緊張の関門!愛重き公爵の両親への挨拶と、海デートの旅立ち準備
こんばんは!
ババ抜きで見事一日独占権を勝ち取ったジークベルト様と、ついにラゼボ王国へ!しかし、最初のミッションは「公爵家のご両親への挨拶」という、優月にとって最高の緊張イベントです。
厳格な公爵と、優しい公爵夫人。優月はこの難関を淑女スマイルで乗り切れるのか?
そして、公爵家の「重すぎる愛」が、優月の平穏をさらに脅かします…!どうぞお楽しみください!
拝啓 お父さん、お母さん。
ババ抜きで見事、フローラ1日独占権を手に入れたジークベルト様と今、現在進行形で馬車の中に2人きりです。優月は緊張が治まりません
『主よ、我を忘れるでない』
あ、もちろんレヴィのこと忘れてないよ。
『公爵の若造と2人きりと言っていたではないか。…しかしお主の父君と双子は滑稽だったな』
すぐに海に行くことが決まったんじゃなくて、ジークベルト様のご両親が都合が良い日に迎えに来るって公爵が言ってから三日後の出来事だもんね。
カイトパパなんて、些細なことでもいいから手紙を送ってきなさいって言ってたし、双子のお兄さんたちに関しては私が離してって言うまで離してくれなかったから…
『若造は嫉妬していたがな』
え~?いつもと変わらなかったじゃん
『……先が思いやられるな』
「フローラ嬢、アズ殿と話しているのか?俺がいるというのに...?」
「えっ?!えっと、その…」
「サコヴィナ王国からラゼボ王国までは2時間だ。その間フローラ嬢は俺を放っておいて、アズ殿と会話するんだな」
「いや、その…」
「そう拗ねるな若造。心を広く持たんと嫌われるぞ」
「そうか…フローラ嬢、俺のことは気にせずアズ殿の話しててくれて良い」
いや、そんな寂しそうな顔されたら気になるじゃん!レヴィったら…
「……そうだ!ジークベルト様、ラゼボ王国のこと話してくれませんか?どんな国なのかよく知らなくて...」
「そう、だな…。ラゼボ王国は海に面している海洋国だから漁業、貿易、観光がある。賑やかな市場と船が行き交う港があるのもラゼボ王国の魅力の一つだ」
「その市場には何があるのですか?」
「宝石みたいな貝殻に海の魔物の素材を加工したもの、あとは高級魚とかもある。サコヴィナ王国は鉱山が盛んだろう?フローラ嬢はラゼボ王国を楽しめると思う」
へぇ~…サコヴィナ王国って鉱山が盛んだったんだぁ…知らなかった
『何故、お主が知らんのだ』
だって私、転生者だし…フローラの記憶は共有されてないから…
『てんせいしゃ…?』
簡単に言ったら私が現世で一度死んでから前世の記憶を持ったまま、別の人として転生することだよ。だから今はフローラだけど、フローラの記憶はなくて優月としての記憶しかないから
『…なるほどな。ではお主はフローラとしての記憶は一切覚えてないということか』
そうなるね。思い出すかもしれないし、思い出さないかもしれないし
『……お主が生きていた現世とやらには思い入れはないのか?』
んー…それなりに楽しかったよ。両親も愛してくれてたし、………
『話したくなければ無理に話さずとも良い』
ありがとう、レヴィ
「ジークベルト様、楽しみですわ」
「そうか…。フローラ嬢を楽しませられるように頑張らないとな」
2時間の間、レヴィとジークベルト様と会話をしていたら時間はあっという間に過ぎていき、ラゼボ王国に着いた。
「アズ!海!!海が見えるよ!!」
「そんなにはしゃぐことでもないだろう」
「だって(この異世界に来てから)見るの初めてだもん!エメラルドグリーンだ!!」
「本当に、フローラ嬢は可愛いな」
「当の本人はその言葉聞こえておらんようだぞ。あの通り海に夢中になってるからな」
「…そういうところも魅力的なのですよ、アズ殿」
「ほう…?」
そうこうしているうちにジークベルト様のアーチャー公爵低に着いたようだ
ヤヴェ…緊張が最高潮になってる。心臓の音聞こえちゃう…
「よく来られた、サージェント嬢。ジークベルトから話は聞いている。君が息子の婚約者になったと」
「お初にお目にかかります、アーチャー公爵様。サージェント=フローラです。ジークベルト様の婚約者となれたこと心より嬉しいですわ」
私はジークベルト様の両親にフローラの淑女教育の賜物である完璧なカーテシーをした。
フローラ、ありがとう!緊張してるけど何とかなりそうだよ!ジークベルト様のパパ、カイトパパに比べて身長高くて、黒髪でターコイズの色の瞳で威厳あるなぁ…
「サージェント嬢の側にいるのは、ピクシードラゴンか?」
「私の従魔のアズでございますわ」
「ピクシードラゴンが従魔とは珍しい。君が息子の婚約者になってくれて嬉しいよ」
「もったいないお言葉、誠に光栄に存じます公爵様。私こそ、これほどの光栄に浴すことができ、心より感謝しております。至らない点も多いかと存じますが、今後ともよろしくお願いいたします」
ジークベルトのパパ、怖っ!!レヴィのことピクシードラゴンとはいえ、言い当てたの怖くない?!
『さすが、ラゼボ王国の公爵と言うべきか...』
「自己紹介がまだだったね。私はアーチャー公爵の当主、アルフォンス=アーチャー。こちらは私の妻の」
「リリアナ=アーチャーよ。フローラちゃんみたいな可愛くて健気な子がジークベルトの婚約者になってくれるなんて嬉しいわ!ぜひ仲良くしましょうね」
フローラちゃん?!え、ちゃん呼び?!
ジークベルト様のママはアリアママと同じくらいの身長で、綺麗な銀髪で髪を一つのお団子にまとめてて、エメラルドのような色の瞳をしてる…若く見えるなぁ
「私で良ければ…」
淑女スマイルをジークベルト様の両親に向けると
「可愛いな…」
「可愛いわね…」
ジークベルト様の両親、どこか既視感あるのは私の気のせいでしょうか?
「父上、母上。フローラ嬢と海に行こうと考えているので、私は準備をしてきます」
「分かった。その間、サージェント嬢…いや、フローラ嬢のことは私たちに任せなさい」
え?
「ありがとうございます。…フローラ嬢、準備ができたら呼びに来る」
ジークベルト様が行っちゃった…?!一人にしないで?!
「フローラちゃん、貴女の水着を選びましょっか」
「水着…?」
「海に行くなら水着が必要じゃない?ジークベルトを骨抜きにしちゃいましょう!」
「お、お手柔らかに……」
リリアナママに連れられ、数多くのある水着の中から私に似合いそうな水着を、リリアナママが楽しそうに決めている
その間レヴィはアルフォンスパパと試着室の外に居て、私はリリアナママと2人きりだった
鑑定してみるか…
アーチャー公爵夫人
リリアナ=アーチャー 44歳
属性:光属性
スキル:慈愛の光輪
光の審判
これは、リリアナママもジークベルト様に劣らずのチートスキル!光属性ってリリアナママからの能力を引き継ぎしたんかな...
リリアナママのスキルを説明しよう!
慈愛の光輪は治癒と強化のスキルで触れた者や視線を合わせた者に、心地よい安らぎと魔力的な活力を与えるスキル。
そしてもう一つの光の審判は権利と制裁のスキルで、敵意を持つ者や不実な者に対して物理的なダメージじゃなく精神的な圧力や威圧感を与える光を放つスキル。
チートスキルや…これ、アルフォンスパパの属性とスキルはどうなんやろ…
「フローラちゃん、この水着はどうかしら?」
「と、とても可愛いと思います」
「貴女はスタイルも良いし、この水着でジークベルトをさらに惚れさせましょ!」
「惚れてくれますかね…」
「大丈夫よ。ジークベルトがフローラちゃんに対して優しい表情してたもの。あんなジークベルトを見たのは初めてだったわ…」
そうなの?!ジークベルト様、優しい表情してたの?!
「そうなのですか...?」
「えぇ、だから自信を持って」
「ありがとう存じます、リリアナ様」
「フローラちゃん、私たちは家族になるのよ?様だなんて他人行儀じゃなくてママって呼んでほしいわ」
「えっ?!そ、そんな恐れ多い…」
「私が良いって言ってるんだから、ほら、呼んでちょうだいな」
「リ、リリアナママ……?」
「もうー!フローラちゃんったら可愛い!」
リリアナママが私に抱きついて来ました。
な、何だろう…この人から溺愛の片鱗が見える…
水着が決まり、試着室から出るとジークベルト様もアルフォンスパパとレヴィと一緒に待ってました。あ、リリアナママは私に抱きついたままです。
「…母上、フローラ嬢から離れてもらっても?」
「え~?別に良いじゃない。ジークベルトはフローラちゃんと海デートに行くんだから」
「リリアナ、フローラ嬢と仲良くなれたようだな」
「えぇ!私のこと、ママって呼んでもらえたの!」
「それは良いな。フローラ嬢、私のこともアルフォンスパパと呼んでくれて構わないぞ」
くっ…!ここは腹を括るしかない!じゃないとこの場の空気が冷たくなる!
「…ア、アルフォンスパパ?」
「っ、フローラ嬢は可愛らしいな」
アルフォンスパパも私に抱きついて来ました
レヴィ、見てないで助けてよ
『我は知らん』
酷い!!
「父上に母上、フローラから離れてください。俺の親としても許しませんよ」
ジークベルト様が2人から助けてくれたのは良かったけど、今度はジークベルト様の腕の中に閉じ込められた
「フローラ、海に行こうか」
ヴァッ…その微笑みはズルくないすか…?
私が顔を上げてジークベルト様を見てるけど、優しく微笑むのはずるいって!
次回!海デートは魔物が現れてデートが台無しに?!
うぉぉー!!デカクジラだ!!
『てんしょんが上がりすぎではないか?』
あ!あっちには虹色の魚がいる!!
『我の声が聞こえておらんな...(呆れ)』
いつも読んでくださりありがとうございます!
まさか、公爵ご夫妻から「ママ」「パパ」呼びを提案されるとは…!優月には災難ですが、公爵家の皆様の「溺愛フィルター」の強度が最高に伝わったかと思います。公爵様からの「俺の親としても許しません」というセリフに、キュンとした読者様も多いのではないでしょうか!
さて、次話はいよいよ念願の海デートへ!優月さんの目的は海の魔物と遊ぶこと(と素材集め)ですが、待ち受けるのは、船を沈める巨大な魔物です。
果たしてデートは台無しになってしまうのか、それとも優月が海で無双してしまうのか?次話もぜひご期待ください!
第9回 アース・スターノベル大賞に応募しているので、もし『面白い!続きが読みたい!』と感じていただけたなら、ページ下の『お気に入り登録』と、ページ上部にある【評価(★)】をポチッとお力添えをしてくださると嬉しいです。感想もお待ちしております!m(_ _)m




