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第十一話 守るということ

 夜は、まだ深い。


 ガルドの背が闇に溶けるのを見届けてから、

 リヴァルはゆっくりと息を吐いた。


 弓を背負い直す。


 指先に、わずかな震えが残っていた。



(……強い)



 あの男は、間違いなく強者だ。


 気配を読む。

 嘘を見抜く。

 踏み込む寸前で止まる。


 若さで誤魔化せる相手ではない。


 森へ入ったことも、

 穴を見たことも、

 すでに計算の内だろう。


 それでも。



(それ以上、踏み込まなかった)



 踏み込めたはずだ。

 力づくで問い詰めることもできただろう。


 だが、しなかった。


 あれは――秩序側の強さだ。


 リヴァルは視線を森の奥へ向ける。


 月に照らされた世界樹。


 そして、その隣の空白。


 あの日から、

 何度も考えた。


 世界樹が消えた時期。


 ナギが里に現れた時期。


 スタンピート。


 あの夜の、異様な魔力のうねり。


 偶然にしては、重なりすぎている。



(……だが)



 証拠はない。


 そして。


 聞くべきではないと、直感している。


 ナギは、語らない。


 語らないということは、

 語れない理由があるのだろう。


 あの泣き顔を思い出す。


 強さと、弱さを同時に抱えた表情。


 守ると決めたわけではない。


 だが。



(利用させるわけにはいかない)



 外の人間に。


 王都に。


 ギルドに。


 あの力が、知られればどうなるか。


 想像は難しくない。


 里は平穏でなければならない。


 世界樹がある限り。


 その均衡を壊す者は、

 外であれ、内であれ――



(私が、止める)



 夜風が、枝を揺らす。


 ふと、気配を感じて振り向く。


 何もいない。


 だが。


 ほんの一瞬。


 高い枝の上に、白が見えた気がした。



(……見ているのか)



 問いは投げない。


 答えも求めない。


 ただ。


 静かに、月を見上げる。



「ナギ」



 小さく、名を呼ぶ。


 返事はない。


 それでいい。


 夜はまだ終わらない。


 だが。


 守ると決めた者は、迷わない。

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