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幕間 月夜に蠢く影
???視点
月明かりに照らされた森の上空。
黒い影が、静かに羽ばたいていた。
夜の空気を切り裂くように、ゆったりと滑空する。
その動きには、焦りも緊張もない。
(……退屈な任務だ)
人間の街を一つ潰せ。
それだけ。
魔物の群れを率いて、押し潰すだけの簡単な仕事。
自分が出るまでもない。
だが、命令だから来た。
それ以上でも、それ以下でもない。
(人間ごときに、何ができる)
この辺りに、特別な戦力がいるという話も聞かない。
せいぜい、そこそこの冒険者がいる程度だろう。
多少抵抗されようが、結果は同じだ。
踏み潰すだけ。
(何が来ようとも――)
口元が、わずかに歪む。
(俺には叶うはずもない)
くっ、と小さく喉が鳴る。
笑いをこらえるような、余裕の音だった。
(守れるものなら守ってみろ)
羽ばたきを一度。
黒い影が、さらに高度を上げる。
遠くの地平線の先に、人の灯りが小さく見えた。
月が、雲間から顔を出す。
その光が、影の横顔をかすめた。
わずかに覗いた口元。
そこに並ぶ牙が、月光を受けて白く光った。




