第二章
二章
人に出会うために森を探索していると銃声が聞こえた。そのあと悲鳴にも似た叫び声が聞こえる。私は考える間もなく、声の方向へ駆け出した。
音の方向へ向かうと、そこには角を持つ巨大熊「ディアベア」がいた。ディアベアの対面には金髪の少女がいる。本能のようなものであの少女を守らないといけないと感じる。私は全力で駆け出して、
「…出力最大っ…‼」
ディアベアの角が少女に刺さる直前にディアベアの頭にドロップキックが炸裂する。 少女の前に背中から落下する。
「う”っ‼」
背中が痛かったけど、急いで体制を立て直す。少女のほうは見ずに
「ここから離れて!」
と伝えるが、少女が離れる様子はない。ディアベアも体制を立て直してきた。一瞬だけ少女を見ると銃をこちらに向けている。それに驚きはしたが、その他にも少女は足を怪我しているようだ。 「パァン!」弾が私を貫く。
「い”っ‼」
痛い。が、正面からディアベアもきている。この少女を守らなくては。 ディアベアの突進を角をつかみ受け止める。がそのまま押され、角の一部が胸部に刺ささり、青い血が流れる。
「ギッ…いったいなぁ!」
私は角から手を放し、両手を組む。そのまま大きく振りかぶりディアベアの脳天に叩き込んだ。 そのまま頭を砕きディアベアは絶命した。
「わぁお…」
驚いた。砕け散るとは思わなかった。 少女は今も銃を構えて撃とうとしているが、弾が飛んでこない。たぶんこのクマに使ったんだろう。
「はぁ…!はぁ…!いっ…いったい何が目的だ…!なんで私を助けた⁉」
恐怖と困惑の混じった声で少女は私に聞いてくる。なんでといわれても…
「私が助けたかったから…じゃダメかしら?」
「シンギュラリティが人を助けるわけないだろ⁉」
「でも助けたじゃない?…しんぎゅらりてぃ?が何なのかは知らないけど、私はあなたを助けたわ。それだけじゃ不満?」
シンギュラリティ…私の知らない組織…?あの工場といい、いったいどれほどの時間が…
「…確かにあんたはあたしを助けた。それは事実だ。だけど助けた理由の意味がわからない。あたしはあんたのことを打ったんだぞ?」
「とーっても痛かったわ。背中を打った次くらいにはね。」
助けた理由なんて本当にない。危なかったから反射的に動いただけ。それよりも…
「うっ…悪かったわね。いや、でも…うっ。痛っ…」
やはり怪我をしている。見た感じ捻挫だろうか。
「怪我してるんでしょ見せて。」
「…いやだ。」
すごい警戒してる…だけど。無理やり足を掴む。
「痛っ⁉あんたやっぱり…‼」
「うん。捻挫ね。近くに川があったからそこまで運ぶよ。いいわね?」
そのままお姫様抱っこの形で少女を抱き上げる。
「うわぁ!」
少女が暴れるがお構いなしに川まで運ぶ。いやほんとに暴れないでほしい。君に撃たれたところに響いてるのよ。
川に足を入れ捻挫の治療をしていると痛みが引き落ち着いたのかゆっくりと少女と話始める。
「本当にお前はいったい何者なんだ…?」
「私?私はアンドロイドよ。見たことない?」
「…あたしがしってるのは人間以外と会話可能なもんはシンギュラリティだけだ」
「私はそのシンギュラリティっていうのを知らないのよねぇ…いえ、言葉の意味としては分かるのよ?」
「シンギュラリティはシンギュラリティだ。この辺では会わないけど。」
「シンギュラリティは例外なくあたしたちと反対の血…青い血を流すって言われてる。だからあんたをシンギュラリティと思ったんだ。そう聞いてたから…」
「ふぅん…」
情報はなさそう。言い方的に出会ったら逃げろ、で最低限の情報だけ渡されているみたい。とりあえずシンギュラリティは危険だってことはわかった。怖いね。
空の色が赤くなり始めている。まずいかも。彼女が私を危険だと判断するように彼女の住処の人たちも私を警戒する。…だが、今の私に彼女を守れるだろうか。ここはディアベアがいるほど豊かな森だ。きっとほかにも危険な動物が出るだろう。…よし。
「そういえば、あなた名前は?」
「あたし?あたしは…リーヴァ。」
「そうリーヴァね。改めてよろしく。ねぇリーヴァ?これからあなたのことをおうちに返そうと思うのだけれど案内を頼めるかしら?」
「村に…?」
「そう。私はあなたを守るわ。命を懸けてね。でも、このけがであなたを守り切れるかっていわれると難しいと思うの。だから、夜になる前に移動したい。いい?」
リーヴァは不安そうな顔でどうするか考えている。
しばらくしてリーヴァは決心したように
「わかった。大人たちにはあたしが説明する。…あたしを村まで送って行って。」
「ありがとう。それじゃあさっそく行きましょうか。」
早速私が膝の下に手を入れようとするとリーヴァが手を突き出して
「まって。流石にお姫様抱っこは恥ずかしい。」
リーヴァを送っている最中名前の話題になった。
「ねぇ。あたしの名前は教えたけど、あんたの名前は聞いてないよね。なんていうの?」
「私の名前?まだないわねぇ」
「まだないってどういうこと?これからつく予定でもあんの?」
「まぁそうねぇ…私は家庭用のアンドロイドだったから私を買ってくれた人に名前をもらうのよ」
「ふーん。あ、そこの印を左ね。じゃあさ、私がつけてもいい?」
「はいはい左ね。名前は付けてくれるならもらうわよ~」
「じゃあベア・プロフェッサーで。」
「…一応由来を聞いてもいいかしら?」
「熊をうちゃぐちゃにしてたからだけど?」
「うーん…せめてもうちょっとこう…ねぇ?」
「えー。そうだなぁ…じゃあプロフで。」
「それ結局由来は一緒じゃない‼いやよ私自分の名前説明するのに熊をひき肉にしたからですっていうの!」
「んんー。…ん?」
「…フローアはどう?」
「一応理由は聞くわよ?」
「データを保存するために使う鉱石があるんだけどその鉱石の名前だよ。」
「鉱石…」
「思い出は消えないっていう意味合いとその形から”不壊の華”って呼ばれてるんだ。」
「うんいいじゃない。すごく気に入ったわ!ありがとう。リーヴァ。」
「いやぁプロフもいいと思うんだけどね。」
「絶対に嫌。」
「正直印象がそこしかないんだよね。あのあと角も折ってるし。」
「それはリーヴァが持っていこうって言ったんじゃない。」
「いやまさか折るとは思わなかったんだよ…」




