決意
「あなた、まさか変なことしてないでしょうね」
一つでも嘘を言えば殺す、と目で訴えながら、美咲は蓮を尋問する。
「滅相もない!こちらからは指一本とて触れておりませんとも」
「そもそもどういう事なのこれ? 比奈ちゃんもいつの間にか居なくなってるし」
「恐らく、あの二人に図られたものかと。きっと今頃ほくそ笑んでいるに違いありません」
下手に出すぎて、蓮は殿のご機嫌取りをする臣下さながらの様子だ。
「もうそんな卑屈にならなくていいわよ、だいたい分かったし。それに、あなたがそんな事をしないって、私は知ってるから」
「……さんきゅ」
まぁ、実際にはいつもなんとか我慢できてるだけなのだが。それでも、美咲が自分の言葉に少しの疑念も見せなかったことは、蓮の心を軽くしてくれた。
「それより、今日よ。分かってるわよね」
「あぁ」
二人の雰囲気が硬質なものに変わる。お互いに頷きあった彼らの間に、もう言葉は必要なかった。
全てを見守っていた俊は、後ろにいる比奈に下がるように目配せする。
「(しばらく、二人にしてあげよう)」
不満げに頬を膨らます比奈を、なんとか宥めすかす。もう充分面白いものは見ることは出来たし、今の二人に水をさすほど俊は鈍感ではない。扉に背を向け、階下のリビングへと忍び足で歩いて行った。
「ありがとう、比奈ちゃん。とっても楽しかったわ」
「またお泊まりしにきてね?」
「そうね、また来させて頂きたいわね」
言葉には出さずとも、絶対また来られるようにしなければ、と美咲の顔が語っているのが蓮には分かった。そしてそれは、彼にかかっているといっても過言ではないのだ。
(東郷は、絶対にこの町から居なくならせたりしない)
己の拳とともに、蓮は決意を固めた。




