第十二話 奪われた白
朝の空気は、思ったより冷たかった。
里の外れ。
人気のない細い道。
なんとなく人の気配を避けて歩いていたら、
前からあの筋肉の御仁が来た。
(……まだ居たんかーい)
そんでなしてこんな道歩いとるん?
里そんな広くないけどさ。
この人なんか威圧感あって苦手だなー。
あんま見んとこ。(筋肉ガン見)
相変わらずでっかい。
近くで見ると壁みたいだなこの人。
筋肉もやっぱりデカい。しゅごい。
距離が縮まる。
地面に露出した木の根。
朝露で少しぬかるんでいる。
すれ違う、その瞬間。
御仁の足が、わずかに滑った。
「――」
ほんの僅か。
だが確かに、体勢が崩れる。
(あ)
考えるより先に身体が動いた。
足元の重さを抜き、
一歩踏み込む。
腕を伸ばし、相手の肩を掴む。
重い。
思ったより重い。
でも全然支えられる。
その瞬間。
ガツッ。
何かが当たる音。
軽い衝撃。
白が、視界から消えた。
「えっ?」
仮面。
相手の指に、絡んでいるのが見えた。
風が直接頬を撫でる。
俺はまだ御仁の肩を掴んでいる。
手が伸ばせない。
って顔ちかっ!近すぎっ!
ガン見!?
普通顔逸らすだろっ!なんでっ、
なんでこの人、この至近距離で目を合わせてくるの……?(震)
「……」
「……」
……え?
なにこの時間。
しかもなんで体勢立て直さないの?この人。
手離せないんですけど……。
「あ、あの……重いのですが……」
「……すまない。足が滑ったようだ」
そう言って御仁は体勢を直し、俺から離れる。
あ、仮面。
「仮面っ、返してもらえますか?」
御仁は仮面を手にしたまま、
ほんの一瞬だけ、じっとそれを見た。
「……この仮面は……」
「は、はぃ?」
「……いや、なんでもない」
この人会話のテンポ悪いな……。
あとなんか、怖い。
俺は仮面を受け取る。
装着――
する前に、ついでだし気になったことを聞くことにした。
「あの、どうやったらそんなに筋肉がつくのですか?私も筋肉つけたくて」
ずっと聞きたかったんだよね。
俺鍛えても全然筋肉つかないし。
秘訣あったら聞きたい。ぜひ。
「……」
なんかポカンとしてる。
唐突すぎた?
すんませーん……。
次の瞬間。
「ぶふっ……くっくっくっ……」
吹き出した。
なに肩震わせてわろてんねん。
早く質問に答えてほしいんですけど?(怒)
御仁はしばらく笑ったあと、
ふっと息を整え、こちらを見る。
「ふぅ……本当に、すまなかった」
「あ、いえ。お怪我がなくて良かったですけど……え?なんで笑ったのですか?」
「ぶわっはっはっはっ!」
おいぃぃいいい(怒)
なんだこのクソ失礼な筋肉ダルマは!
一人憤慨していると、御仁は笑いながらーーそのまま去っていった。
なんだあいつぅぅぅぅううううう!!
せめて質問答えていけやっ!!




