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二度の危険な誘いと公爵の真意

こんにちは!

前回、第三話で鑑定バトルを乗り越えた優月ですが、休む間もなく今回は舞踏会でのダンスという新たな試練に直面します!体育祭でしか踊ったことのない優月は、この社交界の試練を乗り越えられるのでしょうか……?

そして、闇の王子・セドリック殿下に加え、隣国の知的チートジークベルト公爵が優月に本気の探究心を見せます。

公爵の恐るべき観察眼は、優月の【空位の器】の秘密を暴けるのか!?

優月の内心の叫び(とシスコン兄たちの暴走)が止まらない第四話、どうぞお楽しみください!

拝啓 お父さん、お母さん。

優月は最大のピンチを迎えています。

舞踏会ということでダンスを踊らなければなりません。体育祭でフォークダンスしか踊った経験の無い私はどうすればいいのでしょうか。


はぁ…イケメン双子兄の選んだドレスのせいで目立ってるよ。国王陛下たちとも話したからなおさらだよ!私は目立ちたくないです!!


「ここに居たのか、サージェント嬢。いや…フローラ嬢とお呼びしても?」


「っ!第一王子殿下…」


「私のことはセドリックと呼んで構わない。フローラ嬢に呼ばれるなら、な」


「セ、セドリック殿下…」


「まぁ及第点かな。ところでフローラ嬢はダンスの相手は居るのか?」


「いえ、おりません」


「なら私が誘ったら受けてくれるか?」


嫌です!踊りたくありません!!

って断れたらどれだけ良かっただろう…

馬と鹿のセドリックでも相手は王族だし断れる人っているのか?同等の貴族ってなれば皇女とかならこの誘いを断ることが出来たんか?

このアッホゥ!な王子の誘いを受けるしか私には選択肢はない。はぁ…


「大変光栄ですわ、私でよろしければ」


どうだ!フローラの淑女教育の賜物、淑女スマイルは!社交辞令として完璧でしょ?!


「とても嬉しいよ、フローラ嬢」


馬と鹿のセドリックは、アシェルお兄さんとかレーヴィお兄さんには及ばないけどやっぱり顔面偏差値は高いよね。微笑んだだけでも威力あるもん。私以外の令嬢たちが顔を赤く染めてたよ。


「セドリック殿下、お聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」


「君の質問なら大歓迎だ。何が聞きたいんだ?」


「その…私は伯爵の生まれです。なぜ殿下から招待状が送られて来たのか分からなくて」


「……フローラ嬢の双子の兄は王国の騎士団として優秀だと言う話は分かるよな?優秀な兄たちが揃って自慢する妹を一目見たいと思うのは当然な流れだと思うが」


「左様でございますか…」


アシェルお兄さんとレーヴィお兄さん、騎士団でもシスコンを発揮してたんすね…いやしないでほしかったかもしれない。元を辿ればお兄さん方が原因作ってるじゃないすか!!


気を取り直しセドリック王子の手を取り、ダンスフロアに移動する。


ダンスが始まってしまう!どうしよう?!なるようになるしかないよね?!助けて!!アシェルお兄さん!!


「セドリック殿下とサージェント嬢のダンス、見惚れるわね…」


「あぁ…ダンスは技術が高いほど美しく洗練されているが、2人の息はピッタリでお手本そのものだな」


無意識に体が動いてくれてるから助かってるけど、これでいいの?!正解が分からないんですけど


「フローラ嬢はダンスも嗜んでいるとは、恐れ入ったな」


「い、いえ…私なんて人並みですわ」


「謙虚なところもフローラ嬢らしい。…より一層私の物にしたくなる」


馬と鹿の王子!ダンス中に話しかけてくるんじゃないよ!うっかり王子の足でも踏んだろか?!


なんとか第一王子とのダンスが終わる。

お、終わった…帰りたい、今すぐにでもお家に帰りたい。


「フローラ嬢、次の曲も私と…」


王子の言葉を遮り、割り込んできたのはあの公爵だった


「セドリック殿下。フローラ嬢と踊っても?」


「………好きにしろ」


「ありがとう存じます。セドリック殿下」


あ~…馬と鹿の王子が公爵に負けたよ。そりゃ公爵は185cmの高身長で黒髪短髪でタンザナイトのような瞳の色をしてるイケメンですもんね~。銀髪でルビーのような瞳の色をしてる殿下でも身長は公爵より少し低いとね~…


「フローラ嬢、私と踊ってくれますか?」


正直に言ったら断りたい。ものすごく断りたい。……いや、待てよ?これは公爵を鑑定出来るチャンスなのでは?……ダンス中に鑑定をしてみるかな…


「ジークベルト様と踊れるなんて、光栄ですわ。お受けいたします」


よし、淑女スマイル決まった!


公爵と踊り始めると私は鑑定スキルを使った


隣国ラゼボ王国の公爵

名前:ジークベルト=アーチャー 22歳

属性:水・光

スキル・水のスキル→深淵(アクエリアス)観測(オブ・ザーヴァー)光のスキル→調律(ハーモニー・)支配(ドミネイト)


わぁお…公爵は二属性持ちだ。確か前にレーヴィお兄さんが二属性持ちは珍しいとか言ってたな。そして光属性はサコヴィナ王国では1000年に一人いるかいないかの珍しい属性…隣国ラゼボ王国ではどうかは知らないけど


一言、思ったこと言わせてください。

公爵、私(優月)より年下なのに!溢れ出る大人の余裕がなんかムカつく!!


「…フローラ嬢?どうかしましたか?」


「っ!いえ、なんでもありませんわ」


「……貴女は不思議な女性(ひと)だ。能力が無いはずなのに自然と惹かれてしまう」


公爵、意外と鋭い。私の能力がチート級ってバレるのも時間の問題なのかもしれない。いや、でも空位(エンプティ・)(シェル)は水晶の鑑定も国王陛下の鑑定スキルも私の能力を隠し通したんだから大丈夫なはず…


「ジークベルト様は、なぜこのサコヴィナ王国に?」


「王族から招待されたのですよ。思わぬ嬉しい収穫がありましたが」


公爵、私にウィンクしてきたよ。

何?ファンサかい?それともアピールかな?


2曲目が終わると、公爵が私の手を引き会場から離れた


「あの、ジークベルト様?」


「フローラ嬢、私は本気で貴女が気になっています。…私のスキルを持ってしてでも計り知れないのは初めてだ」


公爵のスキル…?あぁ!水のスキルの深淵(アクエリアス)観測(オブ・ザーヴァー)の方かな?水の静けさのように心を深く落ち着かせて周囲の魔力とか精神の流れと感情の流れを詳細に観測して正確に分析できるスキル!


あ、そうなんです。私の鑑定スキルは相手のスキルの効果も鑑定できる優れものなんです。えへへ…って言ってる場合じゃない!


「私は先程の能力判定で判明した通り、無属性で魔力もスキルもないことはジークベルト様も見ておられたのでは?」


「その、無属性が何故か引っかかるのですよ。フローラ嬢。私のスキルで相手の魔力などを正確に分析できるはずなのに、何も持たないはずの貴女のことが分析出来ないのは何か隠されていると思うのが妥当ではありませんか?」


そ、それは確かに一理あるかもしれない…

って!言いくるめられたら終わりだ!私の平穏が!私の隠蔽スキルが公爵の水スキルに勝ったってことでいいじゃん!今は何とかこの状況から抜け出す方法を考えないと!


「…分析できないと言うことは、裏を返せば私は本当に何も無いと言うことになると思いますわ!」


「なるほど...そう言われるとそうですね…」


よっし!!切り抜けられそうだ!


「では、私はこの辺りで…ジークベルト様、ごきげんよう」


その場を離れて無事にお家に帰ってこれた私、フローラはお父さんとアシェルお兄さんに呼び出されました。なんとなくなに言われるか察した。


「フローラ!第一王子と隣国の公爵に婚約を迫られたと言うのは本当かい?!」


「お父様、落ち着いてくださいませ。第一王子殿下との婚約は保留でまだ決まっておりませんし、公爵様におかれましても正式に決まったわけではないですわ」


「……そうか。それならいいんだが…もし私の可愛い娘が誰かのお嫁さんになるなんて想像したくない!」


フローラのお父さん、顔面偏差値が高くて仕事も出来てスパダリなのになんか残念なイケメンだよね…


「俺も舞踏会の警備中、あのダメ王子がフローラに婚約者になってくれって言った瞬間に殺意が沸いたな…」


アシェルお兄さんはそう言いながら私を後ろから抱き締める。

アシェルお兄さん、その時の顔マジで怖かったもんね。あと2人のダンス中の時も笑顔が怖かったよ


「……もしフローラが第一王子に嫁ぐようになってしまったら王家とは縁を切るかもしれないな」


「え?」


「そうしましょう、父上。レーヴィも俺と同じ意見ですから」


「え?!」


「フローラ、あの舞踏会の場にレーヴィが居なかったのがダメ王子と隣国の公爵にとっては幸いだったよ。アイツが居たら俺と力を合わせて火の海になってただろうから」


血の海じゃなくて、火の海…?いや、王族に対しての反乱じゃん、そんなの。レーヴィお兄さんが居なくて良かったかもしれない


「アシェルお兄様、落ち着いてください。お兄様らしくありませんわ」


「フローラ…でも」


「でも、じゃありません!警備中のお兄様、かっこ良かったのに…」


「えっ?!俺、かっこ良かった?!フローラ、かっこ良かったって言った?!」


「えぇ、そう言いましたわ」


「っ~!!フローラの微笑みに加えてかっこ良かったって言われた!!」


いつものアシェルお兄さんだわ。テンション上がって天を仰いでるよ。


「フローラ、第一王子と隣国の公爵の婚約は受けるのかい?」


「今のところはどちらもありえませんわね。あの馬…んんっ。第一王子殿下はアシェルお兄様から聞いていた通りでしたし、公爵様は要注意人物ですから」


「そうか…」


「お父様もそんな怖い顔をしないでください。いつもの優しいお父様の方が私は好きですわ」


「フローラ、そうだね…。フローラは本当に可愛いね」


イケメンのスマイル、いただきました。フローラのお父さんも娘バカだよね。シスコン双子兄に劣らずって感じ


出来れば馬と鹿の王子と公爵に会いたくない。

あの王子の闇スキルもヤバいし公爵のスキルもヤバい。ヤバい+ヤバい=良くないからね。

神様、あの2人と会わないようにしてください。


……と私の願い虚しく、舞踏会の数日後にあの馬と鹿の王子からお茶会の招待状が届いてしまったのでした。


私の平穏は?!王家と関わりたくないんですけど?!私の能力がチート級ってバレませんように!!


次回、フローラ、お茶会で興味が湧く話を聞く。異世界らしいのキター!!

第四話までお読みいただきありがとうございます!

無事にダンスの危機を乗り越えましたが、優月の心臓は休まる暇がありませんね。

特にジークベルト公爵の「分析できないのは何か隠されている証拠」という言葉、恐ろしすぎます!優月のチートの秘密に、彼は誰よりも近づいています……!

一方、帰宅後のサージェント家では、お父様とアシェルお兄様による優月争奪戦に反対する家族会議が勃発!アシェルお兄様の「火の海」発言は、シスコン兄の愛の重さが国境を超えるレベルであることを示唆していますね(笑)。

そして、優月の「会いたくない」という願いも虚しく、次話はセドリック殿下からのお茶会への招待です!

次話はついに異世界ならではの話が優月の興味を引くことに!

【第五話:お茶会で興味が湧く話を聞く(仮)】で、優月がどう興味が出ていくのかに、ご期待ください!

感想や、ジークベルト公爵様の底知れなさにゾクゾクしたコメントなど、ぜひお待ちしております!

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― 新着の感想 ―
ノリが良くて楽しい作品ですね! 普段あまり文字を読まない読者でも読みやすいような、気軽に読みやすい作品だと感じました。 令嬢系のお話は作家さんの爵位やら礼儀やらの知識に本当驚かされます…尊敬します! …
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