雷の声が聞こえる。
豪雨の中、雷が鳴っている。
教室の中で一部の女子が悲鳴をあげ怖がる。ぜんぜん平気だと自慢している男子もいる。
雷以上に教室の中のほうが姦しい。いったい何をそんなに騒いでいるのか。
騒然とした教室の中、一人冷めている。
窓から外の景色を眺めながら、ふと物思いにふける。
‘雷もしゃべれれば良いのにな’
雷ばかりがこうも怖がられたり、非難されたり、というのはいささかかわいそうだ。
雷が声を出せたらどうなるだろう?
みんなから避けられて悲しむのか、あるいは自分の恐ろしさを声高に主張して得意になるのか。
そんなどうでもいいような思考にどっぷりと浸かる。
帰り道。
雷の音はだいぶ遠くなり、生徒たちもいくら平常を取り戻していた。
遠くで雷が鳴る。誰も気にとめていない。
しかし僕は違った。
雷の音と同時に、何か言葉が聞こえた気がした。
無論周りの人間の声じゃない。人の物でない、恐ろしげな声。
‘これって雷の声じゃないか?’
そう思ったらいても立ってもいられない。僕は雷雲があるほうへと走った。
雷雲はなぜか動かなかった。何時間か走って、ようやく追いつく。
雷雲が不気味に光る。それを真下から眺める。
次の瞬間、目の前が光に覆われた。
その輝きに包まれながら、僕は何かの声を聞く。
それは声にもならないような声で、なんだかとても……。