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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第3章 クレソンとカルミアともう一人
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7話 目的が見えて来る

 それから二人は『ソレ』がしている謎の作業が終えるまで、もしくは『ソレ』に攻撃が加わらない様襲い来る獣から守り、最終的に獣を倒す目標の元動き始める。

 獣は巨体である為動きこそ緩慢だが、中れば間違いなく致命傷になるであろう威力が目に見える攻撃が襲い掛かる。そんな攻撃を躱し、自身の手に指から伸びた爪で反撃する。爪攻撃は中りはするが獣の皮が分厚く、ただ引っ掻くだけでは傷一つ付かない。傷の無い獣の体を見ながら次に攻撃態勢に移る為に、体を捻らせ一回転するカルミアは悔しそうに歯を見せる。


「んもー!このクマイヌ、カターい!」


 獣、もといカルミア命名の熊犬はカルミアに再び攻撃を繰り出そうと、攻撃態勢に移ったばかりのカルミアに向かって爪を振りかぶる。目標に集中しているその隙を狙ってクレソンは銃器を構え、引き金を引いて弾を発射した。破裂音と共に熊犬の肩辺りに衝撃が加えられ、熊犬は一瞬だけ反応を見せたが、それは攻撃による苦痛には見られなかった。

 思ったよりも損傷を与えられなかった事と、思った場所から狙いが逸れたのか、クレソンは一瞬苦い表情を見せた。


「あぁ、爪の斬撃で駄目なら銃撃ならイケるかと思ったが駄目か。」


 クレソンは最初、熊犬の目を狙った。だが雪の降る勢いか、寒さで手が震えた為か狙いが逸れてしまった。再度目を狙おうとするが無駄だろう。一度クレソンの銃撃を喰らった事でクレソンが飛び道具を持っていると熊犬は覚えた。これで目を狙う事がバレて銃器を持つクレソンを警戒する。

 一方のカルミアの攻撃は自分には効かない、という事も覚えてより一層クレソンに警戒してそちらに攻撃が向く。そしてその予想は当たり、直ぐ近くにいる筈にカルミアに見向きしなくなり、クレソンへと標的を移した。


「うっはぁ…こっち向いたぁ。」


 言いはしているが、正直な気持ちふざけている場合ではない。噛みつき攻撃が繰り出され、急ぎ回避態勢になって攻撃を躱した。そのかんも銃器で攻撃をするがやはり狙いは定まらないし効果も無し。カルミアも背後へと爪攻撃を仕掛けるがビクともしていない。どれだけ皮膚が厚いんだと二人とも思っている表情をしている。


「うん、こっちを狙ってくれるのは狙い通りで良いが…カルミアー!もっと強めの攻撃出来そうー!?」


 自分が囮になる事を承知していた為に今の状況には落ち着いて対処しつつ、現在自分とは戦っている相手を挟んで反対側にいるカルミアに話し掛けた。

 カルミアは戦闘中に話し掛けられる事は分かっていたからそれに怒る事はしなかったが、話しかけられた内容に対して反応も返せはしたがその反応はかんばしくないものだった。


「むりぃーサムくて力でないー!」


 どうやら寒さにより本来の実力を出せず、それどころか動きにもキレがなくなってきてもう攻撃が出来ず回避し出来なくなっていた。

 これは不味い状況だと思い始めた。カルミアの実力を知っているクレソンだが、流石に寒い場所に長居し過ぎた。この状況を打破しなくてはこの熊犬を止められない。

 『ソレ』の方を見るが、あちらもまだ謎作業が終わる気配が無い。作業が終わった時点でサッサと下山する算段だが、それは出来そうに無い。だから今ここでこの熊犬を気絶させるか逆に逃げてもらうしかない。

 カルミアの方も限界に達しそうで、中りそうになった攻撃を熊犬の腕か足にしがみ付き、攻撃する事自体を食い止めているがそれもいつまでも持たない。早い決断は必要だ。

 意を決し、クレソンは片手で熊犬から目を離さず自分の荷物を漁り、取り出した『もの』を握りしめ前を見据えた。

 カルミアは今も尚熊犬の腕か足にしがみ付いていた。咄嗟の事だったし、足が動かず本能のまま相手に向かっていった結果が現状であり、カルミアも必死になっている。

 手を離せば地面に落ちる。受け身を取らなければ間違いなく落ちた瞬間に攻撃をされる。そんな危機的状況をどうにかしたいのに、何も思いつかない。

 その時に目に入ったクレソンの姿。クレソンは何を手にして、どこかへと走って行った。逃げたとは考えなかった。クレソンは何かをする為に今、熊犬から目を離しどこかへと走って何かをしようとしている。それを直感し、ならば自分はそれまで何とか耐えなければ。そう考え、疲れ熊犬から離しそうになった腕に力を再度込めた。熊犬は今もしがみ付いた自分を振り落そうと暴れている。だが耐えてやる。クレソンが何かをするまで、自分が耐えて機会を待つのだ。

 途端にやる気と力が湧いたかの様に離しそうになっていた手に腕に力を込め、更に熊犬にしがみ付いた。振り落せないと思ったのか、熊犬は自身の体を振るわせる事を止め、今度は岩壁に体当たりしようと走り出した。やばいと思ったカルミアは熊犬の体毛を掴んでいた手を離すと同時に熊犬の胴体を蹴り、跳んで熊犬の上部へと跳び移った。おかげか体当たりによる激突は免れ、結果として激突による衝撃を受けたのは熊犬のみだった。

 だがそれでも熊犬は気絶どころかフラつく素振りすら見せない。いくらなんでも丈夫過ぎると文句を言うカルミアは、まだ熊犬の上に乗った状態になっている。それでも振り落されない様体毛を引っ掴み、クレソンの出方を待った。

 一方のクレソン、取り出した道具を指定の位置に置き、道具をいじっていた。その手際は他者には目で追えない程速く、傍から見ると一体何をしているのか理解出来ない。


「カルミア!」


 ある程度やり終えたのか、クレソンは立ち上がりカルミアの方を見た叫ぶ。そしてカルミアの様子が今どうなっているかを確認すると、再び銃器を取り出し、それを熊犬に向けて弾を発射した。

 弾が中り、クレソンの姿を確認した熊犬はカルミアを振り降ろす事を一時止め、クレソンに向かって行った。クレソンは道具を置いた場所に目を配りつつ、後退して熊犬を道具を置いた場所へと誘導した。カルミアは動く熊犬の上でジッとしがみ付きつつ耐えた。

 そして熊犬が道具のある場所、『範囲』に足を踏み入れた瞬間、クレソンは細い紐状のものが伸びた先の道具を持って、その道具の出っ張りを押した。

 瞬間、熊犬の足元にある道具閃光を放ち、直後に爆発した。爆発による爆風と熱が周囲を吹き飛ばし、その衝撃によって熊犬がやっとよろめいた。胴体も所々焦げており、結構な損傷を与えられたようだ。

 一方熊犬にしがみ付いていた筈のカルミアの姿が見えない。一瞬爆発に巻き込まれたのかと思ったが、熊犬の立つ場所の上空、高い所から何かが聞こえた。


「…たしが…かく跳んだのはナンとためかって?お前をタオすためだー!」


 熊犬の頭上、高い位置にカルミアはいた。高く跳んでいたカルミアはそのまま落下し、落下の速度を上げて熊犬の頭、鼻先に向かって踵を落とした。鼻先に強烈な一撃を喰らい、刺激を受けた熊犬は体を揺らして直立した形で倒れた。

 カルミアは熊犬に攻撃を繰り出した直後に反動で宙に回転し、無事地面に着地し、合流したクレソンと音が鳴る程両手を合わせ合った。


「いやぁ、ナンとなくクレソンが何かするってワカったから熊犬の上のぼったけど、バクハツはちょっとビックリだったなぁ!」

「でもちゃんと察して爆風を利用して跳んでくれたじゃん。カルミアなら出来るって知ってたから、後は爆発の瞬間を合わせるところだったんだよね。」


 クレソンは最初から自身が起こした爆発にカルミアを巻き込むつもりだった。しかし当然それはカルミアを傷付ける為ではない。爆発によって生じる爆風を使い、熊犬を倒す手段に利用するだろうとクレソンは読んだのだ。それはカルミアが熊犬の『上部』にしがみ付いているのを見てからの考えだ。

 熊か犬、もとい狼らしい巨体の獣の弱点はどこか考えた。そうして思考した結果、熊と狼の共通の弱点はどこかという事だ。そしてそれが顔、主に鼻が双方の弱点であるという事だ。

 正確には鼻が良く、臭いに弱いという事なのだが、今回は鼻に『強い衝撃』を与える事で強靭な熊犬を気絶させるまでに至った。結局のところ今回の二人の策は正解となった。

 しかも直後に気付いた事だが、どうやら熊犬は『火』、『熱』が弱点でもあったらしい。爆発で生じた熱で熊犬に大打撃を与え、カルミアがトドメを刺すまでに至ったのが現状だ。


「それに、爆発で少しでも寒さが吹き飛べばカルミアも実力を出しやすくなると思ったしな!」

「うん!バクハツでサムい空気がふっとんで、力出せた!…ちょっとの間だけどね。」


 爆発によって周囲の冷気が掻き消せたのはほんの少しの間だけ。その少しの時間に決着を着けれたのは、二人の連携によるところが大きい。


「でも、あんだけのバクハツ起こすなんて何したの?」

「持ってた銃用の火薬と壊れちゃった暖房の魔法具、何かに使えるかと思ってずっと懐にしまってたの思い出してあれこれした!ちゃんと使えたし、爆発の規模も計算通り出来ただろ。」


 戦いが終わったと判断し、気絶した熊犬を横目に話をしていたカルミアとクレソンだったが、突如寒さが軽減された様な気がした。どこからか熱を感じる。二人は熱を感じる方へと見ると、そこには謎の作業をしていた『ソレ』が立っていた。

 二人は忘れていたが、本来は『ソレ』を守るために熊犬と格闘していた事を思い出し、『ソレ』の方へと駆け寄る。

 『ソレ』は謎の作業らしきものを終えたらしく、魔法晶に付けていた両手を離し、掌を上に翳して集まった光を胸元へと持って来た。すると光は徐々に形を成し、正面から見ると何かの模様となる不思議な形状となった。その模様は直ぐに形を崩れ、光と戻ると粒子となって『ソレ』の方へと入る様に流れて消えた。

 二人は今見た光景を理解出来なかったが、不思議と安堵の気持ちが気持ちが込み上げてきたのを感じた。最初に『ソレ』の謎の作業を目にした時と同じものだった。

 溜息を吐き、そして『ソレ』は二人を見た。『ソレ』が自分らを見ている事に気付いたカルミアとクレソンは、それが何かを成し遂げた合図と捉え、ここにもういる必要が無いと察した。


「よしっ何があったかさっぱりだが、無事に『終わった』んだな?」

「ナルホド…それじゃあ。」


 下山だー!二人揃って声を出して言った。この寒い雪山から離れられると分かり、嬉しそうに表情や素振りで自分らが登山してくた道へと足を向けた。

 直後、再び生き物の気配を感じた。それは自分らが戦い、気絶させた熊犬が倒れた方から感じた。嫌な予感の元、二人はまた揃ってその方向を見た。

 体毛が所々焦げており、息も絶え絶えで立つのさえ苦痛なのが見ていて判った。それでもその巨体の獣は立ち上がり、自分に傷を負わせた者へ敵意をたぎらせてそこにいた。

 倒した筈の熊犬が再び立ち上がった事に焦燥しょうそうした。好い加減大人しく倒れていて欲しいと願う二人がだが、熊犬はこちらに攻撃を加えないと気が済まないのを感じる。

 二人は『ソレ』を自分らの後ろへと庇い臨戦態勢をとった。直後に声が聞こえた。


「…烈々なる…熱、矢の如き速さでもって、放ちて…穿うがつ。」


 それは間違いなく魔法の詠唱だった。それを理解した時には、赤々と燃える火が矢の様に放たれ、熊犬に直撃したのを二人は目にした。

 火の矢を受け、熊犬が内に滾らせていたものが消え失せたのを感じるまま、熊犬が再び轟音と共に倒れる様を二人はただ眺めた。


「クレソン。…今のって、アレ…だよね?」

「あぁ、間違いない。」


 魔法だ。それは詠唱によって発生する魔法そのものだった。魔法によって熊犬は完全に沈黙。その巨体の獣が虫の息となる光景を背景に、魔法を使った張本人である『ソレ』を見た。

 『ソレ』は変わらず、無機質で無感情な表情のまま、どこでもない虚無を見つめていた。


 こうして『ソレ』は力を得た。何の為の力なのか、そして『ソレ』が何なのか知らぬまま。ただ語らずに事を成していく。

 世界はまだいびつなまま動く―

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