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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第2章 ベリーとスパイン
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回想5

 それから俺らは、独自に動いて『見えない敵』を探った。古い資料を漁ったり、戦場近くまで自分の足で赴き調査をしたり、世間からはぐれてしまった俺らでも、だからこそ出来る事をし尽くした。

 結果として、最悪な情報が集まった。戦場に現れたのは確かに見えない巨大な木の根である事。その木の根が戦場だけでなく、ヒトが多く住むまちにも現れる可能性がある事。たったそれだけの事だが、知ってしまうともう平常ではいられなかった。


「こういう時、頭が良い自分に生まれた事を後悔してしまうよ。」


 すっかり丸くなり、最初の無愛想はどこへやら。資料あさりを担当していたクロッカスが自身の出生を憐れみつつ集まった資料を基に考えられる事を粗方調べた。

 古い資料と言っても、そのほとんどが童話や寓話といった伝説として扱われている、要は傍から見れば作り話同然のものばかりだった。しかし、今回の件でその見つかったほとんどの伝説が確証あのものとなった。

 セヴァティアの行動力にカナイの情報収集、クロッカスの知識など得意な事を上手く使って出来た仮説は、ほぼ実現してしまうであろう話になった。

 しかし知っただけで、後はどうするかなど分かりはしない。出来るのは何が起こるかを知れた事だけ。それらを事前に防いだり解決する方法までは解明出来なかった。


「せめて、そのアルが言う『木』に俺達が見れたり、そもそも近づければ良いんだけど。」


 クロッカスは言うが、無理な話だ。何せ唯一問題の『木』を視認出来る人物がどうして見えるのか分かっていないからだ。生まれ持ったものなのか、後天的なものなのか、気付けば遠目で木を肉眼で見る事が出来たと言う。せめて後天的な者であれば、俺らにも見える様に出来るかもしれないが、それも難しい。何よりもあまり時間が無い。


「…また揺れたな。」


 いつかの戦場での異変の時起きたと同じく、揺れが最近多くなった。想像したくないが、例の木の根が地中は這って生じた揺れなのだろう。もし揺れが大きくなれば、それは近くかあるいはすぐ傍から根が出た暴れ出すという事だ。


「アル。その木って遠い場所にあるの?」


 あれから意識を取り戻し、俺らの調査に自ら加わったアルは、聞かれた事に思考して答えた。


「遠く、なのかな。なんだか以前から距離が近づいてる気がするんだよね。…一歩歩み寄ると直ぐ傍に立っている様な感覚がして、もしかしたらあの崖からあの木に一気に近寄れそうな気がする」


 どうも要領を得ない感じに聞こえるが、アルの話からカナイが何かを察して答えを出した。


「もしかして、その木には物理的な距離とか関係無いんじゃないのか?元々どこにあるか分からないのに見えるって言うし、そもそも最後に木が立ってたって言ってた場所、調べたらそこ島も何も無い海の上だったんだよね。」


 木どころか何かが立っているはずの無い場所に木が立って見える。確かに可笑しな話だ。カナイの仮説が合っているなら、木はアルが見てる場所には実際には立っていない。そもそも言う通り距離も関係無く、木の近くに行こうと思えば行ける可能性があるという事だ。


「だが、その木って奴は特殊な結界の中にあるんだろう?それなら近づくなんて出来ないんじゃ」

「だから、もしかしたらアルなら行けるんじゃないか?」


 言われたアルだけじゃなく、他の奴の目を見開きカナイとアルを交互に見た。アル自身も自分を名指しされそう反応すれば良いか迷っていた。


「もしもね、アルがその木に近づけたら、直接その木を止める…って出来るんじゃないだろうか。もちろん、木自体に意思があるか分からないが、もし出来たら」

「おい。」


 話しているカナイを止めたのは俺だ。熱心になって話すカナイは呼び止められ、我に返る俺を見た。多分この時、俺はカナイを睨みつけていたと思う。場の空気が凍り付いた様だったからだ。


「もしも、とか。出来たら、とか。お前がやるならまだしも、それ全部アルがやる事前提だってなら、この話は無しだ。」


 言ってから、この場に留まるのが居心地悪い気がして、速足でその場を離れた。

 何故だが、すごく嫌な感じがした。アルなら木をどうにか出来る?あれだけ大勢の命を一瞬にして奪うだけの力をもった巨大な存在。それをたった一人の人間にどうにか出来ると言うのか?出来たとして、それは一体どういう方法だ?

 考えたくない。その先を予想するのが不安で嫌になる。

 何よりもカナイの話を聞いたアルのあの目。とても自分には無理だと、何時もの様に過小評価している様なアルの目には見えなかった。

 それに何故アルだけにしか見えない。本当にアルには木が見えているのか?信じられない訳ではない。だが、信じる分だけアルの存在が透明になっていく様に感じる。

 他の奴はアルを信用していると言っても、やはり見えないものを信じるのは難しく、半信半疑なのは確かだろう。本当に木の根が大勢を襲うなんて話も、実はデマでした、というオチで終わると思いたい。でも思えなかった。


 それから数日後大きな揺れが起き、アルが姿を消すのと同時に俺は森へと向かった。

 結果として、木の存在は確かなものだと確信した。

 どこかでまた巨大な何かに襲われ、ヒトが大勢亡くなったと聞いた。ある者は何かに押し潰されてある者は何かに体を吹き飛ばされて地の落ちて。その光景は何とも悲惨だっただろう。

 中には何かに操られる様にして、近くにいつヒト同時で殺し合う、なんて惨い事件が起きた。

 そんな場面には出くわしたくないし、そんな目にも遭いたくない。自分の命が結局は大事だから。だから大勢が安全な血を求めて逃げ惑っている。本当に安全な地があるかなど分かりはしないのに。

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