涙
獲物を失った蓮は、博文が霧散を使い始めたことにより、カウンターを入れることすらままならない状況に追いやられていた。
「霧散を使っていない時点でハンデを付けられていることに気づかなかったんですか?」
(くそ、こんな状況でお喋りなんか出来るわけねぇだろ!)
オーバーワークをしている蓮の体は、もう言うことを聞かなくなりつつある。
「そしてもう一つ」
博文の拳が蓮に迫り、
(これで決める!)
連が蹴りを交差させる。
「私は最初から攻撃をよける必要などありません」
蓮の脚が大きく払われ、
ーー爆散した。
美咲の目の前で、蓮の脚が吹き飛ばされていく。頭の中が真っ白に染まり、感情だけが彼女の体を突き動かす。
正気を取り戻した頃には、蓮は彼女の腕の中で真っ赤に染まっていた。
「蓮くん!蓮くん‼︎」
蓮がいなくなってしまわないように、美咲は必死で呼びかける。砂袋のように重くなった蓮が、消え入るような声をだした。
「美咲…まけ…ちまっ、た…」
「嫌!いやいやいやぁ‼︎」
駄々をこねる子供のように美咲が泣き叫ぶ。蓮は震える掌を美咲の頭にのせてあやすように撫で、ついに沈黙した。
息はしているため昏倒しただけのようだが、かなりの血がとめどなく流れ続けている。このままでは、蓮の命の灯火はすぐに消えてしまうだろう。美咲は強く唇を噛みしめ、彼女の顎から血の雫が滴る。
「すぐにお二人とも楽にして差し上げましょう」
博文の影が迫る間際、
美咲と蓮の唇が重なった。




