ラストアドベンチャー クロス
時は西暦2030年。
広島県福山市幕山台団地に橘もえ という専門学生がいた。
くりくりした瞳に健康的な肌、ぷっくりとした唇、身長は153㎝と 少し小柄 細身といえば細身なのかもしれない。
声は 二次元の女の子のような高くて特徴ある声であった。
典型的なアニメ声とも言うべきであろうか?
多少 天然なところもある。
そんな もえの住む
2030年は 地球規模で 新型の凶悪なウイルスが蔓延していた。
その名も「ハーデスウイルス」
これは気象予報士でも 予測のつかないタイミングで 上空が紫に なり
その後に暴風が発生する。
暴風の中の 危険な毒素に 直撃した人はハーデスウイルスに感染することになっていた。
感染したものは 人にも よるのだが 凶悪さが増して 事件を起こすものも多発したようだ。
重症化すると 顔が皺だらけになり 身体が紫になる。
トイレを我慢するという 意識もなくなる
したがって 垂れ流し状態となるのであった。
その病気は暴風の毒素にあたって感染だけでなく感染者の半径1m以内に入ると感性する率は高まる。
ネガティブなマインド(嫉妬、怒り、嘆き)など 抱いていると感染力が高まるようだ。
なので人々には 限られた時間以外での外出禁止令が出されていた。
もえは 専門学校では ダンスのレッスンが一番好きだった。
しかし 沙羅先生は二週間前から音信不通。
学校に 国から許可が おりて通える時の楽しみは 沙羅先生とのダンスレッスンは 当然 もえにとって 生き甲斐だった。
そして クラスメイトの ザキさん、アスカ、みゆ との おしゃべりや 学校後のカフェで くっちゃべるのも楽しみだった。
先週末から またハーデスウイルス緊急事態宣言が 出されて 結局は沙羅先生と音信不通のまま。
外出も ままならない そんなある日
もえは zoom風な(巨大なスクリーン)が目の前に映るアプリで クラスメイトの仲良しらと ミーティングを開いた。
「ねぇねぇ 都市伝説って信じれるっすか?」
強気の口調の 髪を後ろに束ねた ヤンキー風な顔立ちのアスカがzoom風な大画面で 力強く もえらに 言った。
「それがしは 存じ上げないでござる。」
いつものように 太めの身体に 地味な顔つき 、でも 言葉が 歌舞伎風な喋りで ザキさんは言った。
「沙羅先生が行方不明になったのって もしかして〜
都市伝説で〜 有名 な〜 異世界に〜 行って〜しまったのかもにゃん」
いつもながら 文章の途中 途中で 伸ばしたり猫っぽい口調で 答える ツインテールギャルの みゆ。
もえは 何やら 自分の頭の横に 握りこぶしを 作って持っていった。
そして おかしな発言をした。
「ついてる ついてる ツインテール 」
このタイミングで 髪の長さが 全然足りてないのに みゆの真似して ツインテールの?ように 両手で 髪の横で ジェスチャーする もえ。
はぁあ??
えええ?
なんと!
他の画面の三人を同時に見れる 所にカーソルを 合わせた もえは 三人の 驚いた顔を目の当たりにした。
もえの 唐突なギャグにより みな 呆れてるような表情に見えた。
「もえ殿、そなたは なにゆえ
関係ござらんことを 申すので おありか?」と ザキさん。
「いゃ〜ん また もえは いらん事言っちゃったあ
やっちゃった〜
やったー やったー やっちんちん」
もえは おかしな動きを取りながら オリジナルな小躍りしつつ 変な決め台詞を言った。
「もお、リモートだから って ふざけんなよーー
とりま 異世界に 行けるポイントは
日本にも 何箇所か あるってさ」
アスカは なにやら UFOなど非科学的なものが載ってる本を 取り出して 大画面の みんなに見えるように
異世界スポットを見せた。
「なんか もえ めっちゃ いきたいまる〜」
もえは 日本語にないような (もえ語)で、また
皆の感情を 煽る。
「危ないよーん もえちゃん。 今にゃあ 緊急事態宣言出てるんだにゃよ。
最低でも また 宣言が 解除されてから 異世界へ旅立てるスポットに いくっちゃよ」と
みゆは 画面上で なぜかメイクを直しながら言った。
「てかさあ
あくまで都市伝説だし まさか ハーデスウイルスの感染者が 襲ってきそうな こんな世に 誰も そんなとこ行かんだろ?」
一番まともな事を 言うアスカ。
「それがしは 紛う事なく 参らぬ!」と腕を組んでザキさんは言った。
「でも もし 都市伝説の異世界へ行けるぞ的な話が マジよりのガチだったら やばたんじゃな。
もえ なんか 行ってみたくなったぶーん」
好奇心で もえは また画面の中で オオバーリアクション取りながら 皆を煽った。
そのあとは いつもの zoom風な大画面でのリモート飲み会トークをしたようだ。
やはり もえは 好奇心旺盛で 怖いもの見たさとかあるので 自身の妄想と 絡めて 異世界へループできるらしいスポットに行く計画を立てた。
(もえ、昨日クリアしたPS7のRPG ラストアドベンチャーのレックス様に 異世界へ行って会えるかも〜)
どこまでも妄想癖の強い もえは ラストアドベンチャーという 主人公のレックスに恋をしたようだ。
2030年には プレイステーション7まで発売されたようだ。
大画面で リアリティを追求した次世代型 ゲーム機のようだ。
だが2030年前後は もえのように リアルじゃなくてゲームやアニメのヒーローやヒロインに恋をする若者は急増していた傾向にある。
なぜなら 、異性どうしが出会えるパーティーも滅多に開催されなかったことも大きい。
恋愛アプリや ナンパなどで知り合っても 外出先で ハーデス(暴風)に 襲われる危険性もあった。
さらに
さまよい歩く重症化したハーデスウイルス感染者に接触する危険性も あったからだ。
(レックス様 ゲームのエンディングで ヒロインのミレーヌ ちゃと結ばれるるる〜
ぇええええ なんか つまらないわん。
もえが 異世界にいって
止めなくちゃね)
もえは ゲームで エンディングで すでに決定事項なことなのに もえ理論で それは変えられると 本気で信じていたようだ。
当然、そのことを他で話したら
夢と現実と区別してほしい と言われたり
出会いとか なさすぎて おかしくなるあるあるだ と言われたりすることが多かった。
でも あくまでも 異世界へ行けるらしいスポットを 目指すため親に無理言って 車を借りて 向かうことにした もえ。
行き先は「山口県にある 山賊村」そこの 人工滝のある所(時の扉への泉)が あるらしい。
その泉に入ると異世界に通じてるとのこと。
「もえ〜 この ご時世で 山口県に行くのは おかしなことだわ。 やめときなさい」と
母親は言った。
「やだ やだーー いくったら 行くんじゃ」と もえは もえ語を使わず はっきりと主張する。
「せめて緊急事態宣言が解除してから いかんと 重傷者の群れに 喰われるぞ!」と新聞を読みながら メガネを グイっと上にあげて父親が言った。
「車だから 感染してる重傷者らも もえには 襲ってこれんはず!
襲ってきても すぐ逃げるから 大丈夫だってば」
その後も一時間以上、親に 説教されたが
翌朝、強引に 台所に置いてあった親の車の鍵を借りて
車を山口方面に向けて走らせた。
その日
ハーデス(暴風)は発生しなかった。
もくもくと 空は 晴れ間曇りも関係ない 薄灰色の空を もえは どんどん車を 走らせた。
車も10年前と比べて 随分少なくなったものだ。
ハーデスウイルスの感染者拡大のため 仕事も 無くなって自宅待機してる社会人も 今は
ほんとに多くなってしまった。
田舎道とか 明らかに背骨が 曲がって 汚らしい格好してる人を 見かけたら それはハーデスウイルス重傷者であることが一目瞭然だった。
(物騒な 世の中に なったぶぁいなぁ。 車なんで 襲われる心配ねぇなりさ)
途中、営業してるコンビニとか 寄りつつ 四時間くらいかけて運転したら岩国市錦町大野の「山賊砦」まで
辿り着いた。
時刻は午後15時。
だが この ご時世、令和なのに昭和な世界観あふれる 山賊砦も 今は 閉鎖されていた
悲しいことかな
「えぇええええ せっかく四時間もかけて 異世界へ行くぞ的なスポットに きてみたのにーー
マジかーーー
もえ ないちゃいそう。」
2028年までは やはり人々が 山賊焼や 山賊むすびを 食べに来たりしていたようだ。
ハーデスウイルス感染者が 多くなって こういう 昔話に出てきそうな観光地も 閉めてしまうところが実際多かった。
「いとしのレックス様に 会いにいきたいのにーーー
封鎖だなんて
やだやだ やっちんちん。」
鎖で封鎖されてるところを なんとか よじ登り
もえは 水車や 囲炉裏の見える乾拭き屋根の場所を
さささ と 通り過ぎた。
その向こうにある 金色の仏像と 人工滝がある 祠に 歩を 進めた。
祠の方から ゴーーーーン と 綺麗な音色が聞こえた。
んん?なんだらほい?
もえが その綺麗な倍音のような響きに耳を傾けて目を向けると
ひとりの30歳前後くらいの女性が 座っていた。
手には マレット
床には7つのクリスタルボウルが 置かれてあった。
「あんた だれ?」
もえは 桜や 紫陽花の絵柄の着物を着た
和の雰囲気がする おかっぱヘアーの女性に言った。
「あたしは エミ。あたしのクリスタルボウル演奏を聴かせて さしあげるので ここから お引き取りください。」
ゴーーーン
カーーーン
ギューー
様々な音色が心地良い。
その心地良い音で おかしな術にかけられたかのように
もえは その場から離れようとしていた。
フラ〜
足が その綺麗な音色に 取り憑かれたかのように
もえは 後戻りしている……
無意識のうちに
しかし その無意識のうちに
もえは 変な夢のような絵柄が脳に浮かんでいた。
ラストアドベンチャーというゲームの中のレックスと ハグしてるシーンだった。
そのシーンが浮かんだので はっ と
我に返った もえ。
「あれ? いけない いけない。
もえは レックス様に会いたいのだ。」
もえは 不思議な和音を 繰り出すクリスタルボウル演奏を かいくぐって 滝の流れてる泉に
飛び込もうとした。
「このクリスタルボウル狂想曲を 打ち破るものが この世にいるなんて……」
エミは 慌てて 思わず クリスタルボウル演奏を止めた。
「姉ちゃん、 あなた 不思議な倍音リズムにより
時の扉を開ける人を 強制的に帰らせる仕事
トライトライトラーーイ しとったんだよね?」
なかなか鋭い質問を投げかける もえ。
エミは 渋い顔で うなづいた。
(てことは やはり ここは 異世界へ 行けるんだにゃ?
よっしゃ ラストアドベンチャーの世界へ行くなり)
異世界=ラストアドベンチャーのゲームの世界へ行けると 短絡的な考えを 見抜いたかのように
泉に足を踏み入れる前に
思わぬ邪魔が入った。
ズドン!
もえの 後方から銃を発砲した警察官が立っていた。
どうやら武田巡査は 時々 この異世界に行ける泉のパトロールをしてるようだ。
偶然にも もえが 泉に入ろうとしていたので
力づくで 止めたようだ。
「ひっ ひぃひぃ……」
さすがに 青ざめた もえは 軽く悲鳴をあげている。
「武田さん 何も そこまで する必要は
ないと思います。」
大人しそうな見た目の エミが 声を張り上げた。
「バカ者! この泉は 異世界の どんな世界につながっているのかは 私も わからない。
だが 一度 入ったら
もう二度と戻ってこれんぞ!
オレは そんな事件を何度も耳にしてきた。」
50代前半だろうか? やけに細い目と 細くても筋肉質な見た目、すらっとした長身の 武田巡査は
エミを 睨みながら言った。
「おまわりさん いつ そこに おったん?
幽霊かと 思ったわ。
てか いきなり発砲って
頭おかしくね?」
もえは ようやく 震えが おさまり
武田巡査にキレた。
「この世とは 別の世界&時代 いわばパラレルワールドって知ってるか?」
武田巡査は もえに問うた。
首を横に振った もえ
「この世とは違う 色々な生き物が住んでいる。
色々な人種が集う。
ハーデスウイルス感染者の 危険な地球という今を逃れて
異世界に生きようとする
君の気持ちは よくわかる。
だが、他の世界は オレの知るところでは 凶悪な魔物も多いし 人を人とみないような 異性人の住む世界も あるようだ。
それでも君は 異世界へ行くつもりか?
そして なぜ?異世界に行きたい?孤児か?」
武田巡査は 普段は 物静かで口数も少ないクールなキャラだが、異世界に まだ成人してない女の子を 行かせるわけにはいかないので
強く論じた。
「もえ ねぇ…… 昨日 もえの ハマってたラストアドベンチャーって ゲームをクリアしたのね。
なので その世界があるなら
いきたいにゃ
ただ
ゲームのキャラに 会いたいから 異世界に行きたいだけなりよ」
エミは ポカーンとしたが 武田巡査は もえの とんでもない異世界に行きたい理由に リアルに ずっこけて
泉に落ちそうに なった。
なので逆に もえが 武田巡査の肩を 掴んで 泉から 岩場まで戻した。
「呆れてものも言えん……
異世界広しと言えども そんな デタラメなネーミングの異世界って
ありえんと思う。
バカも休み休みに言え!
お嬢ちゃん パパとママのところに
帰った 帰った」
武田巡査は もえに その場を離れるように 促した。
やだやだ やだもん
「ほほほほ 全く子供ですね。」と エミは 普段は無表情なキャラだが もえの ダダをこねる姿を 微笑ましく感じ 声を上げて 笑った。
「異世界って たしかに ハンパねぇほど あるなら
この泉に 飛び込み損する とこだったるす。
なんか もえ 超絶
頭が パープーしてたわ。
仕方ないけど,帰るっかな……」
物凄く悲しそうなオーラで その場を 立ち去ろうとした時に
人工滝の 側にある 仏像が メキメキメキと音を立てているではないか!?
えっ?
えええーーーっ
嘘〜っ
もえは 仏像を二度見した。
「メキメキメキ メキシコ」
なんと 仏像が おかしなギャグを言った。
笑っていいかどうか 反応に困っている エミの前に
仏像が割れて 竜巻が発生した。
そして その竜巻の中から
クリスタルボウルを何個か持った お爺さんが出てきた。
上下のボロボロのローブを着ていた、
眉毛や顎髭は かなり長くて 真っ白だった。
「まさか あなた様の 登場とは! よほどのことがない限り 現れないと 思ってたのに」
とエミも その 不思議な クリスタルボウルを持った お爺さんに 圧倒されているようだ。
「ただならぬものが いなきゃ クリスタルボウルじじいは 現れん……ふっ 私も かつて 都市伝説の動画で この じいさんの活躍は見たことはある」
武田巡査は ニヒルに笑う。
「これって 夢? 現実? どっち? 」
と もえが 言った。
「どっちだけに
ドッチボール、キャッチボール、クリスタルボウル」
ゴーーーン
そう言い合えたら クリスタルボウルじじいはクリスタルボウルを鳴らした。
「もえよ! さっきから仏像に憑依して 話を聞いておったが
お主、ラストアドベンチャーのゲームの世界に行きたいんじゃな?」
「は、はい そうです。」
「どういうことか ワシの時送り できるリストに ラストアドベンチャーという世界も あるようなんじゃ。
そして この世界から 実は何人か ラストアドベンチャーの世界へ行ったものもおる。
どんな世界かは ワシにはわからん。
命の危険にさらされるかもしれんぞ。」
「それでも いくのら〜」
恐怖心や 哀愁とかより ラストアドベンチャーの世界があると聞いて満面の笑みに 変わっている もえは はしゃぎながらクリスタルボウルじじいに 頭を下げた。
「もえさん 後悔はありませんか? ご両親にも伝えておく必要があるのでは?」
エミは やはり不安げに もえに 言った。
「大丈夫なり」
「では覚悟はできておるみたいなので ラストアドベンチャーの世界に もえを送り届けるぞよ。
ポコンペンペンどろろんじょ〜」
クリスタルボウルじじいが 異世界(ラストアドベンチャーというゲームの世界)に もえを 送るため 変な魔法を 唱えて 湖に もえを 押し込もうとしていたら
上空から この世のものとは思えないような邪気を感じた。
「ワレは サードアイマン…堕天した悪魔の一人。
地球以外も 悪魔の支配下に いずれしたい。
なのでワレも連れて行けーー」
ズドーン ズドン ズドドド
武田巡査は 悪魔に
銃を乱射した。
意外にも 悪魔にも銃でダメージが与えられたのか
??
いや、違う
悪魔の鼻頭に 銃弾が当たり サードアイマンという悪魔は
鼻を ムズムズさせている。
そして……
ハーーックショーーイ
バカでかい くしゃみをしたので
武田巡査と もえは 二人揃って
ラストアドベンチャーという
世界に行ける
泉に落ちていった。
サードアイマンは 再度 飛び込もうとしたら
泉に 不思議な結界が張られて
飛び込めなかった。
ちっくしょーーー
ワレら悪魔は 近年 神々にハルマゲドンで滅ぼされることになっている。
それまでは地上人を ひたすら災厄の種を蒔いて苦しめる
まだまだハーデスウイルス以上の災厄を 地上人に もたらせる予定だ。
地上人よ せいぜい楽しみにしておけ
そう 言い放つと 悪魔の一人 サードアイマンは その場を離れていった。
さあ ラストアドベンチャーの世界に 吸い込まれた
もえ や 武田巡査は
レックスらと ほんとに合流できるのであろうか!?