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絶対不可侵能力  作者: サクヤ
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二人











「ちょーっと待ったあああぁ!」



 テレビを見ていると、奏がなんの脈絡もなく急に立ち上がり叫んだ。



 夕飯も食べ終わり、さっきまで俺達は30センチくらいの間を空けて仲良くソファーに座っていた。


 今更、テレビやソファがあったところで驚きはしない。


 たとえそれが俺がいた世界の物に限りなく似ていたとしても。


 ってかぶっちゃけ同じ。違うところなんか見当たらない。


 にしても、会ってまだ24時間経っていないのに(多分。白い世界や、この世界で目が覚めるまでにどれくらい意識を失っていたのかは知らない)ちょっと距離が近すぎるだろうとは思ったが、奏は特に何も言わなかったので俺も気にしないことにした。


 あとは俺の顔が赤くなっていないことを祈るばかりだ。


 まあとにかく奏がこんな大声で叫んだからにはいつまでも無視しているわけにはいかない。



「んだよ。そんな耳元で叫ぶなっつの・・・」



 だが俺の抗議に全く反応することなく真っ赤な顔で続けて叫ぶ。



「私達・・・一つ屋根の下で二人きり・・・だよ!!」



「!!!」



 衝撃的事実発覚だった。


 咄嗟に俺達は距離をとってしまった。


 そうやって意識することが余計自分たちの首をしめるということにも気付かず。



「そ、そういえば、俺はどこに寝れば・・・?」



「いやっ! 大丈夫! 部屋ならいくらでもあるし!」



 俺もそんなこと考えていなかったから少し驚いたが、ならそんなに焦る必要はないんじゃないだろうか・・・?


 という目で奏を見つめてみた。



「だから、別に問題はないんだけど・・・その、君も男だしさぁ」



「・・・ああ、そゆこと」



 ようするに奏は、俺に・・・されることを危惧しているのか。


 まあ女の子としては当然の心配だろうが、その心配する理由の本人たる俺としては、少し心外だと思ってしまう。


 でも逆の立場だったら俺も同じことを思っただろうし、仕方ないか。


 出会ったばかりの男を全面的に信用しろってのも無理な話だ。


 ・・・逆の立場といってもうまく想像出来ないが。



「ご、ごめんね。信じてるんだけど、えっと・・・」



「まあもし危険感じたりしたら能力でも何でも使ってぶっ飛ばせばいいさ。文句は言えないんだから。そもそもそんなことしないしな、絶対」



「ホントに・・・?(笑)」



 笑いながら言うな、ったく。


 奏のツボは全くわからん。意味不明。


 さっきから何で笑いをこらえてるんだ?




「こんなことで奏の信用失って、これからどうすりゃいいんだよって話」



「ああ、そっか。なら大丈夫だね! もし何か間違いがあったら、もう二度と何も教えてあげないし、嘘教えちゃうかもしれないよ! っていうか、どっか別の変な世界に飛ばしちゃうから!」



 その程度で済ませられるのは素直にすごいと思う。


 永遠に恨まれてもおかしく無いほどの大事な事のはずなのに。



「はいはい、大丈夫ですから」



 状況は一応落ち着いたようなので、一息つく。


 もう本当に驚かない。というかもう二度と反応するのものか、と心に決めた。


 ・・・これから先、俺の元いた世界のものと似ているものがいくらでてこようとも。


 飲み物もすごくよく似ていた。


 これは、色も香りも紅茶そのものだ。


 紅茶(もどき?)をすすりながらぼんやりと考える。



「そういえば、今こっちの日本の季節は夏だよな?」



 芝生に寝転がって見上げた青空は紺色で澄んでいて風も少しだけぬるかったし、なにより頭上の太陽が眩しかった。


 にしてはそこまで暑くなく、どこからか吹く風とあわせて絶妙に快適だった。


 普通なら、俺がいた世界なら、この気温は、夏になりかけの春か、秋の初めのものだがそれでも『夏』特有の雰囲気を感じる。


 それは虫の鳴き声によってつくられているんだと思う。


 まあ確証はなかったからなんとなく聞いてみただけだが。



「そうだよ? ・・・あ、君の方の世界は寒かったな。そっちは冬だったの?」



「まあ。雪が降る程でもなかったけど、確か・・・11月くらいだったか?」



「ついさっきまでそこにいたのに日付を覚えてないの!?」



 奏は心底あきれたように言うが、そんなこと言われても仕方がないものは仕方が無い。



「だってなー。毎日毎日、街のゴロツキ共に命を狙われ続けて? あげく天変地異にまでみまわれるような生活してりゃ日付なんて確認する余裕もなければ必要もない・・・」



「ああ、そーいえば君、そんな生活してたんだっけ・・・んまぁどーでもいいけどさぁ」



 そう気だるそうに言うと本当に興味なさげに、控えめな、男の目から見るとかなり可愛い欠伸をしながら俺が座っているソファに腰掛けた。


 衝撃的事実が発覚する前の距離に戻ったわけだが、もう全く気にしていなさそうだ。



「どーでもいいって、あのな? 俺はそんな日常が嫌でこんなとこまで来たんだぞ? 要するに、俺の人生の中で最大の選択だったってことでだな、それをどーでもいいって・・・」



「別に君の事情なんて知らないもーん。私はただ面白くてイレギュラーなことが大好きなだけだしー。たまたま退屈な時に君みたいのがいたからさー、なんていうかこう、ちょろっと?」



「・・・うん、もうどーでもいいか・・・」



 俺達には、そういうシリアスな話題が似合わないことを痛感した。



「とりあえず今日はもう疲れた・・・お風呂入って寝よ・・・あ! お風呂は君が最初ね!!」



「はいはい」



 そして、特に嬉しいイベントなどは無く、平和に夜は更けていった。
















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