成果
一週間が立った。この間、活動を制限された美咲はろくに夜中に歩きまわることもできず、結局数日おきに蓮が血を与えることとなった。
それ自体は別に良いのだが、蓮はあることに頭を悩ませていた。言ってしまうと、美咲に血を吸われる度に、ものすごくムラムラするのだ。ただでさえ体を密着させる行為。蓮は妹の顔を思い浮かべ、自分の本能を押さえつけることに必死だった。
だが、そんな事ばかりしていた訳ではもちろんなく、蓮は着実に成長していた。特訓が終わった今、彼は霧散が『見える』。美咲の判断により、明後日はいよいよ夜の町に繰り出すことになっていた。
決戦を明日に控え、今日一日は美咲から休みを言い渡されている。蓮は久々に俊と連れ立って帰宅することにした。
帰りのホームルームが終わって、俊と雑談に興じる蓮のポケットの中身が振動する。着信画面には「柳川比奈」と表示されていた。
「もしもし、どうした」
『お兄ちゃん、今俊さんとお話できる?』
「あぁ、隣にいるから代わる。俊、比奈からだ」
大体の事情は察したのか、俊はすぐにスマートフォンを受け取り通話にでる。中学の時に度々蓮の家に遊びに来ているので、俊は比奈にとって幼馴染に近い関係だ。
「比奈ちゃん?久しぶりだね。うん、うん…そうだね。じゃあお言葉に甘えさせてもうらうよ。東郷さん?あぁ、まだ教室に残ってるから声かけてみようか?」
「何で東郷の名前が出てくるんだ?」
蓮は疑問を漏らすが、通話中の俊はそれに答えを返さない。受話器を耳にあてたまま机をジグザグに歩いて行き、美咲にそれを手渡した。一瞬戸惑った様子を見せたが、比奈の声を聞いて美咲は表情を輝かせている。
「うん、是非行かせて頂くわ!それじゃあ、また後でね」
話が終わったのを見計らって、蓮は二人に合流し電話を受け取る。自分だけが事情を知らず、なんだか蚊帳の外にいる気分だ。妹は一体何を企んでいるのだろうか。
「何の話をしてたんだ?」
「比奈ちゃんが、夕食を皆で食べないかって。気合い入れてご馳走してくれるそうよ」
「僕も一緒に作ることになってるから、蓮と一緒にまっすぐお宅に行かせてもらうね」
「へぇ……」
比奈は俊が家にくるのをすごく喜ぶし、美咲とは仲良くなりたいと言っていた。これはなかなかいい機会かもしれない。
「じゃあ東郷は後ほど俺の家に来てくれ。来る時は連絡を頼む」
そこで三人は一度解散した。




