企み
「これ、すっごく美味しい!お店に出ててもおかしくないわよ」
「もう、美咲さんたら〜。おだてても兄しかでませんよ」
「勝手に俺を売るな」
四人の前には、蓮でも月に一度かという豪華な料理が並んでいる。比奈達が二時間は前から作り始めていたのだ、その気合の入りようは尋常ではなかった。
「俊は相変わらず料理美味いよな。俺にはとても真似できないよ」
「好きでやってるだけだよ。それにいっつもこんなもの作ってるわけじゃないし」
自己主張は少ないものの、俊は基本的なスペックは高い。蓮は知らなかったが、妹によれば女子の評価は中々いいらしい。
食後のデザートまで作っていたらしく、彼らはその後もしばし舌鼓を打っていた。
「嘘、もうこんな時間?」
美咲が時計をみて驚きの声をあげる。それを合図に、俊と比奈が瞬時に目配せしたのを蓮はちゃんと気づいていた。この二人は共謀している。
「美咲さん、一人暮らしなんですよね。この時間に帰るのは危ないですし、よかったら泊まっていきませんか?」
「でもそんな、そこまでお世話になるのは悪い気が…」
「うちは来客用に布団もパジャマも余るほど用意してますから。俊さんもよく泊まりにくるもんね?」
「そうだね。僕も今日は泊まって行くつもりだし、東郷さんもお言葉に甘えさせてもらわない?」
「そうね…えと…」
まだ踏ん切りがつかないのか、美咲は蓮の顔色を伺う。
「お前がそうしたいなら全然構わないぞ。遠慮する必要はない」
「それじゃあ、そうさせて頂きますね」
「やたっ!美咲さんいっぱいお話ししようね!」
なにか裏は感じるが、無邪気に喜ぶ妹を見てまぁいいかと思う蓮であった。
女子二人が先に入浴を済ませ、その後に風呂に向かった俊が湯気を纏って蓮の部屋に帰ってきた。
「ありがとう。使わせてもらったバスタオルはここに置いておくね」
「あぁ、んじゃ俺も入るとするか」
俊と入れ違いに部屋を出て、蓮は廊下を歩く。途中、比奈の部屋を通る前に、自然と耳がそちらに行ってしまう。同年代の女子が泊まりにきたことなど初めてなので、少し落ち着かない。雑念を振り払うように、蓮はシャワーを浴びた。
「で?実際蓮と東郷さんはどこまで進んでるの?」
「修学旅行じゃねぇんだからよ。何回うちに泊まりに来たと思ってんだ」
「いいじゃん。あの頃蓮は女っ気なかったし、聞いても無駄だって分かってたから。さぁ、観念しなよ。もうキスはしたの?それとも全部済ませた?」
「それだけは断じてない」
「はぁ、東郷さんにも蓮のDTフィールドは破れなかったか…」
「別に俺の身持ちが固いわけじゃねぇよ!」
しかし、吸血というのは、考えようによってはキスなどとは比べものにならないほど「イケない行為」だという気がする。そんな考えが頭に過ぎり、蓮は静かに赤面した。
しばらく横になってピロートークをしている内に、蓮は眠気に逆らえなくなって寝落ちしてしまっていた。熟睡したことを確認し、俊は計画の実行を開始する。比奈からもメールでスタンバイが完了した旨が伝えられてきた。
「面白いものみせておくれよ」
俊は安らかな寝顔に、不穏な笑顔を投げかけた。




