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第五話 森へ向かう者

 森の空気は、街とは違う。


 湿っている。

 静かだ。

 音が、吸い込まれる。


 武技ギルドSランク【力】のガルド・レオンハルトは、馬上でゆっくりと視線を巡らせた。


 背後には王都の紋章を掲げた小隊。

 今回の依頼は単純だ。


 ――エルフの里の安否確認。

 その護衛依頼。


 最近起きたスタンピート。

 報告では被害は軽微らしいが、王都は警戒している。


 エルフは閉鎖的だ。

 何かを隠していてもおかしくはない。


 そして。

 ガルドにはもう一つ、依頼を受ける理由があった。



(……あの森の奥、か)



 リムネアの街で会った、あの少女。


 魔法を解除したら体重で床をぶち抜き。

 ガルドの殴打を受け、気絶し。

 それでも傷一つ無い様子で、泣きながら立ち去った、あの少女。


 

(……忘れられない、か)



 自嘲気味に鼻で笑う。


 探す理由はいくらでもある。


 なぜガルドの拳を受けて傷一つ無いのか。

 なぜそんなに体重が重いのか。

 なぜ男の声で話せるのか。


 ーーなぜ、泣いていたのか。


 痛かったのか。

 それとも、あれは別の涙だったのか。



「ガルド様」



 後ろから声がかかる。

 王都からの使者に付き添う小隊の兵士だ。



「この先、道が細くなります」


「わかった。先行しよう」



 短く答え、森の奥へさらに踏み込む。


 エルフの里は、王都と正式な同盟関係にはない。

 交流はあるが、互いに干渉しすぎない距離を保っている。


 今回の訪問も、あくまで“確認”だ。


 だが、ギルドに集まる情報は、別の顔をしていた。スタンピートが起きた場所がこの森の近辺である、ということを。


 他の都市へのスタンピートの規模を考えると、エルフの里が無事とは思えない。


 あの夜。

 遠くで、森が揺れたと報告があった。

 地面が沈んだとも。


 王都では「誇張だろう」と片付けられている。

 だが。



(誇張であってほしいものだな)



 森の奥から、微かに風が流れてくる。


 魔力の流れ。


 微弱だが、確かに何かがあった痕跡が残っている。


 

 さらに。



(あの少女も、“森から来た“と門番は言っていた)



 黒髪の、名も知らない少女。


 あくまでもついでではあるが、なにかあの少女に繋がる情報があるなら知りたいとガルドは考える。


 もし――


 もしあの少女が、ここにいるのなら。

 再び会えるのなら。



(……まずは、謝ろう。そしてーー)



 森の奥に、木々の間から高く伸びる影が見えた。


 巨大な樹。

 エルフの里の象徴。


 その足元へと、王都の使者はゆっくりと近づいていく。


 風が、わずかに変わった。


 静かな森に、

 外の気配が入り込む。

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