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第六話 交わらない視線

第六話 交わらない視線


 エルフの里は、静かに緊張していた。

 里の中心部で、王都の使者と里長が向き合っている。


 その少し外。

 建物の中には入らず、周囲を警戒する人間の一団。


 その先頭に立つ男が、一人。


 体格が違う。

 空気が違う。


 ただ立っているだけなのに、妙に目を引く存在がいる。





 そんな様子を上から眺める不審者、どうも俺です。

 野次馬根性が抑えきれませんでした!


 人間が来たと聞いた瞬間から俺は木に登り、枝の間からその様子を眺めていた。


 仮面は装着済み。

 もし絡まれても男の声なら相手も警戒するだろうって魂胆ね。



(……人間かー、久々に見たな)



 なかなかに物々しい雰囲気の一団。

 エルフのみんなが警戒するのは当然だろう。

 何しに来たんだ?


 リヴァルからは「遠くへは行くな」と言われているけど、木の上なら問題ないよな?


 ここからならあちらさんも気付かないだろうし。


 視線を滑らせる。


 使者。

 兵士。

 そして。



(……なーんか、強そうな御仁がいるな)



 先頭に立つ男。


 でかい。

 肩幅広い。

 腕も太い。


 単純に、筋肉がすごい。



(あれ絶対、殴られたら痛いやつだろ)



 なんというか、立ってるだけで圧がある。

 その御仁が、あたりを見回している。



(何探してんだ?)



 その瞬間。


 男が、ゆっくりと顔を上げた。



(……っ)



 目が、合った。


 距離はある。

 でも、確実にこっちを見ている。


 心臓が、きゅっと縮む。



(いやいやいや、気づく?普通……?)



 俺、そんな目立ってるか?


 男が一歩、踏み出す。



(やめちょくれー)



 俺は枝を蹴って重力を抜き、次の枝へ移る。

 音は立てずに、強そうな御仁の視界の外へ。

 いそげー。

 


 少し離れた位置に座り直す。


 男は追ってこない。

 ただ、こちらを測るように見ているだけ。

 なにあの人、こえーんですけど?


 

(めんどくさいな)



 仮面の内側で、ため息をつく。


 別に出ていく気はない。

 里の問題だし。


 部外者の俺は、ただ見るだけ。


 下では、話し合いが続いている。



 それにしてもあのマッチョメンの顔。



(どっかで見たことある気がするんだよなー......)

 


 でもまあ、気のせいかも。

 俺は枝の上で足をぶらつかせながら、野次馬を続けるのだった。

 




 静かな森に、外の風が入り込んでいる。


 視線は交わった。


 だが。


 まだ、何も始まってはいない

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