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冷めた僕と単細胞な俺

願えば叶う、これが前提

「ここどこ?」

 気が付いた森一朗の目の前に広がるのはいつもの通学路ではなくて、知らない建物の中だった。

 ステンドグラスの窓、石でできた壁と柱、その柱にはランプがあたりを照らしている。床には赤い絨毯。パイプオルガンが鳴り響く西洋風の建物。

 学校から家への帰り道だったはずなのに、道を曲がると気が付けば森一朗はこんな所に立っていた。


「ようこそでス。お待ちしておりました」


 見たことのない周りの環境に驚いている少年に、てくてくと近づきその前でお辞儀をするくまのぬいぐるみ。彼の膝ぐらいまでの高さのそれはなぜか言葉を話し、そして動いている。

「すっげぇ‥‥しゃべったよこのくま」

 興奮した声をあげ、つかんで持ち上げる。

「なにをするのでス!!」

 つかまれたぬいぐるみはばたばたと暴れる。

 相手が抵抗するので手を放すと、高いところから手を離されたぬいぐるみは床にべちゃっと前から落ちると首が外れて転がっていった。

「良く出来たおもちゃだ‥‥なぁって‥‥」

 もげた頭を目で追いながらも相手の質問に森一朗は答える。おもちゃだとは思っていても、さすがにその姿に驚く。

 失礼なとばかり森一朗の手から開放されたぬいぐるみはひざをパンパンと叩いて立ち上がり、転がっていった頭を元の位置に装着した。首が取れたのはやはり痛いのか、苦痛に表情をゆがめている様に見えた。


「僕はくまじゃないでス。ちゃんとした神父でス」

「しんぷぅ?」とくまの言葉を聞き返す。


「ええ。僕の名前はボッシュ。この教会の神父でス」

 小さい体を二つに折ってくまはお辞儀をする。とても礼儀正しい。

「くまなのに神父なのかよ」

「くまじゃないでスよ」

 くまという言葉に否定し、ぴょんぴょん跳ねて怒りをあらわす。

「怒るなって。悪かったよ、思いつきで喋って‥‥」

 謝ると相手は跳ねるのをやめ、自分の職業について語り始めた。

「神父はすごいのでス。困ったときに何でもできる勇者を違う世界から呼び寄せられる伝説があるのでスよ。やってみたらできたので、その伝説が本当だったとは‥‥びっくりでス」

 くまは嬉しそうに話し出す、職業自慢なのかと思えばなぜか空想じみた話。


 勇者だの、違う世界だのって‥‥。


「勇者?今おまえ、勇者を違う世界からとかなんとかいったな」

「えぇ。言いましたでス」

「俺を違う世界からココに呼び寄せた」

 くまは大きくうなづいた。


「うおぉぉっしゃぁ。これでやっと俺も選ばれた存在になれたって事だな。ここの世界が困ったから俺は勇者様としてここを平和にする。バッチリあこがれたゲームの世界だよ」


 異世界で勇者を夢見たお年頃。非現実な夢が今まさに彼の目の前で起こっているのだ。嬉しさのあまり、くまを抱きしめる。


「で勇者様。僕は貴方を勇者として聞きたいのですがよろしいでスか」

「もちろん返事はYESに決まってるだろぅ。勇者だぜ勇者」

「僕のピンチを救ってくださいまスね」

「もちろんだとも!」

「それを聞いて安心しました。断られたらどうしようかと思っておりました」

「平和が俺を待ってるんだぜ。とりあえず魔王を倒すんだな、さらわれた姫はどこだ?」

「はい?」

 思っていた返事が得られず、二人は一瞬沈黙する。


「これから世界を救う大冒険がはじまるわけだろう」

 くまは首を傾ける。なにかおかしい‥。


「そんな予定はないのでス」

 落ちそうなぐらい首を逆に傾けてくまはそう言った。



「‥‥なんで俺を呼んだんだ?」

 魔王も居ない、姫はさらわれてない、大冒険は無い。世界を救う予定は無いのなら勇者は要らないだろう?


「実は‥‥」

 くまは言葉を濁して言う、森一朗には照れているように見える。

「あの丘の上の家に一週間ほど前から天使がすんでいるのでス」

 くまは窓から短い手を外に向かって突き出す。外には木が建物を囲うように生えていて、くまはその向こう側の丘を指しているようだ。

「その悪天使をしめて、ここから追い出せって話なんだな」

「まさか‥‥とんでもない」

 森一朗が言った言葉に頭が取れそうな勢いで首を振る。いや、実際には今さっき、取れていた。

 頭がくるりと一回転した。


「神様は頭上に浮かぶ空飛ぶ島にお住まいになっていて、神様と同じ島に住んでおられる背中に翼のはえたお方がたが天使と呼ばれるのでスよ。で、その天使のお一人があの丘の上に一週間前から住んでいるのでス。これほど光栄な事は無いでス、ずっと居て欲しいぐらいでス」

 両腕を胸の前で祈るように組み、まるで少女のように話す。

「で、そのお姿はとっても可憐で僕は一目で恋に落ちました。寝ても覚めても考えるのは天使様の事。あそこにお住まいになって下さっているだけで幸せなのでス、でも‥‥」

 でも、の後がない、続く言葉は頭の悪い森一朗にも容易に想像が出来た。

「でも、その天使様に思いを打ち明けたいって話なんだな」

 恋だの愛だのに興味がない森一朗が、とっても嫌そうに笑って言う言葉にうんうんと首が取れそうな勢いで縦に振りつづけた。

「叶えていただけるのでスね」

 窓枠にしがみついていた人形は目を輝かせて飛びついてくるが返事は冷たい。


「却下だ」

「今なんて?」


「却下だよ。そんなの自分で何とかしろよ、わざわざ勇者呼びつけて頼むことか?」

 自分の事ぐらい自分でかたづけろよと森一朗は飛びついてきたくまを叩き落す。


「頼むことです。僕には思いを伝える勇気はありません、だから何でも出来ると言い伝えられている勇者様を呼んだのでス。簡単なお願いじゃないでスかぁ」

「簡単だからおまえにも出来る!かえるぞ」

「僕の願い叶えないと帰れないでスよ」当然でしょう、とくまは続ける。


「勇者様はなんでもできる、願えばなんでも叶う。だから、簡単に帰ろうとすれば帰れまス。でも約束は契約。いちどOKしたら、どんな仕事でもこなすのが当然でス」

 くまの言葉を聞きながら「自分で帰れるじゃん」と森一朗は背を向ける。

 帰ろうとする森一朗の背中に向かって、息を大きく吸い込んで、もう一度、最後の言葉を叫んだ。


「約束を守るのはあたりまえなのでス!!」


 くまの大きな声がフロアに響く。

 約束は契約‥‥森一朗には詳しい意味はわからなかったが、約束という言葉を聞いて、願いを叶えないまま帰ることが出来なくなった。理由は単純。約束破るなんて、男らしくない。


「‥‥具体的にどうしたいんだ?くま」

 帰ろうと背中を向けていた体の方向を逆転させくまにそう聞いた。


 顔を引きつらせて。


「ボッシュでス」

 勇者が自分の願いを叶えようとしてくれる意思表示をしてくれたので、とっても幸せそうな笑顔でボッシュは答えた。



 天使様をまず見ていただきたいとボッシュが言うので、森一朗は彼の案内の下、丘の上にある天使の家の草むらに来ていた。草むらから天使が住んでいるという建物を見張る。


「なんで隠れるのでスか」

 面と向かってお話が出来ないからちょうど良いでスけど、と思いながらボッシュは森一朗に尋ねる。

「偵察‥‥そして観察だ」

 意味不明な言葉をつぶやき目的の人物が現れるのを待つ。

 そんなに時間がたたないうちに女の子が建物の中から現れた。


「あれが天使様なのでス‥‥」


 この世界の天使っていえば、くま頭の上に輪と、ぬいぐるみの体に羽でもはえているだけかと思っていた森一朗は普通に驚いた。人間が、大きな翼を持ったもの、ゲームの中で見たことある天使そのものだったからだ。頭の上に輪はなかったが‥‥。

 肌は白く、着ている服も白っぽく、髪も白に近い金色で、背中の翼も真っ白である。

 そして、とても愛らしい。ボッシュのいう『可憐で‥‥』という言葉も理解できた。純白のその姿に自分も恋に落ちてしまったのではないかというぐらい心臓がドキドキしていた‥‥たしかに天使である。

 彼女は森の方へ歩いていくようだ。


「追いかけるぞ」

 ボッシュの手をつかんで天使を追いかける。

 天使は大きな木の下でうえを見つめて立ち止まる。そしてその場で手を伸ばして飛び跳ね始めた。

「なにしているのでしょう?」

 ボッシュが天使の行動に疑問をもち、首をひねる。

 天使の視線の先には、赤い実がぶら下がっていた。どうやらそれが取りたいようだ。

 届かぬ距離、手を伸ばして‥‥。


「羽があるんだから飛べばいいのに」

 森一朗はいらいらしながらその姿を草陰から見つめる。しかし彼女はいつまでも同じ行動をとりつづけていた。

 なんども、なんども‥‥。


「あーーーー!!!」

 いらいらが爆発したのか森一朗は天使の方向へ突っ走って木を登り始めた。猿のようにするすると目的の場所までたどり着くと、赤い木の実をとって天使の前に飛び降りる。


「ほら」


 手に入れた実を天使に差し出して森一朗は言う。「天使なんだったらこれぐらい飛んで取ればいいじゃん」

 差し出された手に相手は首をかしげる。なかなか受け取らない天使にまたもや森一朗は腹を立て、投げつけるように実を渡した。


「ムルツメスク」

 渡された実を落としそうになりながら受け取ると、森一朗に向かって聞いたことない言葉を話す。


「は?もる‥‥?なんて言ったんだ」

 知らない言葉を話されて戸惑い、今度はこちらが首をひねる結果となる。


「ボルベシテ‥‥ウンカ プッツィーニ?」

 不安な顔をして彼女は続けた。その不安そうな表情がさす言葉がわからない森一朗は、自分が取った行動をとても後悔しはじめた。

 まさか、言葉が通じないなんて‥‥。


「ボォッッッッシュ!!」

 助けを請うように茂みに隠れているボッシュの名前を呼んだ。茂みの間からくま頭が見えているので、そこに居るのは確かなのだが、ボッシュは茂みから出てこようとはしない。恥ずかしがっているのだろう、そう考えた森一朗は茂みのほうへ走って逃げた。

 言葉が通じないから逃げたんじゃない、なかなか出てこないボッシュを迎えに行くんだ。と自分に言い聞かせながら。


「ボッシュ!!なんで出てこないんだよ」

 茂みに隠れている姿に怒鳴りつけるとくまは首を振りつづけた。


「だって‥‥」

 ボッシュは首を振りつづけたまま、森一朗の後ろを指差す。行くのが相当嫌な感じだ。

「だってじゃないだろう」

 くまを天使の前に引きずり出したとしても何も変わらないはずなのに、森一朗はくまの手をつかんで茂みから引きずり出そうとする。

 ボッシュはばたばたと手足をふり、抵抗する。彼はこの抵抗の仕方しか知らないのだろうか‥‥まるで小さな子供だ。

 不安そうな顔をしていた天使は、森一朗と抱えられて暴れるボッシュを見てほほえんだ。

 第三者から見たらこの二人の行動は微笑ましいのだろう。

 天使の笑顔にボッシュも森一朗も動きが止まる。心がずしりとした。何なのだろう?


 ズシン‥‥ズシン


 動きが止まった森一朗の耳に聞きなれない重い音が響く。


「何の音だ?」


 せっかく笑った天使の表情がまた曇る。


 ズシン‥‥ズシン


 音はどんどん近づいて来る、地面もゆれている感じがする。森一朗はあたりを見回すが音の原因は見当たらない。


「うわぁぁぁーー」

 かかえられた状態で、森一朗と逆方向を向いていたボッシュが情けない声をあげた。

「なんだよ」

 後ろを振り向いた森一朗の目が驚きのあまり大きく開く。


 その視線の先には大きなロボットが歩いていた。


「‥‥何だあれ」


 足を一歩前に出すたびに、ズシンと重い音がする。間違いなく、音と地震の原因はあれだ。装甲の継ぎ目から黒い煙を出し、目の前の木を、岩を壊しながらまっすぐこちらに向かっている。

 歩いてきたロボットは天使の前で動きを止める。黒い煙が大量に噴出し、あたりが真っ黒になった。突然の排気に天使と森一朗はゴホゴホと咳き込む。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 ボッシュだけは大きな声で絶叫中である。


「うるさいなぁ」

 ロボットがボッシュと森一朗のほうを向いてそう言った。

「あぁぁぁ」と怖がるボッシュの声が濁る。

 黒い煙を立てロボットが肩ひざをたてかがむと、頭の上のほうからボッシュと同じくま頭のぬいぐるみが腕を伝わって地面におりてきた。

 黒い煙にまた天使は咳き込む。


「くまがもう一匹」

「くまじゃない」

 森一朗が驚いて言った言葉に相手は当然反論する。


「ライ王子‥‥」

 叫びつづけていたボッシュは、その姿を確認すると落ち着いたのか、もう一匹のくまの名前を呼んだ。

「おうじぃ?」

 ボッシュと同じくま頭、確かに着ているものはなんとなく高貴そうな感じではあるが、どのあたりが王子様なのかただ首をひねるばかりだった。強いて言えば王冠か?


「やあ天使様。ご機嫌いかがですか?」


 咳き込む天使の前で王子がお辞儀をするとロボットがどこからか薔薇の花束をだす。うけとった花束をくま王子が天使にささげるが、苦しそうに咳き込む彼女にはそれどころではなさそうだった。周りは黒い排気だらけである。

 結局、ロボットが動くたびに吐き出される黒い煙に耐えられず天使は逃げ出した。


「ふられやがった‥‥」

 一言も言葉を交わさないうちに天使が逃げ出したのを見て森一朗はぽつりとつぶやく。

「追いかけるぞ」

 その言葉が聞こえたか聞こえなかったかは分からないが、慌ててしゃがみこむロボットに飛び乗り王子が叫ぶと、黒い煙を出しながらロボットは天使の逃げた方向に向かって歩いていった。ゆっくりと‥‥。

 あのまま追いかけたら、又彼女は逃げだすだろうに、そんな事も分からないなんてバカな王子様だと森一朗はロボットを見送った。


「ここはロボットもいるんだな」

「王子の唯一の乗り物ですよ」

 王子が走っていった方向を憎憎しく見つめボッシュが言う。


「王子も天使様に心奪われているのです」


 こいつの恋のライバルはあんなバカそうなくまなのか‥‥。

 王子が通って来ることで開いた道を見て森一朗は肩を落とした。


「言葉が通じないんだったら、言葉でなんていったって想いは伝わらないなぁ」


 相手に会ってくま引きずり出して、言葉で伝えれば話は終ると簡単に考えていた森一朗は頭をかかえた。相手がイエスでもノーでもくまの気持ちは伝えられたのだから約束は果たしたことになる予定だった。


「天使様は神の国の言葉をお話になるのでスよ」

 自分の事なのに「言っていませんでしたっけ」とボッシュはあっけらかんとのべる。その姿に通販の穴明き包丁より切れやすい森一朗はボッシュを殴り倒していた。

 相手に好意を伝えることが出来ないのであれば、向こうに好きになってもらうことが約束を果たす方法だ。こんなくまを好きになってもらうには‥‥。


「プレゼントだな」

 あの王子もやっていた、物で相手を釣る作戦が一番簡単だろう。


「プレゼント?」

「そうプレゼント‥‥。ちなみに俺はガスマスクだな」

 王子と呼ばれる新たなくま頭の操縦する乗り物が吐き出す排気を嫌がるように咳き込んでいる姿から、森一朗は本気でそう思った。あのバカ王子が用意しようとはしない、とっておきのプレゼント。


「あんなもの近くで乗り回されたら空気悪いに決まってる」

「そんなもの喜ぶんでスかね‥‥」


「確かに‥‥」


 そんなものもらって喜ぶ女の子っていないだろうなぁ。


 ボッシュの一言で森一朗の意見は却下になった。


 昼間観察した彼女の行動を思い出しながら何がいいかを考える。そういえば‥‥。


「天使様。空が飛べないんじゃないのか?」


 赤い木の実を取るために届かぬ場所に手を伸ばす。羽があるんだから飛べばいいと頭の悪い森一朗でさえ思いついたのに、彼女は自分の翼を使おうとはしなかった。いや、使えなかったのだとしたら‥‥。

「空を飛ばしてあげれば、喜ぶぜきっと」

 この意見にはボッシュの反対はなかった。


「空を飛べない人間が空を飛ぶ手段は、飛行機だ」

 紙飛行機を飛ばすマネをしてみせる。


「飛行機?何でスかそれ」

 勇者の言葉にボッシュが首を横に傾けた。


「ロボットがあるんだから飛行機だってあるだろう」

 ボッシュは、驚き尋ねる森一朗の言葉に首を逆方向に傾ける。

「あれはずっと昔に造られた物で、今はないのでス。古い本になら造り方ぐらい載っている気がしまスが‥‥探しまス?」

「あたりまえだ」

 ボッシュの教会には大きな書庫があった。

「これ全部本なのか?」

 扉を開けてまず驚いた。広い部屋、自分が壁だと思っていた部分が、ほとんど本棚だった。見上げてもはっきりと天井が見えないずっと上の方まで本は続いていた。本が大好きな人間にならここは天国のような場所だろうが、普段マンガぐらいしか読まない森一朗にはこの中から飛行機のことについて書かれた本を探し出すことは苦痛でしかない。

 しかし「あたりまえだ」と言った手前‥‥逃げ出せない状況に森一朗は肩を落とすしかなかった。


「全部が機械の本じゃないでスよ。たしか、七階のあのあたりに‥‥」

 がっくりしている森一朗にボッシュが声をかけ、先をいそぐ。

 本棚の壁に寄り添うように、ぐるりと取り付けられた階段をボッシュに次いで急ぎ登っていく。

「どこに何があるのか分かってるのか?」

「あたりまえでス。自分の管理している書物。すべて目を通していますよ」

 はしごを立てかけて上の棚の本を取り出そうとするボッシュ。がんばるが手が届かない。森一朗が立ち上がり、楽に手が届く高さの本を棚から抜き出す。


「これか?」


 簡単に本をとった姿をみてボッシュは恥ずかしそうに頷く。パラパラとめくると中には確かにみたことのある飛行機の絵が載っているが字は日本語で書かれてはいないため読むことが出来ない。「読めないんですけど」苦笑いのままボッシュに本を差し出す。


「僕もでス」と受け取った本をちらりと見てボッシュも笑う。

「おまぇ。やくにたたねーじゃねーか」

 怒りに任せボッシュから本をとりあげると床に投げつけ、くまの頭を両手で抱え締め付ける。

 首が少し浮いた。


「痛たた。やめてくださいでス。その絵の機械なら博物館で見たことあり‥‥まス」

「博物館‥‥動くのかそれ」

「勇者様には出来ない事はないのでスよ」

 腕の中でボッシュが笑った。森一朗はなんとなくもう一度締め上げたく、いや、頭を取り外して下の階へ投げつけたくなった。


 

「確かに飛行機だけど、誰が操縦するんだ?」


 本を片手に飛行機の中に入り込むボッシュ。展示品に触るのは自由なのだろうか。

 多くの機械が展示されている博物館。この国の者は興味がないのか知らないが、まったくお客が入っていない。がらがらの建物の中で、森一朗の居た世界にある古いタイプの機械が並んでいる。展示品の飛行機も古いもので、側面の塗装ははげていて、Fという文字だけが読むことが出来た。


「文献どおりの物のようですが、どうも僕たちのサイズではないようでスよ」

 操縦席から顔を出して森一朗を見下ろす。


「俺が操縦するの?」

 そんなの操縦したことないし、無理だと慌てる森一朗を捕まえてボッシュは期待に満ちた瞳をこっちに向けた。


「勇者様には出来ない事はないのでスよ。強く願えばなんでも叶う」

 そういわれると辛い。なんたって森一朗は勇者なのだから。勇者がここで出来ないって逃げるのはポリシーに反する気がする。


「せめて、夜になってからにしよう」


 夜までの時間‥‥操縦の仕方がわかればいいのだが。そんな期待を心に森一朗はボッシュに言った。それにこんな昼間に飛行機を盗み出すわけにはいかない。管理者も警備者も眠ってしまう夜のほうが、都合がいい。

 そして夜がふける。当然の事ながら文字が読めない森一朗には操縦方法などわかるわけもなく、ただ時間だけが過ぎていった。


「なんでこそこそするのでスか?」

 足にしがみついたボッシュが森一朗に問いかける。

「だって泥棒じゃないか‥‥」

「お借りするのでスよ」

 ぴょこぴょこと前を走り正面の大きい扉に手をかける。怪盗もののマンガだったらここいらで、警報機がなるところだ。いやまず鍵がかかっているだろう。しかし少年の葛藤も虚しく、扉は簡単に左右に開いていった。おかげで目的ものを外まで出すのに簡単にたどり着くことが出来た。

 簡単に話が進んでいいものか少年は悩む。


「さぁ運びまスよ」


 二人は飛行機を高い丘へと運んでくと海が見えるほうへ向ける。このまま海へまっすぐ進めば、切り立ったがけがある。ちょうど滑走路とジャンプ台というわけだ。

 操縦席のなかに座ったって何を押したら進んで何をひいたら止まるのか、さっぱり想像もつかない。後ろでは何も知らないボッシュが「さぁさぁ」とせかす。


「なるようになれだな」大きなため息をはきだし、足元の紐みたいなものを引っ張る、エンジン音が鳴り左右のプロペラが回りだす。エンジンがかかったことが確認できて、森一朗は安心すると手前のレバーを引いた。

 ゆっくりと飛行機が前進していく。


「進んだよ‥‥」口元から笑みがもれる。


 森一朗の考えでは高いところから落ちたら多分飛ぶだろうと思い、高いところに運んだのだが、とりあえず動けば問題なしだ。

 どんどんがけが近づいてくる‥‥。

 海が見えはじめる。考えが間違っていれば、まっさかさまにがけから海に落ちる。つぶれて死ぬことだろう。


「ホントに大丈夫なのでスか」


 後ろのくまが不幸な未来を想像しておびえだした。


「俺は勇者なんだろ、勇者が大丈夫って言ったなら大丈夫なんだよ!!」

 不安を隠すように声が大きくなっている。

 さっきから「勇者様に出来ない事はないのでス」とかいっている割には喜んだり、怖がったり。喜怒哀楽が激しいこのくまが憎らしくなったわけではないのだが‥‥声が大きいと言うのは、いらいらし始めている証拠だ。


「だって失敗したら僕の願いはかなわないじゃないですかぁ」

 自分ばっかりのボッシュ。神父だからといって死を実感したら他人より自分である。


「うるさい!」


「前みてまぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 ボッシュの絶叫が響き渡る。


 飛行機は、がけから飛び出した。そのまま飛び上がる。仕組みは全く分からないが、ちゃんと飛んでいるようだ。


「ホントに飛びましたね」安心した声が後ろから聞こえてくる。安定しない浮遊感で空に浮かんでいる事は体で実感した。指と腕は震えているがとりあえずは安心だ。

「じゃあ成功したのでスから迎えに」

 よくわからない操縦席でレバーみたいなのを握り締めているのでやっとなのに、ボッシュは次の行動を指定する。

 そんな、はいはいと言われた通りに動かせたら誰だってパイロットになれるってんだ。

 いらいらしながらレバーを回すと海の上ギリギリを旋回した。羽が海の表面を切り、水が飛び散る。

「ちゃんと操縦してくださいよう。もうすぐ落ちちゃいますよ」


 死にませんように‥‥森一朗はそれだけを強く願った。


 落ちたり登ったりふらふらしながらでも丘の上にたどり着く。飛び出したのが夜だったのに、太陽が見える高さにある。ぐるぐる回ったことで、気分は悪くなったが、命に別状は無い。

 想えば何とかなるとは良く出来た伝説だなと思いながら操縦席から顔を外に出す。


「あー。見て下さいよ」

 どこかで見たことのある王子が彼女の家のうらに居た。

 そしてその側には、ロボットが暴れまくっている。周りが排気だらけだ。


「何してんだあのバカ王子」

 暴れている姿がとても間抜けに見え、冷めた口調で森一朗は言った。

「あああ。見てください勇者様。屋根に天使様がいまスよ」

 屋根の上で咳き込んでいる姿が見えた。

 まさか昨日からずっと追いかけていたのだろうか‥‥。たちの悪いストーカーだ。

 そうだとしたら、彼女はかなり衰弱しているに違いない。

 そうじゃなくても、あんなロボットに握り締められたら彼女は死んでしまうかもしれない。

 排気も大量に吸っていることだろう。

 とりあえず彼女を飛行機に乗せないと‥‥。


 屋根に飛行機を近づけてみた。


 それに王子が気づき発砲してくる。


「何しやがるんだバカ王子‥‥」

 銃弾は翼に当たって火花を散らした。

 近づくだけでは何も出来ない。しかも発砲される。



「手を伸ばしてみるからおまえ操縦代われ」

 ボッシュが手を伸ばした距離と森一朗が伸ばした距離では倍以上の差がつく。

「なっ出来ませんよぅ」

「レバーひいてるだけだって、まかせたぞ」

 ええええぇぇと騒ぐボッシュに操縦をかわり、立ち上がって体を外に出した。

 見れば天使はバカ王子におびえ、煙突の影に見えないようにうずくまっていた。


 あれでは手を伸ばしても届くかどうか‥‥。


「飛べよ!!」


 通じないと分かっているはずなのに、森一朗は大きな声で叫んだ。うつむいていた顔がこっちを向く。声に反応したようだ。

 苦しそうに咳き込む姿が痛々しい。


「俺が受け止めるから」両手を天使の方へ差し出す。

 その手を王子の銃弾がかする。腕が熱くなる。


 でも、このまま引っ込めてしまってはいけない気がして痛む手をもっと伸ばした。


 ボッシュの運転は驚くほど正確でゆっくり屋根に近づいていった‥‥このまま彼女がじっとしていたら飛行機がぶつかるだろう。

 ほとんどが機体に命中している銃弾も今度こそは森一朗に命中するかもしれない。


 早くしないと‥‥と気持ちだけが焦る。


「大丈夫だから」何を根拠に言っているのかは分からないが森一朗は叫びつづけた。


 不安な瞳が王子を見て、森一朗を見直す。

 彼女は屋根を蹴って飛び、森一朗に抱きつく感じで飛び込んでくる。操縦席に仁王立ちになっていたため、勢いで仰向けに倒れそうになった。その顔をまた、銃弾がかする。


「あぶねぇ」


 何とかバランスをとり二人で操縦席に倒れこみ座席にしりもちをついた。


「おっけぃ」

 天使を回収したら今度は操縦だ‥‥。痛がっている場合ではない。

 首に彼女の手が巻きついたままボッシュからレバーを取り上げる。飛行機は屋根を削り取って上に旋回した。


「何とか間に合ったな」

 ひやあせものだぜ‥‥と呟き、森一朗から笑みがもれた。こういうハラハラはやっぱり楽しい。


「これが大冒険って感じだな‥‥」

 天使が飛び込んできたことで、バランスを崩し、自分が大怪我しそうになって(といっても顔や手に擦り傷、尻に打撲程度だが)飛行機も壊れそうなのに、とても楽しい。

 ワクワクするっていうのはこういうことだ。


「勇者様、笑っている場合ですか?王子が下で暴れていますよ」

 満面の笑みの森一朗にボッシュが騒ぐ。


「怒ってるんだろ‥‥」

 森一朗の言葉に天使がうなずく。

「おまえ、俺の言葉わかるのか」見つめて言うと、天使は首をかしげた。

 気のせいか‥‥。

 しかしホントにカワイイ‥‥前髪と前髪が触れ合うぐらいのこの距離で見るとなおさらだ。

 天使に見とれて森一朗の操縦がおろそかになる、飛行機が地面に向かって飛び始める。


「勇者様下がってますよ高度」

 背中を叩くボッシュに言われレバーを引く。

 王子の近くを旋回して空高く飛び上がった。

 隣を通ったことで黒い空気を拾ってきたようで天使がゴホゴホと咳き込む。


「悪いな」言葉が通じないとは分かっているが、森一朗は天使に向かって謝罪する。


「貴様達!!天使を返せ」

 下で王子が怒鳴っているのが聞こえる。吼えているだけなら問題ない。飛べなければ何も出来ないだろうと安心していた。

 しかし、あのロボットはとんでもないものを持っていた。それはロボットの背中から現れる。


「あぁぁぁぁ」

 発見したのはボッシュ、相変わらず情けない声を出していた。その声と同時にロボットはミサイルを打ち込んできたのだ。

 ミサイルは飛行機の脇をかすめ後ろの山を直撃する。周りを砂と火薬が混じった煙が霧のように広がる。


「うわ‥‥最低」煙がなくなると、山には大きな穴が開いていた。


 爆風で飛行機のバランスが崩れたが、まだ何とか飛んでいた。

「おまえも後ろに乗ってるだけじゃなくて何かしろー」

 森一朗の悲鳴が飛行機の中響く。

「僕に何が出来るのでスか」

 役たたずのボッシュはただ慌てるだけだった。叫ぶ森一朗と慌てるだけのボッシュを見て天使が飛行機の中の物を王子めがけて投げつけた。それは重力に従いまっすぐに王子に向かってぶつかっていく。

 ガンと音をたてロボットの動きが止まる。


「すごいぞ。やるなあ」

 森一朗がそういうと、天使はにっこり微笑んだ。

「ボッシュ投げろ」その笑顔に少し照れて、森一朗はボッシュの名を呼んだ。


「でも投げるものなんて‥‥」

 ここにはいらない物など無く、投げるものをボッシュはあたふたと探す。必要なものと不要な物の区別がつかない天使は目に付くものを拾っては投げつけた。

 パイプレンチがまっすぐ落ち、砂袋が投下される。

 なにか管みたいなものが続けて落ちる。

 物の所在を想像すると確実に飛行機は墜落することだろう。

 森一朗は考えないことにする。勇者が落ちないって思っていれば墜落はしない。


 四角い箱が投下されると、ロボットの爆弾が爆発する。黒煙が下いっぱいに広がった。

「ぎゃぁっ王子が爆発しましたよ」

「よしこのまま逃げよう」

 黒い煙で姿が見えなくなったことで少し安心した。

「どこに逃げたって追っかけてきますよ。執念深いですから」

 慌てるボッシュは爆発しても心配らしい。確かに追っかけてきそうだなぁと森一朗も思う。悩んでいると、真上を見上げている天使の姿が目に映った。


「じゃ逃げるんじゃなくて帰してあげよう」

 ボッシュと天使に見えるように人差し指を上に向けてさす。

「えっ」


「だって言ってただろう。空には天使が住む島があるって」


 だれだって帰りたい。

 俺だって帰りたい。

 彼女だって帰りたいはずだ。


「いいましけど、これ以上上昇なんて出来ないでスよ。しかも王子のせいでいろんなところ壊れてまスし」

 事実は王子だけのせいではない‥‥。


「もともと飛ぶはずがなかった飛行機がこんなに飛んでるんだ。俺が出来るっていったらできるんだろ?だったら信じろ」

 たかくたかく飛べる。たかく飛べればたどり着く。そう願いながら森一朗はレバーを引いた。

 想いが通じたのか、飛行機はあり得ない角度で上に向かって進路を進めはじめた。

「すごいですよ。空に島が見えまス!」

 空に浮いている雲を突き抜けるとボッシュが後ろで騒いでいる声が聞こえた。

 空に島‥‥そこが彼女の住んでいた場所。もうすぐそこまでたどり着く。


 そう思ったら気が抜けた‥‥。


 いつまで飛んでも上にたどり着けない、飛んでいるのではなくてどんどん高度が下がっている気がした。いや現実に落ちているようだ。ふわふわと漂うようなスピードで。

 せっかくここまで上がってこられたのに‥‥結局はここまでが俺の出来る力か、と森一朗が諦めたとき、背中に寄り添うように座っていた天使が立ち上がる。落ちて雲を突き抜ける前に飛行機から出るつもりなのだろう。


「ちょっと待てよ」

 森一朗は彼女の手をつかんだ。空を飛べない彼女が、こんなところから飛び降りたら雲をつき抜けまっさかさまだろう‥‥と考えてしまったのだ。

「勇者様?」ボッシュはなぜ止めるのだとばかり森一朗を見つめる。

「いや、危な‥‥」

 危ないだろうと思い込んでいる森一朗に天使はやわらかくほほえんで、自分がつかまれている腕をはずす。


「ムルツメスク」


 初めて言った異国語をもう一度話す。

 太陽が彼女の肩越しに森一朗を照らす。その太陽に飛び込む形で彼女は飛行機を飛び降りた。

 彼女の笑顔に見とれたように森一朗は固まったまま、飛び降りるのをただ見ていた。



 青い海の上に浮かぶ飛行機。海に落ちて、ぴくりとも動かなくなった。気力で動かしていたのだから目的を果たすと気が抜けた、そんな感じに見えた。

 翼の上で座り込むボッシュと森一朗。


「雲の上って乗れるんだなぁ」


 さすが異世界と再度認識する森一朗。

 笑顔で飛び降りた彼女は雲の上に、倒れるように落ちた。あまり上手とはいえない着地ではあったが、おりられたようだ。

 そんな彼女の立っている姿を見つめ飛行機はどんどん落ちていった。落ちていく飛行機に彼女はずっと手を振りつづけていた。当然ボッシュも彼女が見えなくなるまで手を振っていたことだろう。


「天使様かわいらしかったでスねぇ。これで幸せでしょう」

 地上の王子から逃げられたし、自分の家に帰れたことだし、彼女は幸せなことだろう。

 めでたし、めでたし。


「だめじゃん‥‥」


「どうしました?」

「お前の願いが叶えられてない」

 俺が家に帰れない‥‥。そのことに気が付いた森一朗は頭を抱え込む。


「そうでした、でも十分ですよ。本の中でしか語られなかった天使様が、こっちを向いて笑ってくれたのでスから。ありがとうでス」

「いや‥‥俺は何も」

 お礼を言われた事に、反応してうつむいていた顔をボッシュに向けた、つもりだった。しかし目の前に広がっていたのはいつもとおる通学路。あのくま頭ではない。


 俺の住んでいる世界だ‥‥。

 ありがとうって言われること何にもしてないのになぁ。

「しょっぼい冒険‥‥」

 森一朗は下を向き誰にも聞こえないようにこっそりつぶやいた。

「とりあえず、愛しの我が家に帰りますか」

 進行方向を我が家に向け、森一朗は歩き出す。

 痛む体があの話を現実だと実感させる。

 家に帰って汚れた服を親と兄にしかられ、学校で友達と騒ぐ、そんないつもと変わらない毎日に戻る。自分でしょぼいと認めた冒険でも心の中には、またあることを願ったりしている自分がいた。

 またあの笑顔に会いたいと、最後の微笑を何度も思い出したりしていた。


 でも、その願いも‥‥

「迎えにきましたよ‥‥勇者様」

 すぐに叶うようだった。


読んでくださって、ありがとうございます。

某シナリオ大賞(他社自粛自粛)の落選作品です。

人間じゃなくて、くまのぬいぐるみが主な住人の異世界です。超めるへんですよ。(そうなのか)

瀬多兄弟の弟だけを『勇者』に仕立て上げました。今回兄は全く出ません。

設定上、ご都合主義ですが、勇者様は別にチート並みな戦闘力があるわけでもなく、倒すべき悪も居ません。あ、強いて言えば、ストーカー王子様ですか。ちなみに彼の乗っているロボットは、バイ●ンマン号ではなく、鉄●28号タイプです(あんなにでかくは無いけれど)。

天使様はわざと文字で描写をしなかったのですが(好みの女性は人それぞれなので‥‥)自分の設定は、13歳、金髪ショートボブの、白のワンピース(ミニ)、生足裸足な、感じで脳内模写してました。


続く要素がありますが、はたして・・。

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