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第七話 測る者

 いた。


 確かに、いた。


 枝の上。

 白い仮面。


 ほんの一瞬だったが、視線が合った。



(……軽い。いや、軽すぎる)



 第一印象はそれだった。


 あの高さ。

 あの細い枝。

 普通の人間なら、もっと揺れる。


 だが、ほとんど動いていない。

 重さがないかのように。



(魔法か……それとも)



 体格は細い。

 武装も見えない。


 だが。


 枝を蹴った瞬間の移動。

 あれは素人の動きではなかった。


 仮面の人物は、隠れるでもなく、枝に座ったままだ。


 様子見か。

 警戒か。


 敵意は感じない。

 だが、油断もできない。


 見るからに怪しい仮面。

 本来なら追って捕まえてもいいくらいだが......。



(追えば、面倒になる)



 ここはエルフの里だ。

 依頼は護衛。

 余計な動きはできない。


 だが。

 あの仮面。


 白。

 無地に近い。

 片側に、わずかな模様。



(……どこかで)



 記憶の端に、何かが引っかかる。


 あの時の、泣いていた少女。

 白い仮面を拾っていなかったか。

 それに、黒髪。



(......同一人物か?いや......)



 可能性はある。

 だが確証はない。


 決めつけるには材料が足りない。



 名も知らぬ仮面の影。


 一見そうは見えないが、確実に強い。


 筋肉量ではない。

 立ち姿からでもない。


 ――重さの制御。


 それが、異質だった。



 ガルドは小さく息を吐く。


 森の空気は湿っている。

 だが、どこか澄んでいる。



(この里で、何があった?)



 静かすぎるのだ。

 魔力の残滓が、まだ薄く漂っている。


 スタンピートの規模を考えれば、

 何かが介入したはずだ。


 そして。


 あの仮面の影。



(……面白い)



 口元がわずかに上がる。


 依頼は護衛。

 それ以上はしない。


 だが。


 この森は、何かを隠している。


 ガルドは再び周囲を見渡した。

 外交の声が続いている。


 だが、風は変わった。


 何かが動き始めている。

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