【ライバル登場】公爵邸に降り立ったわがまま姫
第15話は膝枕でのちょっと甘い展開でしたが、今回は物語が大きく動きます!
公爵邸に突然現れたのは、わがままを絵に描いたような「ラゼボ王国第一王女」エステル。彼女の目的はもちろん、フローラの婚約者であるジークベルト様です。
平穏に生きたい優月の安寧は、容赦なく踏みにじられ、ついにチート級の能力が発動…?!
ぜひ、フローラと王女の激突、そして公爵様の揺るぎない溺愛にご注目ください!
拝啓 お父さん、お母さん。
優月です。馬に乗ってジークベルト様と公爵邸に帰ってます。もちろん行きと同じく後ろから公爵様に抱きしめられてます。
「フローラ嬢、楽しかったか?」
「もちろん楽しかったですわ!」
「それは良かった。フローラ嬢と少しでも近付けて俺も嬉しいよ」
「ジークベルト様、本当にかっこ良かったです!」
「ははっ、ありがとう」
ジークベルト様と話ながら公爵邸に帰ると近くに豪華な馬車が停まっていた。
「…この馬車はまさか」
「ジークベルト様?」
2人で一緒に公爵邸の中に入るとジークベルト様をめがけて誰かが近付き、ぎゅっと抱きしめた。ジークベルト様はさっきまで私と居た時の笑顔が嘘のように無表情になっている。彼の隣に居る私はこの人に無視された。
誰だ、この人…鑑定しよう
ラゼボ王国第一王女
エステル=ラゼボ 20歳
属性:火属性
スキル:焦がす求愛
髪色はプラチナブロンドのロングで身長は私より少し低くくて瞳の色がパープルサファイアのような色をしている。
って!なんだこのふざけた名前のスキルは!
効果が拘束された対象の魔力をわずかに奪ってこの人の体に流し込む…この先のことは読みたくない。
『なら我が読んでやろう。キスや抱擁を強制する際に使用する、らしいぞ』
レヴィ!読まないでよ!!いかにもこの人のための、専用スキルにしか思えないんだけど?!
「ジークベルト様、お待ちしておりましたわ!!」
「…エステル王女殿下、なぜ公爵低に?」
「もちろん、ジークベルト様にお会いする為ですわ!」
「その手を離していただいても?私には正式に婚約者が居ますので」
「婚約者…?」
あ、ようやくこっちに気付いた…って睨んで来たんですけど?!初対面なのに!感じ悪っ!
「お初にお目にかかります、ラゼボ王国第一王女殿下。私は隣国サコヴィナ王国の伯爵家長女、フローラ=サージェントと申します。ジークベルト公爵様の婚約者となりました。お会いできて光栄です」
「貴女がジークベルト様の婚約者ね。能力無しで貴族からしたら恥さらしじゃない!」
レヴィ、もしかしてこの人に私は喧嘩を売られたのかな?
『耐えろよ、主。まだ、喧嘩は売られてはない』
「エステル王女殿下、お言葉ですが私の婚約者であるフローラ嬢を侮辱しないでいただきたい。私は彼女以外興味ありませんから」
「ジークベルト様、何を言ってるの?!二属性持ちのジークベルト様にこんな能力無しの女にんて相応しくありませんわ!私は火属性持ちですし、私こそジークベルト様に相応しいのに!!」
王女が声を荒げる中、私の右肩に優しく手を置いたのはアルフォンスパパだった
「アルフォンス公爵…?」
私が不思議そうにアルフォンスパパを見ると優しく微笑み、王女に対しては威厳な顔をして発言をした。
「…エステル王女殿下、彼女が我が息子ジークベルトの婚約者です。誓約書も交わしており正式に決まっておりますし、私たち夫婦もこの婚約を認めています」
「私は認めてないわ!お父様にこの女とジークベルト様の婚約破棄をお願いしているのに、一向に破棄してくれないのよ!!王族の権力があれば簡単に破棄出来るのに!!」
「エステル王女殿下、なぜそこまで息子に執着しているのですか?」
リリアナママが王女に聞く。
「執着じゃないわよ!純粋にジークベルト様をお慕いしていて、私が先にジークベルト様と婚約しようとしてたのに!アルフォンス公爵と夫人が全然認めてくれないかったじゃない!その間にジークベルト様はサコヴィナ王国に行かれて年下の婚約者が出来るなんて、認められるわけないでしょう?!」
こういう人のこと何て言うんだっけ?なんかぴったりの言葉があったような…わがまま?じゃなくて、自分勝手でもなくて...
「私はエステル王女殿下の気持ちには応えられないと言ったはずです」
「ジークベルト様、どうして…?」
「……貴女の容姿は私以外からすれば魅力的なので誘惑されてしまうのでしょう。…ですが、私の心が奪われたのはフローラなのです。彼女以外、視界に映ることはありえません」
「あっ!超絶自己中心的だ!」
「「………」」
私がつい呟いた言葉でその場に居る全員が静かになる。
『主……』
「ふざけるんじゃないわよっ!!高貴なる我が血潮に宿る、灼熱の情熱よ。我が望みを知れ。至高の愛は、支配とともに成就する。緋色の炎よ、最愛なる者の元へ、優雅なる薔薇の鎖となれ。その身を傷つけず、ただ、永遠に、私のもとに繋ぎ留めよ!――焦がす求愛!」
と王女が唱えると炎が薔薇の蔦のように渦巻きながらジークベルト様を包み込み、彼を拘束した。
長い詠唱だな…演出はドラマチックで優雅に見えるけどってそれよりも!
「ジークベルト様!」
「貴女は黙ってなさい!私のものにならないのなら、この女の目の前で強制にジークベルト様にキスをしてやるまでですわ!」
わがまま姫がスキルで拘束したジークベルト様にキスをしようとした瞬間、私の心がざわつき理由は分からないけどモヤっとした。
私の婚約者であるジークベルト様に触れないで、という感情が生まれた。
あと一歩わがまま姫とジークベルト様がキスする寸前で彼の拘束が解かれ、間一髪で避けるジークベルト様。
「何で拘束が解けたのよ!あり得ないわ!!」
何で拘束が解かれたって?それは優月ちゃんがチート級の魔法を使ったからです。恋愛感情はないにしても仮にも人の婚約者に手を出す不届き者にはご退場してもらいましょうか。
『……これで無自覚なのか』
私は心の中で魔法を唱える。
無属性魔法!強制送還!
一瞬でわがまま姫とその従者、豪華な馬車がラゼボ王国の王宮に移動した。
この魔法は空間転移魔法で、対象をあるべき場所に強制に移動させる魔法だよ!
「消えた…?」
「………何が起きたんだ?」
あ、私とレヴィ以外驚いてる。なんて説明しよう
私は考えた末、ジークベルト様の側に行く
「ジークベルト様、ご無事ですか?」
「あ、あぁ…俺は大丈夫。フローラ嬢、今のは?」
「その、アズが魔法を使ったのですわ!アズなら空間転移の魔法なんて朝飯前なのです!ねぇ、アズ?」
「………当たり前だ。若造は主の婚約者だ。王女と言えど、不届き者にはご退場してもらった」
「アズ殿、ありがとうございます。………フローラ嬢、見苦しいところを見せてしまったな」
「いえ、そんなことは…」
すると、アルフォンスパパとリリアナママが私を抱きしめた
「フローラちゃんはこんなに可愛いのに、能力無しとか言うなんて王女は酷いわ!」
「能力無しでも私はジークベルトの婚約者はフローラ嬢しか認めないから、安心しなさい」
「リリアナママ、アルフォンスパパ…」
本当は全属性魔法が使えて魔力∞とかのチート級スキルがあるんですけどね…今はまだ言うタイミングじゃない、いや?言うべきか?でも言ったら絶対、カイトパパとアリアママ、双子の兄たちに伝わっちゃう!
「……父上、母上。フローラ嬢から離れてください」
「嫌よ。フローラちゃんに癒してもらうんだから」
「リリアナの言う通りだ。フローラ嬢を抱きしめていると癒されるからな」
「俺の婚約者なのに…」
「ジークベルト?悔しかったらフローラ嬢じゃなくて、さっきみたいに呼び捨てで呼べばいいじゃない?」
あ。確かに何度か呼び捨てで呼んでたよね
「しかし…」
「お前はフローラ嬢の婚約者だろう?王女を煽るならそれしかないぞ」
え、煽るならって…火に油を注いだらダメだよ?!アルフォンスパパ?!
「……それもそうか。………フローラ」
ジークベルト様が呼び捨てで呼ぶと、気付いたら彼の腕の中に居た
「ジークベルト様?」
「君だけが俺の婚約者であり、心の癒しだ。…どうか俺のことはジークと呼んでくれないか?」
「えっ?!」
「あら、いいじゃない。ジークベルトを愛称で呼べばもっとラブラブになるわよ、フローラちゃん」
「リリアナママ?!」
急にジークベルト様はもっと強く抱きしめ
「母上のことは親しげに呼ぶのに、俺は親しげに呼んでくれないのか...?」
あ、なんか可愛い。犬の耳が見える…!
「……ジーク、様?」
「…うん、フローラ」
ヴァッ…すごく優しく微笑んできたよ。
直視できない…
でも私を抱きしめてる今のジークベルト様はすっごく甘いとろけた顔してるのに、王女に抱きしめられてた時は無表情だったのはなんでだろ?
『それは若造にとってはお主が特別ということだな』
そうなの?
『お主もあのわがままな王女に妬いていたではないか』
え?妬いたって何が?恋愛感情が無くても私の婚約者を触られるのは誰だって嫌じゃん。
しかし厄介だなぁ、わがまま姫
『主のライバルだな』
え、なんでライバル?
『自己中な王女とお主が若造を取り合うのだろう?』
いやいや、取り合うまでもなくジークベルト様は私の婚約者ですけど?
『お主、本当にそれは無自覚すぎではないか?』
何が?
『……気付いておらんのか。前途多難だな』
次回!わがまま姫のことをカイトパパに話したら、過保護なことに発展しました?!
なんだろう、お腹痛くなってきた
『お主の父君ならやりそうだな』
やめて。想像もしたくないから
『なら、お主が興味を持ちそうな魔物のことを話してやろう』
レヴィ!気が利くぅ♪
第16話も読んでいただきありがとうございました!
超絶自己中心的な王女の突然の襲来、大変でしたね!優月の「超絶自己中心的だ!」というツッコミと、咄嗟の「強制送還」チート、最高の展開でした!
そして、優月の無自覚な防衛をレヴィがしたことにして事なき得て、ジークベルト様とフローラは少し進展(?)しました。
さて、次回の優月の心配通り、この「わがまま姫による騒動」が、サコヴィナ王国にいる優月のパパと兄たちの耳に入ってしまいます。
次回!最強の過保護軍団が動く!? ぜひ、次回もお楽しみに!
第9回 アース・スターノベル大賞に応募しているので、もし『面白い!続きが読みたい!』と感じていただけたなら、ページ下の『お気に入り登録』と、ページ上部にある【評価(★)】をポチッとお力添えをしてくださると嬉しいです。感想もお待ちしております!m(_ _)m




