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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第2章 ベリーとスパイン
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22話 俺から君へ

 進んだ先にあの蔓草や枝が密集した森の様な、檻の様な場所に出たが、不思議と不気味さは感じない。空気もどこか外と変わらない感じで澄んだ空気が肌や鼻孔を触れる。

 何かがここで変化したのか?その訳など知る訳なく、俺は気にせず奥へと飛んだ。

 そして最奥、あの開けた場所に出た。輝く葉が茂っているのは分からず、奥の巨大な光もあるのが見える。だがそこも変わっている。

 あの時、確かに近寄りがたい気配を感じたが、それを感じない。掃除をした後の小部屋の様な雰囲気だ。

 そして、雰囲気などが変わったその場所で唯一変わらずあるものが居た。

 だらりと脱力した様にして腕を垂らし、その場から一歩も動かず顔も俯せていて表情がよく見えない。最後に会った時、背に突き刺した剣が床だか地面だかの上に錆びて落ちている。

 あの時から時間が止まった様に見えるが、所々変わった所もある。本当に少しだけだが良い方に変わってはいた。

 アルもどこか大人しく見えた。…まさか、誰か来たのか?

 だがそうであっても、未だアルの姿は健在だ。正確には既に死んでいる状態ではあるのだろう。あれは『抜け殻』とでも呼ぶべきか。

 中身は既に無く、抜け殻だけが独り歩きしている状態。力はほとんど残っていないから異変を起こす事はもう無いだろうが、あの状態のアルを放っておけないし、もう置いて行かない。

 だがどうすれば良いか。以前は剣を刺しても、そして誰かがアルを倒したであろう事も予測出来るが、それでもアルは変わらずにそこに居続けた。

 やはり今アルはこの場、例の木と一体化してしまっている状態だ。それを解かない限りいつまでも残り続けてしまう。その方法を当時は思いつかなかったが、今俺はその方法、もといその為の『魔法』が分かる。

 ベリーと話し、アルの姿を見た瞬間に頭に浮かんだ言葉の羅列。

 これは魔法の詠唱だ。魔法とは想像だ。既に多くのヒトが使っている既存の魔法だけではない。ある日思い浮かぶ言葉が魔法の力を得る事だってある。

 その時必要なものを想像し、そして願う。魔法は誰かの願いが叶ったものだと例えたが、その通りかもしれない。

 今俺の頭に浮かんだ詠唱も、使える場面はたった一つ。他では使えない魔法だと言うのが直感で分かる。だが、この魔法はある程度接近して声が届く範囲でないと使えない。結局は近づき、戦う事になる。

 力は残っていないとしても、あの時の様に周囲の植物を操る力は残っている様だ。だとしても引き返す選択肢など無い。あいつと戦う事も最早躊躇ちゅうちょしない。


 はい!そのまま突き進みましょう!スパインなら出来ます!


 相変わらず意識を引っ込めた状態でも主張の激しい奴だ。お前はそこで声援を送って待っていろ。翼を広げ、目の前のアルに向かって低空で飛んだ。

 俺が接近した事に反応して以前と同様、先の鋭い蔓草や枝を操り攻撃を繰り出した。こっちも相変わらず容赦の無い攻撃だ。アルの方は動きこそぎこちなく、今にも崩れ落ちそうな様子が伺える。

 あれでは、俺が攻撃しなくても本当に簡単に崩れ落ちるだろう。だが、それでもあいつは完全に朽ちる事は無い。崩れて足が折れて粉々になっても、それでも生きている様に動き出すだろう。

 それだけは駄目だ!そうなる前に、解放させなくてはいけない!

 俺に向かって来た植物の槍を全て回避し、時に魔法で火の盾を作り攻撃を防ぐ。攻撃する度にあいつが苦痛の声を上げている様な気がして、傷を負っていないのに痛みを感じる。速く、もっと速く動け!


 行ってください!いっそ骨を折ってもかまいません!はやくあのヒトの下へと行ってください!


 分かっている、あまり急かすな。それ程離れている訳ではないが、妨害もあり遠くに対岸にあいつがいる様だ。なんとも渡りづらい河だ。だが、もう直ぐ辿り着く。

 着いた瞬間、俺は口を開き、頭に浮かんだ言葉を吐き出す。


 我が声を聞け、地深く沈むものよ、天を仰ぎ見るものよ。これは『ひと』が『ひと』に願う言葉。

 『一』を見つめ、届かぬ一天へ成就させよ。目にする大地のただ一つの在処ありかを手にせよ。

 繋がれた『人』と『人』のみちが二度と断たれる事無く。

 ただ一人の『とも』の為、世界と、永久に『とも』と在る為に


 口にした言葉を最後まで言い終えた瞬間、確かに何かが断たれた。そしてそれが決して悪いものではないという確信を持てた。

 思えば、俺らは本当に互いの事を話す事が無かった。アルだって、俺が聞かなければ自分の家の事話す事は無かっただろうし、結局俺は自分の故郷の事を他人ヒトに話す事が無かった。

 カナイは俺らの事を人見知りだの、口下手だとよく言った。全くその通りだな。カナイはいつもどこか抜けていて墓穴を掘る事があるが、ヒトの事を一番見ていたヤツだ。

 あの時あんな事を言ったが、あいつだってアルの事を一番に考えている事は良く知っていた。あんな八つ当たりを食らわされて悪い事をした。

 クロッカスの事も、話はしていただろうに、興味が無いと言ってろくに聞いてやれなくて悪かった。多分俺よりも魔法を上手く使えて嫉妬していたんだろうな。本当に俺はヒト付き合いが下手だ。

 セティー、セヴァティアはよく戦いを申し出て来て、しつこいと言って断る事の方が多かったが、実は対等に戦えるのが嬉しかった。言えば調子に乗ると思い言わなかったが、それで正解だったかもしれない。本当に。

 他の奴だって俺がちゃんと見ていなかっただけで、世話になった奴がいた。なのに、勝手な意地で返事も何もせず、無碍にしてしまった。本当に今更だが、感謝してる。

 そして、アル。

 御免、お前の話を聞いた時もっと何か言ってやれば良かったのに何も言ってやれなくて。

 御免、俺も一緒に行ってやれば、こんな姿になる事も無かったのに。

 御免。本当は別の事を言ってやるべきだった。心中なんて、そんな事する必要無かった。しかもそれでお前を一人置き去りにしてしまった。

 誰も彼にも置き去りにされたお前にあんな仕打ちをして、本当に御免。

 もう謝るのはこれで最後だ。これ以上言ったらお前だって困るだろう。だから、あの時言うべきだった事を今言う。遅くなったな。


 一緒に帰ろう。


 ベリーの身体だったが、確かに俺は俺の身体で、あいつに手を差し伸べた。

 最後にやっと見えたアルの表情は、俺の幻かもしれないが、笑っていた様に見えた。


 おわりましたか?

 あぁ、終わった。

 ちゃんとお話できましたか?

 ちゃんと話したよ。

 そうですか。…よかったですね。

 …あぁ。

 じゃあ、私達も帰りましょう!

 あぁ…帰ろう。

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