第三話 まずは試してみるか
……目を覚ますと、木の洞の中だった。
「……あれ?」
空。草。風。
見覚えはある。
「そうですわ……ここは転生した場所……」
夢の中でジジイに会って、仮面を貰って――
「はぁぁ……まあ、くよくよしてても仕方がありませんわね」
未練を断ち切り、気持ちを切り替える。
「まずは、自分の能力を把握しませんと」
重力魔法。
それが、俺が唯一望んだ力。
「筋肉を鍛えるには、まず負荷ですわ」
うんうんと一人で頷く。
「……とはいえ、加減が分かりませんわね」
少し考えてから、結論に至った。
「まあ、自分にかけてみれば分かりますわよね」
誰も見ていない。
危険そうなら止めればいい。
「よし……」
森の中の空き地に立ち、俺は集中する。なんとなく変な力が俺の中に渦巻いているのを感じる。これが恐らく、魔力。
アニメで見たことがあるのは確か、魔力を手のひらに集めてそこから発射する感じで...。
「――《重力魔法》起動!とかd」
瞬間。
世界が、落ちた。
「――っ!?」
地面が、いや、俺自身が、叩き潰される感覚。
肺から一気に空気が抜け、視界が暗転する。
「……――」
悲鳴すら出なかった。
俺の意識は、そこで途切れた。
*
――だが。
重力魔法は、解除されなかった。
強烈な重力が、白川凪の体を押し潰す。
骨が悲鳴を上げ、筋繊維が断裂し、内臓が耐えきれず潰れる。
普通なら、即死。
だが。
壊れた骨は、元に戻る。
裂けた筋肉も、潰れた臓器も。
何事もなかったかのように。
*
不変(限定)・・・①容姿が変わらない。②容姿が維持できない状態になった場合、肉体を調整して元の状態に戻す。
*
次の瞬間、また壊れる。
戻る。
壊れる。
戻る。
――延々と。
重力は止まらない。
壊れては戻り、戻っては壊れる。
繰り返される“調整”の中で、肉体は少しずつ、だが確実に変質していった。
より強く。
より密度を増し。
より“耐えるための形”へ。
*
どれほどの時間が経ったのか。
意識が、ふっと浮上する。
「……う、うぅ……」
瞼が重い。
「……頭、痛いですわ……」
体が、異様に重い。
まるで、地面と一体化しているような。
「……?」
動こうとして、気付く。
「……動け、ませんわね」
視界を動かす。
地面が、やけに近い。
というか――
「……地面に、めり込ん、でますわね...」
顔の半分ほどが、土に埋まっている。
どうやら、俺は地面に沈み込んだ状態で気絶していたらしい。
とりあえず...。
「……うぐぐ...魔法、解除。...ぷはーっ!」
その瞬間、先ほどまで感じていた重さが消失。体が一気に軽くなった。
いや、軽すぎなんてもんじゃない。なんだこれ、今なら空飛べるかも。
兎にも角にもまずは起き上がるか。
――ずるっ。
手に力を入れたら、地面が抉れた。
「……?」
もう一度。
今度は、軽く。
――ぐしゃ。
指が地面を掴み、簡単に引き裂く。
「……土が、柔らかいですわね」
直近で雨でも降った後だったのだろうか。
首を傾げながら、体を起こす。
ずず……と、地面から這い出るように立ち上がった。
「……ふぅ。転生早々大変な目に遭いましたわ...」
全身に違和感はあるが、痛みはない。
どうやらジジイがくれた重力魔法は、俺が思っている以上に強力なようだ。
「……しっかり加減しないと、また気絶してしまいますわね」
というよりまずは威力確かめてから自分に使えばよかったな。はしゃぎすぎたようだ。反省。
でも内心、俺は強力な重力魔法にとてもワクワクしていた。
(こんだけ強いなら、筋トレも捗るぞ!うひょー!)
反省はした。が、後悔はしていない!
顔がニヤけるのを感じながら、次の筋トレ育成計画を実行に移すべく早速行動を開始...しようとした俺だが...。
「あっ...」パサッ
突然、着ていた服が落ちた。
下を見ると、見覚えのない二つの丘の間から落ちた服、いや、ボロ布が見えた。
...恐らく、いや十中八九、先ほどの重力魔法のせいだろういやそんなことよりも。
...うーむ。この光景自体は夢にまで見たものなんだが...なんというか...地産地消というか......。でも...。
......、うむ。
「っ......、......んっ...。」
.........。
......。
...。
......ふぅー。
なんか、服のこととかどうでもよくなっちゃったな。なんでかは知らんけど。
なんか体もちょっと怠いし、今日は休んで明日考えよう。そうしよう。
俺は再びミシミシと軋む木の洞に戻ると、丸くなって眠りについた。
*
凪の立っていた場所には、深く抉れた地面と、人型の穴。
そして木の洞に続く、地面に残る足跡。
煩悩に支配されていた凪は気付いていない。
自分の体重が、異常に増していることにも。
自分の肉体が、常人離れした強靭さを得ていることにも。
*
名 前:白川 凪(18歳/女性)
種 族:デミヒューマン[階位I]
装 備:なし
能力値:[体力]1164
:[魔力]5125
:[力]1787
:[防御]2487
:[素早さ]755
:[器用さ]78
:[賢さ]596
魔 法:重力魔法Lv.1〈S〉
武 技:なし
加 護:創造神の加護〈S〉
ギフト:淑女・・・口調・動作が淑女らしくなる。
:豊胸・・・バストサイズUP。
:不変(限定)・・・①容姿が変わらない。②容姿が維持できない状態になった場合、肉体を調整して元の状態に戻す。




