そう確信を得た蓮は、核心に迫る。

「お前は……吸血鬼なのか」

「民間で語られているものとは少し食い違うけど、大まかな認識はあってるわ」

どこか誇らしげな様子で語る美咲。

「でも、素手の人間にやられたよな」

「ゲフン、あれはえと、その、相手が悪かっただけよ‼︎」

どうやらこれも聞いてはいけないことだったようだ。ごく自然に次の質問に移る。

「吸血鬼ってほら、牙が生えてるんじゃないの?お前もあるんじゃないのか」

「そんなものあったら即バレちゃうでしょ。こうするのよ」

美咲が自分の首に指を這わせる。すると、瞬く間に人差し指の爪が注射針のように切っ先を尖らせ、皮膚に侵入していく。変形した爪が元の形に戻ると、美咲のうなじ辺りから静かに血が流れ始めた。

「…!」

このままでは失血死してしまうのではと危惧した蓮だが、彼の予想に反して、傷口はものの一瞬でふさがってしまった。

「やっぱり、何にでも変身できるのか」

「無理ね、出来て体の一部分まで。例外もいるけど。体を霧にすることは出来るわよ」

砂糖が水に溶けるのを思わせるような光景と共に、美咲の身体が消失する。先日彼が美咲を束の間見失ったのも、この能力によるものだろう。陽炎の様に揺らめきながら、美咲が再び姿を現す。

「その辺はイメージと変わらないんだな。日光には当たって大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃないわ。あまり当たると、お風呂でものすごくヒリヒリするもの」

「それはただの日焼けだよ…」

日光に関しては一番気になっていたが、全く問題ないらしい。

「お前はどうして俺を『眷属』にしたいんだ?」

「それは…」

先程まで饒舌だった美咲が、途端に口ごもり始めた。唇を引き結び、何かに耐えるようにして俯いている。このまま彼女の口は閉ざされるかと蓮は思ったが、しばらくの後に美咲は少しずつ喋り始める。

「私の一族は、今はもう皆死んでしまったから」

彼女の口をついて出た言葉に、蓮は驚きを隠せない。ここではないどこか遠くを見つめながら、美咲は語る。

「それは私の一族に限った話じゃない。世界中で吸血鬼は窮地に追いやられてる」

「私はこの数十年、日本の至るところを点々とする生活を続けてきたの。一つの土地に留まることができたのは、せいぜい半年くらい。私の種族は弱い部類だったから、縄張り争いにあぶれてきた。この土地には一年弱いるから、それでも落ち着けてる方なのよ。

でも、この土地に新たな一族が移りすんでから、私は迫害されるようになった。生きていくのに最低限の血にありつくので精一杯。でも、私はこの血にかけて一族を絶やす訳にはいかないの。だから……力をもったあなたにあの日声を掛けたのよ。あなたには、私の『最強の眷属』になってもらわなければならない」

それまで静かにじっと聞いてきた蓮は、おもむろに口を開いた。

「……そいつはお断りだ」

「今の話聞いてた⁉︎」

目を見開いて取り乱す美咲。

「要はこの町にお前が居られるようにすればいいんだろ?『眷属』になるのは御免だが、それぐらいの協力はしてやるよ」

「そんな事が、…あなたに出来ると言うの?」

「信用しろ。俺はお前を倒した男だからな」


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