生命の木の叫び、公爵を覆う枷
19話・生命の木の叫び、公爵を覆う枷
ペアリングでの通話テストもバッチリ! 前話で結ばれたジークベルト様との絆を確かめ合い、二人の関係はさらに甘く深まります。しかし、そんな平穏な時間は長く続きません。RPGのお約束通り、大事件の直後には"真のボス"が…! 伝説の魔物の前に、最強の騎士と従魔がまさかの危機に陥ります。フローラ(優月)ちゃんの覚悟を決めた叫びにご注目ください。
拝啓 お父さん、お母さん。
全属性持ちのエレメンタル・コアを倒したら二つの宝石がドロップしましたわ!それをペアリングに加工してジークベルト様とお揃いにしましたの!
「ジーク様、ちゃんと通話が出来るか試してみませんか?私、少し離れますね!」
「そうだな。…目の付くのところまででいいから」
ジークベルト様と距離を取り、通話出来るか試す
「…ジーク様、聞こえますか?」
「あぁ…聞こえる。……声もちゃんと拾えているし問題なさそうだな」
「これで安心ですね!…ジーク様の声落ち着きます」
「……それは良かった。フローラの声も落ち着くよ」
「主よ、こちらに戻ってこい。今後のことを話すぞ」
「はーい」
二人の所に戻り、今後のことを話すことに
「さて、これからサージェント家の領地に向かうわけだが、主は聞きたいことがありそうだな?」
「何が聞きたいんだ?フローラ」
「その…なぜ、生命の木が破壊されればラゼボ王国だけではなく、この世界全体の草木が枯れてしまうと教えてくれなかったのですか?」
「……あの場で話すことではなかったんだ。フローラを信用してないわけじゃない。ただ生命の木の真実は限られた者しか知らないんだ」
「つまり、ラゼボ王国は嘘を流すことで真実に気付かせないようにしたってことですか?」
「あぁ。ラゼボ王国全体の草木が枯れてしまうという嘘を流せば、他国は簡単に手を出せない。エレメンタル・コアが居ることを教えたのは安易に近付くなという警告だったんだ」
「……それで、お父様たちと話す時も真実は言わなかったのですね」
「すまない、フローラ。…Sランク冒険者である俺に緊急クエストを出したのはカイト伯爵と父上の計らいだろうがな」
「エステル王女殿下から遠ざけるため、ですよね」
「恐らく、な。だがこうしてフローラが討伐したんだ。これで危機は去った、ありがとう」
「……そうだと良いのですが」
「何か思い当たるのか?主よ」
「……うん」
こういう時ってRPGでは倒した達成感に浸ってたら、別の魔物が来たりするお約束なんだって!
『そういうものなのか?』
そういうものなの!嫌な予感がする…
「……フローラ」
「ジーク、様?急に手を繋いでどうしたんですか?」
「…フローラは俺にとって大切で愛おしい婚約者だ、必ず守ってみせる。君には指一歩触れさせたりしない。だから、安心してくれ」
「………ヒャイ」
そう言って私の手の甲にキスを落とすジークベルト様。
ひぇ…イケメンだ(?)こんなんされたら惚れてまうやろー!
『惚れたのか?』
いや別に。
『……若造が哀れに思えてきたわ』
「私にとってもジーク様は大切な婚約者です。必ず守ってみせますわ」
「…それは心強いな。守られるだけの姫じゃないってことか」
生命の木の近くで和気あいあいと話していると、空気の乱れを感じ取った
「…まさか、あのエレメンタル・コア討伐の余波で、古の番人の封印まで揺るがしたとは…。主よ、気をつけろ」
「古の番人…?」
レヴィがそう告げた直後、生命の木の古く太い根や蔦が、黒く硬質な装甲のように絡み合って形成された、巨大な獣の姿の魔物が現れた。
その魔物は全身から魔力を吸い込む灰色のオーラを発している。
「ジーク様、あの魔物は…?」
「………今までに見たことの無い魔物だ。アズ殿はご存知なのですか?」
「……あの魔物は封魔の樹縛獣。我のような長命な存在の記憶の中にしか残っておらぬ、世界の破片よ」
「封魔の樹縛獣…?!(きっとボスだ!ボスの登場キター!!)」
「あのエレメンタル・コアは単なる魔物ではない。生命の木のバランスの鍵。それを破壊したことで、古の番人であるあの魔物の目覚めを早めたかもしれん…」
「エレメンタル・コアは役目があったということですか?何ということだ…」
「仕方の無いことだ。そう気を病むな、若造。しかしまずいことになったな…」
「確かに...あの魔物から物理的な威圧感と魔力的な恐怖を同時に感じます」
ほらやっぱり!エレメンタル・コアを倒したらボスが来たじゃん!!私の予想通りだった!
『主、我の声が聞こえておるのか?この状況でてんしょんが高いのはお主だけだぞ?』
テンション上がるに決まってるじゃない!だってボスだよ?!RPGの醍醐味と言ったら強敵のボスを倒すことじゃん!!
『知らん。そもそもお主には威圧感や恐怖は感じんのか…?』
え?何それ?感じてないけど
『……だからてんしょんが高いままなのだな』
「アズ殿、封魔の樹縛獣の能力は?」
「あの魔物の能力は【魔力吸収・硬化】:外部からの属性魔力(火、水、光など)を完全に吸収し、その魔力を自身の樹縛の根に変えて硬化させる。吸収すればするほど、防御力と拘束力が上がる。つまり属性無効、魔法が効かん」
「……そんな魔物が存在していたのですね」
「とにかく、あの魔物を倒さん限りこの世界の脅威は失くならん。若造、我と共に参るぞ!」
「はい!フローラはここに居てくれ。君のことは俺が守るから」
「二人とも、まっ...あー…行っちゃった」
レヴィは純粋な魔力波動を放ち、ジークベルト様は片手剣を持って封魔の樹縛獣にたち向かって行った。
二人が封魔の樹縛獣と戦ってる中、私は離れた場所で見ていた。
レヴィが言っていたように魔法は無効化され吸収しているらしい。ジークベルト様の剣もまともに通ってないようだった。
二人は敵の攻撃を上手く避けながらダメージを与えようとしていたが、敵は無傷のままで苦戦をしていた。
封魔の樹縛獣は二人の魔力を少しずつ吸収しているようで、レヴィもジークベルト様も疲労が見え始めた。
「やはり、こやつには魔法は効かんのか…!」
「アズ殿!私が惹き付けるので、その隙に攻撃魔法を!」
「若造、頼んだぞ!」
「封魔の樹縛獣、こっちだ!!」
「これでも喰らうが良い!!」
二人の連携プレーでもダメージは通らない。
属性無効化なら無属性もおそらく効かないよね…。ジークベルト様もレヴィも強いから大丈夫だと思うけど、いざとなったら私が封魔の樹縛獣と戦うことになる。
そうなるとチート能力を使わざる負えない。するとどうなる?ジークベルト様は無詠唱にはおそらく気付いてる。属性はまだ無属性とは気付いてない。計り知れない力とまで推察しているだろう…と考えていたら
「ぐっ…!?」
「主!!」
「ジーク様っ?!レヴィ?!」
レヴィに呼ばれ、顔を上げると封魔の樹縛獣の巨大な根に二人が捕まってしまっていた
ジークベルト様は絶望に顔を歪ませている。
「こやつに捕まると攻撃魔力だけでなく、生き物の体内魔力も吸収し根のエネルギーに変えてしまい吸収された者は、魔力が尽きると石化してしまう…!」
「えぇっ?!つまり時間が経つと死に至るってこと?!」
「………フローラ、逃げろ!」
「我らのことは気にせず逃げろ、主よ!」
「……そんな、こと出来るわけ…」
封魔の樹縛獣は二人の拘束をしたまま、容赦なくこちらに向かってくる。ターゲットを私に変えたんだ。
私がこのまま逃げれば二人は石化してしまう。
そんなの嫌だ。レヴィは私の初めての従魔で大切な相棒だもん。
じゃあジークベルト様は?私の大切な婚約者だから助けるの?……本当にそれだけ?彼は真っ直ぐに気持ちを伝えてくれた。フローラ越しに私、優月のことも見ていた気がする…。
「私は…この人を、ジーク様を、私のことを愛してくれる大切な人を失いたくない!!」
「……フローラっ、(彼女の雰囲気が変わった…?)」
「…封魔の樹縛獣、私の大切な人と従魔を傷つけたその代償、身をもって償ってもらう」
次回!1章完結!私の平穏、最強の盾と共に!
覚悟しろ!封魔の樹縛獣!優月ちゃんを甘く見ないでもらおう!
『主…倒せるのか?』
石化する前に必ず助けるから待ってて!
ご愛読ありがとうございます! いやー、ついに来ましたね、『封魔の樹縛獣』! 伝説の魔物を前に、ジークベルト様とレヴィがまさかの完全敗北&石化の危機という絶望的な状況です。
愛する人が目の前で石になってしまうかもしれない…この最悪の状況で、フローラ(優月)ちゃんが『平穏願望』を捨て、真の覚悟を決めます。
次回、ついに第1章完結です! チート全開で伝説の魔物をどう調理するのか、最高のカタルシスとサプライズをご期待ください!
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