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第三十九話 名も知らぬまま

『なんで女なのに男みたいな格好してんだ?変なやつー』


『男女とは一緒に遊ばねー!女子と遊んでろよ!』



 俺は男だっ。俺だってみんなと遊びたいのに......。



『凪ちゃんスカート履かないの?絶対似合うのにー!』


『凪ちゃん彼氏作んないの?こんなに可愛いのに勿体ない』



 俺は男でっ、ちゃんと、女の子が好きでっ......。



『ごめんなさい。私、男の子が好きだから......』


『俺と付き合ってくれ!お前のことしか考えられないんだっ』



 なんでっ、なんで......。



『無理だよォ、君は、か弱い女の子なんだから...。』



 あっ......。っ......。



 そう、か......。俺は......ほんとに......。





(リヴァル視点)



「ちが、うの......わたくし、は......」



 少し前から、彼女がうなされ始めた。

 額に汗を浮かべ、涙を流しながら。


 どんな夢を見ているかは分からない。

 ただ、彼女にとって苦しいことなのは間違いないだろう。


 私は彼女の横へ座り、涙をそっと拭う。


 思えば、私は彼女の事を何も知らない。



 世界樹に選ばれし聖剣の勇者。


 仮面を身につける時は、声も仕草も男そのもの。

 仮面を外せば、見るものの目を奪う可憐な容姿、仕草。


 男の友人のような気さくな一面もあれば、

 母のような優しい眼差しを子どもに浮かべたりもする。


 鎧袖一触の強さがあるにも関わらず、

 それを鼻にもかけず、ひけらかすこともしない。



「よく分からない人だ」



 そう評するに相応しい人物、それが彼女。


 だが、私は見てしまった。

 彼女の“弱さ“を。


 彼女は、泣いていた。

 普通の女の子のように、

 怯え、怒り、悲しみ、肩を震わせて。


 “誰にも見られたくない“

 “理性を失う前に“


 彼女が何を抱えているかは、分からない。

 ただ、あの悲痛な叫びに込められていたものが、

 良いものではないであろうことは、分かる。



「私は、貴女に何をしてあげられるだろうか」



 必要としていないかもしれない。

 拒絶されるかもしれない。


 でも、それでも私は、



「貴女の、助けになりたい」



 私は彼女の事を何も知らない。



 だから、彼女が目を覚ました時に言うセリフは決まっている。



『貴女のお名前を、教えてくださいますか』

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