第六話 交わらない視線
第六話 交わらない視線
エルフの里は、静かに緊張していた。
里の中心部で、王都の使者と里長が向き合っている。
その少し外。
建物の中には入らず、周囲を警戒する人間の一団。
その先頭に立つ男が、一人。
体格が違う。
空気が違う。
ただ立っているだけなのに、妙に目を引く存在がいる。
*
そんな様子を上から眺める不審者、どうも俺です。
野次馬根性が抑えきれませんでした!
人間が来たと聞いた瞬間から俺は木に登り、枝の間からその様子を眺めていた。
仮面は装着済み。
もし絡まれても男の声なら相手も警戒するだろうって魂胆ね。
(……人間かー、久々に見たな)
なかなかに物々しい雰囲気の一団。
エルフのみんなが警戒するのは当然だろう。
何しに来たんだ?
リヴァルからは「遠くへは行くな」と言われているけど、木の上なら問題ないよな?
ここからならあちらさんも気付かないだろうし。
視線を滑らせる。
使者。
兵士。
そして。
(……なーんか、強そうな御仁がいるな)
先頭に立つ男。
でかい。
肩幅広い。
腕も太い。
単純に、筋肉がすごい。
(あれ絶対、殴られたら痛いやつだろ)
なんというか、立ってるだけで圧がある。
その御仁が、あたりを見回している。
(何探してんだ?)
その瞬間。
男が、ゆっくりと顔を上げた。
(……っ)
目が、合った。
距離はある。
でも、確実にこっちを見ている。
心臓が、きゅっと縮む。
(いやいやいや、気づく?普通……?)
俺、そんな目立ってるか?
男が一歩、踏み出す。
(やめちょくれー)
俺は枝を蹴って重力を抜き、次の枝へ移る。
音は立てずに、強そうな御仁の視界の外へ。
いそげー。
少し離れた位置に座り直す。
男は追ってこない。
ただ、こちらを測るように見ているだけ。
なにあの人、こえーんですけど?
(めんどくさいな)
仮面の内側で、ため息をつく。
別に出ていく気はない。
里の問題だし。
部外者の俺は、ただ見るだけ。
下では、話し合いが続いている。
それにしてもあのマッチョメンの顔。
(どっかで見たことある気がするんだよなー......)
でもまあ、気のせいかも。
俺は枝の上で足をぶらつかせながら、野次馬を続けるのだった。
*
静かな森に、外の風が入り込んでいる。
視線は交わった。
だが。
まだ、何も始まってはいない




