プロローグ
超へたくそなくせに新しいの始めてしまいました・・・
結構思いつきです。
行き当たりばったりみたいな感じですが、見ていってください。
最初なんで、かなり短いです。
「・・・はぁ・・・くだらな・・・」
意味も無く軽く手を振り、夜だというのに辺りをすっかり明るく照らしていた光が徐々に薄れていく光景を見つめながら、少年は呟く。
もう一度長い溜息をつくと、少し離れたところで無造作に転がっている数人の男を流し見た。
みたところどこにでもいる普通の能力者だと少年は考え、今回の襲撃は『世界』とは関係ないただの一方的な逆恨みか、と結論付ける。
「こんな狭い道で待ち伏せか。頭が悪いなりに考えたんだろうけど・・・」
少年達がいるその場所は、こんな時間でも大いに賑わっているこの街においてあまり見ない、寂れた道。
路地裏とは少し違うが、狭く暗い、人に無条件で原始的な恐怖を与えるだろう暗闇と静寂に包まれていた。
もっとも、普段は静かなはずのこの場所に先程までは怒号、轟音、悲鳴が溢れていたが。
「こんなことに頭使う暇あったら勉強でもしてろって。どうせどっかの学生だろうに。少なくとも、俺を殺す為の策を練っている時間よりは有意義だと思うけどな」
ったく独り言の一つや二つ言わないとやってられない、と意味の分からないことを言いながら男達に背を向け、早々に去ろうとした。
だが、少年にとっては独り言のつもりだったその言葉を聞いていたらしい一人の男が、うつ伏せながらも懸命に顔を上げて何かを言ってきたため、少年は振り向く。
「てめぇ・・・」
ようやく話せる程度にまで回復したらしいその男が、少年(といっても男と同年代程だが)に激しい憎悪、いや正確には憎悪にまで変化、進化してしまった『嫉妬』の感情を隠そうともせずに少年を睨む。
顔は苦しそうに歪んではいるが、その眼光は少しも衰えていない。
・・・その情熱を何で他のことに向けられないのか、と少年は心の中で毒づく。
「なんで・・・なんでてめぇみたいなふざけた野郎が、こんな・・・」
少年は露骨に顔をしかめると、男の途切れ途切れの言葉をさらに遮るようにして言った。
「ああ、それ以上は言わなくていい。流石にもう飽きた。みんなそういう月並み?な台詞しか言わないんだ、いい加減流すことさえ面倒くさい」
「こ・・・の・・・!!」
男が必死に、最後とも言える力を振り絞って掌を少年に向けた。
そこからは、もう見ていられないほど弱々しい小さな火がともる。
「発火能力、か。あまりにありふれた能力だな。それにさっきまでの勢いが見る影もない」
明らかに見下したような言い方だが、その言葉には羨望、諦観、絶望が入り混じっていた。
だがそんなものに激昂した男が気づく訳もなく、かすれた声をあげながら小さな火球を打ち出した・・・が、それは少年に届くことはなく、あっけなく闇へと溶けて消えていく。
男もそこで力尽き気を失ったのか、それきり動かなくなった。
少年はそんな男を見つめ、今日何度目ともしれない溜息をはくと、辺りをぐるりと見渡す。
するとまだ気を失っていない人間がもう一人いたので、その人間の意識を速やかに絶ち、今度こそその場に背を向け、歩き出した。
そして、最早聞いてる者はいないにも関わらず、
「・・・悪かった、煽るような真似をして。でも、俺にもストレスくらい溜まるんだよ。・・・・・・それにしても、なんでなんだろうな。力? そんなもの無くても生きていけるだろうが。なのになんで・・・・・・所詮強者の台詞だ、といえばそれまで、だけど・・・」
そこで言葉を区切り、足を止めた。
冬も間近まで迫り、吐く息は白くなっている。
少年は空を見上げて、星を見た。
一応ここは都会といっても差し支えないような街のため、空気はお世辞にも綺麗とは言えないが、それでも僅かに光る星々は、なおさら、少年をどうしようもない気持ちにさせた。
そして、言ったところで誰に聞かれるわけでもない、現状が変わるわけでもないことを知りながらそれでも言わずにはいられない、切実な思いを込めて少年は言う。
「俺は、お前らみたいな人間がどうしても羨ましい、妬ましいよ。・・・こんな力、いらなかった。ただ、誰もが持っているありふれた日常が欲しかっただけなのに・・・」
今ではもう、それは叶わない。
・・・はずだった。
だが今日、少年の日常に『変化』がもたらされる。
あまりに唐突に。
いきなり少年の目の前に、文字通り『現れた』ものは、人間の姿をしていた。
浴衣ようなものを着ている『それ』は、凛とした声で、まるで歌でも歌っているかのように、そして微笑みながら少年に問う。
「君は何を望んでいるの? どのような世界で、何を成したいの? ・・・答えることが出来たなら、私は君に力を貸せる」
少年は目を見開き、しばらく放心状態に陥った。
普段なら、怪しい人間が現れた瞬間、滅多に殺しはしないが無力化するようにしているのだが、今目の前にいる『それ』は、不思議、としかいえない雰囲気を持っていて、硬直がとけた少年はなぜか確信した。
『この日常から抜け出せる』
だから少年は、目の前に手を差し出す。