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第三十一話 決壊

 ズンッ


 また、地面が沈んだ。


 無意識に起動した重力魔法の円。

 その中心に、俺はいた。


 目に映るのは、

 魔物、魔物、魔物......。


 街に向かって移動していたはずの魔物の群れは、

 今では俺に向かって集まってきている。



「……なぜ……」



 自分でも、何に対して言ってるのか分からない。


 なんでこんな目に遭ってるのか。

 なんでこんなに嫌な思いばっかりするのか。

 なんで俺ばっかり、って。


 そんな子供みたいな言葉が、

 頭の中をぐるぐる回っていた。


 ズブッ


 重力魔法の円、その境い目。


 また一体、魔物が足を踏み入れた。


 沈む。

 もがく。

 潰れる。


 でも、止まらない。


 次が来る。

 また次が来る。


 命令に突き動かされるみたいに、

 どんどん近づいてくる。



「……もう、やめて……」



 声が震える。



「……いいかげんに、して……」



 拳が、ぎゅっと握られる。


 肩が揺れ、涙がまた落ちる。


 ズンッ


 周囲の地面が、さらに深く沈んだ。


 木の枝が折れる。

 石が砕ける。


 重力魔法の範囲が、

 ゆっくりと、

 少しずつ、

 外へ広がっていく。


 でも、魔物は止まらない。


 踏み込む。

 沈む。

 潰れる。


 それでも後ろから、

 次が、

 また次が、

 押し寄せてくる。


 その中に。


 ――いた。


 豚の頭。


 よだれを垂らし、

 血走った目で、

 こちらを見ている。


 足を引きずりながら。

 体を傾けながら。

 それでも、まっすぐ。


 こっちへ来る。


 その瞬間。


 頭の奥で、

 何かが弾けた。


 ――囲まれた感覚。


「あっ」


 ――粘つく視線。


「あっあっ」


 ――咽せ返るような獣臭。


「あっあっあっ」


 ――あの豚頭のーー


「ーー」



 呼吸が、止まる。


 豚頭が、近付いて来る。

 境界線の中へ、

 ゆっくりと足を踏み入れーー



「……ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアっ!!!」



 叫びが、爆ぜた。


 ドンッ!!!!


 地面が、沈んだ。


 さっきまでとは比べものにならないほど、

 一気に、

 深く。


 広く。


 豚頭の体が、

 一瞬で、

 ぐしゃりと潰れる。


 骨が砕ける音すら、

 聞こえなかった。


 その周囲にいた魔物も。


 一体。

 また一体。


 地面に押しつけられるように、

 沈んでいく。


 でも、止まらない。



「もぅぜんぶっ、消えてぇぇぇぇぇええええええええっ!!!



 ――ズンッ!!!!


 森が、沈んだ。


 木が軋む。

 地面が裂ける。

 岩が砕ける。


 境界線が、

 一気に、

 外へと広がる。


 魔物が、

 まとめて、

 地面に押し潰される。


 逃げようとするものも。

 飛び上がろうとするものも。

 関係ない。


 見えない何かが、

 上から、

 全部を、

 押しつけていた。


 俺は、ただ泣きながら、

 叫んでいた。



「うぅぅ……っ……っ、ぅあああああああああああああああああああっ!!!!」



 もう、

 止め方なんて、

 分からなかった。

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