第八話 ギルドのアイドルと、落ちてきた災厄
今日も元気に、笑顔でお仕事。
それが、私――
冒険者ギルド・リムネア支部受付嬢、ミリア・フェルナーの使命です!
(今日も頑張るぞ!)
朝からギルドは大賑わい。
依頼を受ける人、報告に来る人、酒飲んで騒ぐ人。
いつも通り。平和。最高。
――その時だった。
ギィ……と、ギルドの扉が開いた。
入ってきた人物を見た瞬間。
(……あ)
ギルド内の空気が、一気に張り詰めた。
静まり返る冒険者たち。
視線は、全てその侵入者に向けられている。
毛皮を纏っただけの姿。なぜか裸足。
おまけに仮面もつけて性別も不明。
しかも――妙に重い威圧感。
(やべーヤツ来た……!!)
内心で叫びながら、私は笑顔を貼り付ける。
「い、いらっしゃいませ~……」
声、ちょっと裏返ったかも。
その人物は、真っ直ぐこちらに向かってきた。
足音が、やけに重い。
床が、わずかに軋む。
「冒険者登録したい」
仮面の奥から聞こえたのは、若い男の声だった。
「あ、は、はい! ではこちらに――」
震えそうになる手で、登録用紙を出す。
その時。
(……え?)
私は、違和感に気付いた。
――魔力。
視界の端で、揺らめくような圧。
(この人……魔法、使ってる?)
しかも、常時。
魔法適性のある者は、訓練をすれば魔力を視ることができる。
私は、恐る恐る口を開く。
「……あの、冒険者ギルド内では、魔法の行使は禁止されています」
「は?」
「な、何か魔法を使われているようでしたら、止めてください……!」
すると、仮面の男は首を傾げた。
「無理だ」
「……え?」
「切ったら、色々マズい」
「い、色々……?」
「体重とか」
(体重……?)
意味が分からない。
困惑していると、男は続けた。
「床、抜ける」
「…………」
(何言ってるのこの人!?)
ギルドには、こういう時のための備えがある。
私は、カウンター下から一本の杖を取り出した。
「従っていただけない場合、強制的に魔法を無力化します」
アンチマジックの杖。
触れた相手の魔法を、強制的に遮断する道具。
「いやちょっと待てって!マジでやばいん「大丈夫です。少し触れるだけなので――」
私は、杖を伸ばした。
そして。
ツンと、仮面の男の体に触れた瞬間――
ふっと、足元から重みが消えた気がした。
次の瞬間。
バギャッ!!!!
ドガーンッ!!!!
「――――え?」
轟音。
視界から、男の姿が消えた。
次の瞬間、足元が大きく揺れ、
受付前の床が――陥没した。
「な、なにごとだ!?」
「今の音!?」
「床が!?」
ギルド内は、完全にパニック。
私は、呆然と大穴を見下ろしていた。
(……落ちた? 人、落ちた……?)
頭が、真っ白になった。




