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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第2章 ベリーとスパイン
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回想7

 アルがいなくなり、カナイや他の奴と会わなくなって大分時間が経った。

 俺はあれから森へと通い、崖際のいつもの場所でただ見える景色を眺めるだけの日々を過ごした。

 戦争もいつの間にか終結し、どこかで永続的に停戦するという決まり事が出来たという話が聞こえた。それから各地で謎の集団が各種族の長と話し合い、永続的停戦についての話し合いをする為に集まりを開いたりしたとか。

 その話の中に出て来た謎の集団が、なんとなく誰なのか分かった。でも、分かっただけで他に何もしなかった。

 戦争が終わってからのまちの様子など、気に掛ける気にもならなかった。気にしたところでどうしうようもないから。

 腹が減っているのは、のどが渇いているのかさえ分からない。もうこのまま息絶えても良いと思った。

 今日もまた森へと入った。すると入った時の感じが今までと違った。いや、この感じは以前にも感じた事があるはず。確か、アルが姿を消し、森のあの場所から木へと赴いて行ったあの日。

 それを理解した瞬間俺は走り出していた。向かうのはあの場所。アルと初めて会い、過ごし、そして別れた場所に。


 そこにはあの時、アルが木へと近づける状態となった時と同じ、光と木の陰が差す広場に変わっていた。俺は気には近づけない。故にこの場所に来ても木に近づくどころかこの広場が出現しない。そのはずだったのに、今この場所は崖際から足場がしっかりした広場になっている。

 これはどういう事か。見ていたが分からない。ただ、この場所に近づくに連れて頭から声らしき音が響いて聞こえた。


 …きて…どうか、きて…おねがい。


 誰かが誰かを呼ぶ声に聞き取れた。一体何故聞こえて来た分からない。だが、この広場に足を踏み入れると違和感を覚えた。以前来た時はこの広場に来れても奥には進めなかった。肌に痛みを感じ、奥に近づくにつれて痛みは増し、決して奥には進めなかった。なのに、今その痛みが全く感じなかった。

 奥に進める?何故?何もかも分からないままだ。しかし、確信があった。この場所に近づく時に聞こえた声らしき音。それが聞き覚えあるものだった。

 アルの声か?もう聞こえないし、聞き取りづらかったがそう思えた。ただ動くまま、感じるままに足を動かし先へと進んだ。他に何もする気が起きなかったが、今とにかく進みたかった。


 そこはまるで森の奥深い場所の様だ。太い枝か蔓草が密集し合い、壁というよりも檻の鉄格子に見えて圧迫感を感じる。色も自然にあるものとは思えない毒々しい青色で不気味に感じた。今足を踏みしめているのも地面なのか床なのか触ってみても分からない。

 こんな場所を歩いた先に、アルが見えたという木があるのか?それとも、もう俺はその木の中にでもいるのだろうか。分からない。

 奥へと進むと、ようやく開けた場所に出たがそれでも不気味な木の枝か蔓草は変わらず見える。だが、その場所はどこか最初にこの場所へ行く前に見た広場の様に感じた。

 広場一帯に金色に輝く葉が覆い茂り、奥に何か巨大な物が光っているのも見えた。だが、それよりも目についたものが広場の先に居た。


「アル!」


 目にした瞬間大声で名前を呼んだ。駆け寄り再び呼びかけた。確かにアルだったが、近寄り声を掛けてもこちらを見るどころか全く反応が無い。脱力した様に膝をついてうつむいている。

 何があったのか聞こうと俯いた顔を覗き込んだ瞬間、やっと反応があった。虚ろになった目をこちらに向けて口をぱくぱくする。何かを喋っているらしいが声が小さい為によく聞こえない。


「…シオ…ン。ごめ…ごめ、ん。」


 いきなり謝れて、俺から返事を返そうとしたが腹に衝撃を受けた。一体何が起きたのか理解出来ないまま腹に触ると、ぬめりのある赤黒い液体が付着していた。いや違う。これは俺の体から出て来たものだ。

 そう理解した途端、腹に激痛が走る。何故俺は怪我をしたのかよく見た。それは周囲から生えている蔓草だった。蔓草の先が槍の様に尖り、俺の体を貫いた。何故攻撃された?

 俺はアルの方も見た。アルの様子が可笑しい。見つけた時から過った思いが大きくなる。俺の体を貫いた蔓草を辿って見ると、それがアルの体、背から伸びているのが分かった。アルが、俺を攻撃した?


「シ…オン、ごめん。木…の暴走…止めっようとして、核に近…づいてぇ、そし…たら、力っが…逆に私の入っテ来てェ。…もう駄メ、抑エ…ら…れな…イ。このマ…まじゃあ、これガ外に出て、また…みンナ死んジャうよぉ。

 …だから…お…ねが…イ、わたっシ、私をぉおぉ…

 ころす(ころして)。」


 良く見た。影でよく見えなかったアルの半身が木に浸食されたの様になっていて、とても人間だとは思えない姿になっていた。下半身のほとんどは地に根を張る木の様になっていて、その場からは動けそうにない。だが代わりに周囲の蔓草や枝に、アルの体を浸食する植物が動き俺に襲い掛かった。

 本気で俺の命を奪おうと攻撃してきた。頭では理解したが、理解しただけで反撃も防御も出来ない。する訳が無い。何故アルが俺に攻撃する。木の力がアルに浸食した?だからアルは操られていると。ふざけるな!

 だがそんな俺の心情など知らぬと言う様にアルは攻撃を続ける。俺に謝って来た声は、最早意味を含まない呻き声だけを上げるだけになった。

 さっきアルが言った通りなら、このままではまた木が暴走し、異変が世界を襲うという。しかもアルがその根源となって。なんでそんな事になった。アルは世界を助ける為に来たというのに。その為に犠牲に成りに来たと言うのに、何故逆に世界を滅ぼす事になる。

 訳がわからなかったが、俺がすべき事だけはわかってしまった。アルはその為に俺を呼んだのだろう。自分を止めてもらう為に。そしてどうすれば止まるのかも分かってしまった。

 本当はやりたくない。そんな気持ちが一番大きかった。だが、もうやるしかなかった。

 それに丁度良かった。

 俺は刺されるのを覚悟してアルに近づいた。幾つもの鋭い枝や蔓草が俺の体を貫いて行く。気にせず歩み寄る。持っていた剣を構え、アルのすぐ目の前に立つ。そして。

 アルを抱きしめた。

 抱きしめたまま、俺は剣をアルの背中から刺し、俺の体ごと剣でアルの体を貫いた。

 丁度良かった。…もうこの世界にいる意味が無かったから。だから俺と一緒にアルを剣で刺した。

 上手く急所に刺さったのだろう。アルは動かなくなり、周りから感じた俺への殺意も、攻撃も止まった。アルを通して伝わった力が途絶えたのを俺も感じた。それと同時に俺の体が土塊つちくれの様に崩れていく。

 それもそうか。本来俺はここには来れない。それをアルが力を使って初めてこの場にいられる状態だった。だが、その力を持つアルが死に、力を失い俺も限界を迎えた。

 だが気にしていない。元から生きて帰る気など無かったから。このまま崩れても問題無かった。

 だが、アルがちゃんと死に切れたか確認出来そうにない。力は途絶えたが、アル自身解放されたか分からずに消えるのが心残りだ。せめて、あまり痛い思いをさせずに出来たか、ちゃんと死ねたか知りたい。

 最後の瞬間、誰かの声がまた聞こえた。


 何故?


 そんな声に応える事も無く、俺の意識は途絶えた。

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