窮地
鉄パイプを使うことで、蓮はリーチで博文に大きく差をつけることができる。蓮は防戦一方だったこれまでとは違い、攻めの姿勢に転じた。
しかし、結果から言えばそれは間違いだった。
蓮は安全圏から次々と攻撃を仕掛けていくが、軽やかな足捌きで博文はその全てを回避していく。埒が明かないと判断した蓮は、剣道技、「突き」を繰り出す。がーー
それを斜めから博文の脚が蹴り上げると、鉄パイプが真ん中から凧糸のように千切れた。
「マジ……?」
「一つ勘違いを訂正しておきましょう。貴方が獲物を使ったところで、ハンデとしてすら機能しないということを」
再び、攻守が逆転する。
三人から二人に絞られたためか、美咲と対峙する男達は先程よりずっと連携がとれ始めていた。
(人数が減ったのに不利になるなんて…)
無駄な思考に没入していた美咲の視野が狭まる。直蹴りを喰らう寸前で、彼女は男の脚を目で捉えた。
(…避けられない!)
時間が停止する。美咲は、脇腹を上腕で庇い、それと同時に霧散を発動させた。
再び実体化した彼女の片腕は、青黒く変色している。完全に折れてしまった腕は、暫くは使い物にならない。脂汗を流し、その場にうずくまる美咲。
「ぐっ…!」
だが、こんなことをしている場合ではない。これは好機。男達はすぐにでも追撃を加えるはずだ。そして、美咲は決断した。
「な、」
突如空中に現れた少女の攻撃に、男の対応が遅れる。
「寝てなさい‼︎」
顎を真下から蹴り上げられた男は、何メートルかの距離を転がり、ぐたりと意識を失った。それを目の当たりにした男は、霧散する暇もなく美咲の凶刃に貫かれ、地に倒れ伏す。美咲は、辛くも勝利を収めた。




