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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第2章 ベリーとスパイン
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20話 妖精から贈り物

 祭りが無事終わり、まちと森の頭領との一歩的ないざこざも終わり、周りの空気が落ち着いてきた頃に報せが来た。


 ベリー・ストロ殿へ。アナタ様にお伝えしたい事があり、こうして手紙をしたためました。


 挨拶やら森での様子などが書き記され、こちらに宛てた事を要約すると、用があるから屋敷に来いと言う内容だった。ベリーには用事の内容が見当つかず首を傾げる。

 一方の俺はと言うと、見当がついていた。いや、見当というよりも希望と言うべきか。

 屋敷での出来事、そして祭り当日で起きた出来事から行き着いた考えだ。何より、樹花族には希少な魔法種族である事と虚弱体質であるの他に有名な伝説がある。

 ともかく、呼ばれたならば行かなければいけない。これが喧嘩であれば楽しみだし、それ以外の用件なら無視をしても良かったが、今回は特例だ。


「森の屋敷へ行くのならば、何か手みやげを持っていかなくてはいけませんね!」


 ベリーの方は屋敷の訪問に関して真剣に悩んでいた。俺は何時もの通りベリーの様子を見ているだけだ。意識しか存在しない俺は、文字通り手出し出来ないからな。

 俺にまだ自分の身体が健在であれば、色々と出来た事があるだろうに。


 こうして用意を済まし、指定の時間十分前に屋敷前まで来た。早く来てしまったのではと思ったが、ベリー曰く相手を待たせないのは当然の礼儀だとの事。そうかい。

 屋敷の前で待っていると、案内役であろう妖精が現れ、中に入れなら頭領の下まで案内された。廊下を歩いている最中に視線を感じたからそちらに意識を向けると、廊下に角などから屋敷で働く妖精共が覗き見る様こちらを見ていた。

 そりゃあ以前は侵入者としてこの屋敷の中を暴れ回った奴がこうしてまた屋敷に訪れているから、気にはなるだろう。何より妖精は元来好奇心が旺盛で悪戯好きであるから、仕事を放り出して屋敷の客を観察しに来ている奴が大半だろう。あの妖精の頭領が怒りはしないか?

 そんな妖精への余計な心配をしている間に、件の頭領が待つ部屋に着いた。本当は樹花族の頭領の方が呼んだ訳だが、そちらに会う為にまずはこちらの頭領に会って許可を取らなくてはいけないとか。面倒くさいし手間だな。

 ノックを数回、中から声を聞こえてから部屋に入った。以前とは違い、部屋の奥に置かれた机付きの椅子に座りこちらを持っていた、妖精の頭領が顔を見せた。

 そちらと挨拶を済ませ、ようやく樹花族の頭領が待つ庭へと行く。そこまでの道中、やはり会話らしい会話は無かったが、依然と比べれば随分と雰囲気が柔らかくなった。おかげで道中以前ほど気疲れしなかった。俺からすればすごい変わり様だ。

 そうして、ようやっと樹花族の待つ庭に辿り着いた。以前来た時よりも庭が整えられている様に見える。過去の事から他の妖精だけでなく、頭領自身も庭には近づかなくなっていたらしく、花が少なかったり地味に見えたのはそういった出来事からだと改めて実感した。

 過去のわだかまりが無くなり、心に余裕が出来こうして庭の手入れをする様になってか、妖精の頭領が穏やか表情で庭を見ていた。

 そんな出来事に思いをふけながら歩いて庭の奥へと進むと、ようやく呼び出しに張本人である樹花族が姿を見せた。庭の開け場所に小さめの卓と椅子が置かれ、日の下で茶会でも始めそうな用意がされていた。

 樹花族の頭領に促され椅子に座らされ、空いているもう一つの椅子に樹花族の頭領は座って向かい合った。


「ようこそ、祭り以来だね。まだ未完成ではあるが、庭の景色を楽しんでくれ。」


 そう言って、ベリーが座る席の前、卓の上に茶が置かれた。置いたのはあの猫獣人ケットシィの従者だ。何時の間にそこにいたのかとベリーは驚いていた。俺は気付いていたから驚かず、相変わらず気配を消して来る、出来た従者だと感心しつつ警戒した。

 ベリーも挨拶をしつつ、持参した土産である茶の詰め合わせを樹花族の頭領へと差出す。そんなものが土産になるのか俺に刃分からないが、樹花族の方は嬉しそうにしているから良いのか。《


「それで、私に用事とは一体何があったのでしょう?」


 今回屋敷を訪れた用件をベリーが呼んだ頭領本人に直球で質問した。まどろっこしい会話の回り道をする必要も無いしな。頭領の方も早速と話題を出してくれたことに感謝しつつ口を開いた。


「あぁ、実は自分から君に渡したいものがあってな。…っとその前に、用があるのは君の方ではない。君の『中』に今いる方の人物に替わってもらえないだろうか?」


 樹花族の頭領の言葉に目を見開き驚きつつも、言われた事を理解し、ベリーは目を閉じて直ぐに意識が反転。俺自身話をベリーの中で聞いたいたから、ベリーが目を閉じた瞬間に意識を浮上させ、表へと出た。


「…やっぱり俺がベリーとは『別』だと気付いていたか。」

「自分も妖精種の一人だからね。ある程度今の君とさっきの子との気配の違いは判るよ。」


 妖精種は耳や目に特別な力を持つと聞くが、俺とベリーの違いまで見分けられるのは正直羨ましい力だ。

 因みに現状、こちらの頭領を樹花族と呼び、もう一方の頭領と妖精と呼称しているが、実際はどちらも妖精種だ。実はあちらの妖精の頭領の方の正式な種族名は妖精種の『狩人族』だ。

 『狩人族』は元来森に住み、長身と身軽な身のこなしから狩りを生業としている事の多い妖精種なのだが、どう見てもあちらの頭領の見た目が『狩人』という雰囲気ではないから、あえて妖精と呼称させてもらっている。かん休題きゅうだい

 話題はベリーを通して俺宛てに用件があると言う内容だ。

 樹花族の頭領が俺の事を知ったのは、妖精の頭領と戦っている最中に猫獣人の家政婦から報告を受けたからだと言う。そこで、俺の実力を確かめる為に決闘を申し出たのだとか。そして見事頭領の御眼鏡に叶い、こうして呼びつけた言う。


「君は、自分ら樹花族の花に関して知っているかい?」


 突如、自身の樹花族の頭上に咲く花に関して聞いてきた。やはり花に関しての事かと、俺は来る前から予感していた事が当たったと少し気分が高揚した気がした。

 俺は知っている、と答えた。

 樹花族は魔法の力は強い種族なのは知っての通り、そんな種族の一部である花は、自然に咲く普通の花とは異なる。樹花族の魔法の力が溢れ出た結晶と言われ、その花には樹花族本人よりもさらに強力な力が秘められているのだとか。

 そもそも花自体を見るのが初めてではあるが、それでもその花から強い力が発せられているのが分かる。もしこの花を持った状態で魔法を使えば、どれだけの影響が出るか想像出来ない。《

 そして肝心の内容、さっき言った様に渡したい物があるのだと言うが、一体何はベリーは分かっていない様子だ。そんな中俺はただ事の成り行きを待った。そうしていると、樹花族の頭領は突如自分の頭上に咲く花に手を掛け、なんとその花を自分の頭から摘み取った。

 その行動に当然ベリーは驚き、一瞬俺から無理矢理替わり止めようとしたが、俺が止めた。あの樹花族が無用な行動を起こす筈がない。何かを思って行動をするだろうと俺が思ったからだ。

 そして樹花族が自分で摘み取ったその花を俺の方へと差し出した。


「この花を君に差し上げよう。」


 摘み取ったその花を差し向けた先にいる俺に差し出すと言って来た。最初何を言ったか理解するのに数秒掛かった。そして理解した瞬間、何とも言えない感覚が胸から込み上げて来た。

 樹花族の花は希少中の更に希少な存在。咲く条件すら分からないそんな貴重なものを、他人である俺に差し出すなんて、一体どういう了見りょうけん何だろうか。そこだけが理解出来ない。


「簡単な事さ。事件での事、祭りの件でのお礼、ただそれだけさ。」


 実にアッサリと答えた。当人は了承している様子だが、俺はまだ受け取れずにいる。理由とその結果が似合っていないと思っているからだ。いくらあの時の件で感謝の念を抱いているとしても、それだけでこの貴重な花を差し出せるのかほとほと同調出来ない。


「あの時、自分らは互いに自分の気持ちを整理出来ず、互いに迷惑を掛けた。それが自分達だけなら良い。だが、他者であり無関係である君らやまちの住民達まで巻き込んでしまったのはダメだ。

 そんな中でも君らはカロンビーヌの事、そして自分の事まで解決へと導いてくれた。それに、この花をこのままにしておけないし、そんな中君らなら正しくこの花を使ってくれると自分が判断した。

 どうか、そんな自分の判断を信じてほしい。」


 信じてほしい、何て言葉は樹花族本人にこそ向けられる言葉だろうに、俺に対してそう言うなんて、食えない奴だ。

 そもそも、もう摘み取ってしまった後だが、咲いた花を摘み取って本人の身体は大丈夫なのだろうか?俺もそこまで種族の生態に詳しくないからどうにもやりづらい。


「あぁ平気さ。花は咲いた後自然と頭から取れる様になっていてな。取れるとまた次の花を咲かすための芽が出て来るんだぞ。」


 ほら、と言って俺にその芽を見せて来た。確かに小さい緑色の芽が出ている。一体どういう生態なのか、皆目分からん。不思議過ぎる種族だ。

 ともあれ、結局俺は花を受け取る事にした。そうでないといつまでもこちらに花を差し出そうと、しがみ付いてでも食い下がってきて、どこか頑固な状態になったベリーを彷彿ほうふつとさせた。


 こうして樹花族の花を手にした訳だが、ベリーはこの花をどうにかしたいかと聞いてみた。

 いえ、私にはその花でどうにかしようという気持ちも、用件もありませんので、スパインが使ってください!だと言った。本当に良いのかと念を押して聞くと。

 大丈夫です!それに、スパインの方こそ、その花を使いたい事があるのではないですか?

 言われて黙った。

 ある。どうしても使いたい事。正直に言えば、今回の用件が花の事であれば、どうにかして花を譲ってもらえないかと試案する程だ。

 ベリーには話していないが、さとい奴だからなんとなくても何かを察したんだろう。

 もしかしたら、この花があれば、出来なかった事が出来るかもしれない。そんな期待を胸手にした花をじっと見た。


 白く大きな6枚の花弁の花、そういえば『あいつ』はこんな花が好きだと言っていたな。

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