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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第2章 ベリーとスパイン
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21話 昔から豪胆

 そして現在、屋敷を出て少し歩いた森の中、俺は樹花族の花を持って悩んでいた。これを使えばアルがいた場所に行ける。それも何反動も障害も無く。だが、本当に行っても良いのだろうか。

 俺は間違っていた。結果としてアルはあの場所に囚われているままだ。あの時、確かに急所を刺して致命傷を負わせた。しかし、木と一体化した状態では、完全には死に切れない。そんな事を後になって気付くなんて、とんだ間抜けだ。

 今直ぐにでも行きたいと思う気持ちはある。だが、後一歩が踏み出せない。

 無意味に痛みを与えてアルを置き去りにした。その事が頭に過り体が動かなくなる。

 俺はアルをどうしたかった?分かっていたはずの答えに雑音が混じり見えなくなる。俺は怖がっているんだ。アルの出会う前はそんな奴が襲い掛かって来ても、誰に何を言われても恐怖なんでものは感じなかった。

 それはそれらに俺が関心を示さなかったから。意識が向けば、共感してしまう。だから俺はヒトに何も意識を示す事が無かった。示せばこうなると分かっていたから。

 俺は、自分が興味を示したものに恐怖したくなかった。両親にも故郷の奴らをどうでもう良いと言っていたのはその為だ。結局俺は最初から臆病者だったんだ。ただ力を持て余した弱者だった。

 そんな自分を放置した結果がこのざまだ。馬鹿らし過ぎて笑えもしない。

 どうしようもない。動く事さえ出来ない奴が今更アルに会ったって、何も変わりはしない。いっそ会わない方が良い。最初からそうすれば良かった。そうすればここまで悩みはしなかったはずなのに。


「何言ってるんですか!それこそ馬鹿じゃないですか!」


 いきなりの大声に驚き前を見た。前を見てから俺は何時の間にか俯いていた事に気付く。前には見知った姿が立っている。だがその姿は鏡を見た時にしか見れない筈の姿だ。

 俺は今ベリーの身体の中にいる筈なのに、何時の間にか俺はベリーと分かれ、ベリーと二人で向き合っていた。これは直ぐに俺に心理描写だと気付くが、だからといって振り払おうとはしなかった。


「スパイン!さっきから何意味のわからない事をなやんでいるのです!あなたは頭がそこまで良いわけではないのですから、直感を信じて動けば良いでしょう!」


 今物凄く馬鹿にされた。少なくとも経験値では俺の方が上だし、知識があって魔法だって強い。

 …いや、確かに俺は馬鹿だ。こうして悩んでいるのが何よりの証拠になる。頭のよくない大馬鹿者。失敗に失敗を重ねてうだうだと悔やんで止まないどうしようもない奴だ。

 だからこそ、今更俺に何が出来る。何かをして悪く変わる位なら、何もせず変わらない方が良いに決まっている。


「…いやぁ、すがすがしいほどに馬鹿ですね!何をそんなに怖がっているんです!今更何に怯えているのです!そんな事、いつも力ずくでどうにかしてきたじゃないですか!

 悪い事を言われたなら、言い返せば良い!暴力を振るわれたなら叱ってあげれば良い!怖くて進めないならいっそ笑って走って突っ切ってしまえば良いです!それだけの事です!」


 簡単に言いやがって。…でも確かにそうだ。何が遭っても俺は今までそうしてきた。だが本当に良いのか?俺が今までしてきたままで、本当に。


「良いに決まってます!だって、スパインは何も悪くありません!

 失敗するのは当たり前です!知らない、わからないのが当然ですから、失敗しても成功するまでやれば良いだけです!

 怖いと思うのも当たり前ですが、自分の身を守るために怖いと感じ、逃げて生きのびる事は大事です!

 痛くて泣くのだって当然です!泣けるのは心が働いているしょうこです!泣いてはだめと怒る方がいけません!心が働く事をとがめる事こそしてはいけません!

 そして今!スパインは何かを想って悲しんでいます!それはスパインが優しいからです!優しいヒトだからこそ、私はあなたをたすけます!背中を押します!動かなくても押します!心配しないでください!

 あなたは今一人ではないです!」


 途中無茶苦茶な事言ったが、何故かその無茶苦茶な言葉に酷く安心する。

 ベリーとはこういうヒトだ。俺が見て来た、会って来た中で一番無茶苦茶な奴だ。カナイやセティーだって言葉だけでこんなにヒトを圧してくる事は無かった。

 だからか、俺は今自分の体が動く事に気付く。もう怯えて震える事になくなった。今だったら行けそうな気がする。いや、今行くしかない。


「ベリー、有難う。」

「…どういたしまして!」


 互いに手を差し出し、互いの手を掴むと強く握り返した。

 気付けば、目の前に立っていたベリーの姿は見えなくなり、俺は変わらずベリーの身体の中にいる。

 俺はいつも通りベリーの身体を借りて足を動かす。前へと進み先を見据えた。

 目の前には、さっきまで森の中ではなく、あの時見えた広場と光が見える。あの場所は本当に不思議だ。違う場所からでもあの場所に行け、戻ってくればきっと元の森の中に戻るのだろう。本当に距離感も何も関係ない場所だ。

 そんな不思議な光景はもう慣れていた。俺は花の力を感じつつ前へと進み出る。何も痛みは感じない。何かが俺の体を纏わりつくのが分かるが、害は無い。問題無く行ける。

 まどろっこしい。もう歩いて行くのを止めて翼を広げた。そして宙に浮かび上がり速度を上げて飛んだ。

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