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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第2章 ベリーとスパイン
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5話 門番から攻撃

 庭を進んだ先、さっき庭師妖精が言っていた『屋敷』とやらの入り口前まで来た。が、これは果たして屋敷と呼称すべきものだろうか?実物を見る経験は無かったが、この規模の建物は『城』と呼ぶ方が合っているのではないだろうか。

 壁は赤色の煉瓦で青碧せいへき色の屋根、外壁の縁には丸まった草模様が施されている。屋敷と呼ぶには豪華な雰囲気を醸し出しており、さすがの俺でも入るのを躊躇ためらう。


「これだけ立派なお家に住んでいる方が、本当に花泥棒と関わっているのでしょうか?」


 確かに、まさか花泥棒を追ってこんな場所に行き着くとは思わなかった。一体どんな人物が花を盗む事を指揮したのか。ちょっと想像が出来ない。

 そんな風に考察に頭を巡らせていると、入り口らしき大きな扉が音を立てて開いた。ベリーは棒立ちの状態だったが、俺は身構えているつもりで見守った。

 開いた扉から出ていたのは、庭師妖精と同じ背丈、同じ髪色をした妖精だ。ただ装いや持っている物は違い、どこかまちの衛兵を思わせる整った服装を着て、片手には逆三角型の対称刃が付いた槍を持っている為、庭師よりも固い印象を受けた。

 現れた衛兵風の妖精は、ベリーの姿を一瞥いちべつして口を開いた。


「アレ、なんですか?ヴィッケってば、侵入者にやられたんですか?」


 開口一番で、俺らが侵入者であるのはもちろん、お仲間であろう庭師妖精の名前だろうか?その人物がやられたという事を理解した事を口にした。状況理解は早いな。

 そんな妖精の言葉に反応し、ベリーは素早く謝罪の体勢になった。


「申しわけありません!私、ベリー・ストロといいますが、ごキョウダイさまは私が手に掛けて、今気絶しております!」


 正直に自分が何をしたのかを白状し、その後も思いつく限り丁寧に謝罪の言葉を述べた。本当に一々律儀な奴だ。


「…フーン。ボクはアコニだよ。」


 ベリーの自己紹介を聞き、相手も大人しげに名乗ったが、さっきベリーがお仲間であろう妖精の事を『兄弟』と言った事に、俺もだが何よりも相手の妖精の方が反応を示した。それもかなり悪い方に反応したらしい。眉間にしわを寄せてあからさまに不機嫌になった。


「ところで?ボクとアイツをキョウダイって、カン違いしないでくれる?髪の色とか背の大きさで判断したってなら、ソレは大間違いだからね。」


 ベリーのキョウダイ発言に反論し、ベリーは再び謝罪の言葉を言った。確かに似ている所はあるが、それだけでキョウダイかどうかの判断材料にはならないだろう。特に妖精種相手なら尚更だ。


「妖精種だと、キョウダイと言うのはおかしい事なのですか?」


 今度は俺の言葉にベリーが反応した。なので軽く説明した。

 そもそも長命の種族である妖精種は出世率が他種族と比べて断トツで低い。子どもが一人生まれれば既に立派だし、次また子どもが生まれる確率がかなり低い為、妖精種でキョウダイがいるのは稀な事だ。


「そうでしたか!不勉強で本当に失礼しました。」

「イヤイヤ、分かったのなら良いよ?所で、君達はここに何しに来たのかな?」


 話が脱線し、当初の目的からずれた会話を続けていたが、妖精の言葉で思い出したかの様な表情を見せたベリーは妖精に向き直り、三度妖精に対して言葉を発した。

 話を待つ妖精の表情は、俺らがどういった存在かを分かって返事を待っている様子だ。


「ここには盗まれた花を取り返しに来ました!この屋敷の主さまに会わせてください!」

「ダメ。」


 ベリーの申し出に即答で却下を出され、かなりのショックを受けてベリーは絶句した。いや、当然だろ。見るからにここの警備に携わっているであろう相手に、責任者に会わせろって聞くのは断わってくれと言ってる様なもんだ。

 俺は次に何が起こるかを予測し、断られても聞かないつもりでベリーに言った。

 俺に替われ。こういった奴とは、戦う以外に話を通す手段は無い。こっちから攻めなくても、どうせあっちから仕掛けてくる。

 本来なら戦いを避けたがるベリーだが、相手の雰囲気を感じてか、俺の言った事に渋い表情をしたが、仕方ないという溜息を吐きベリーは承諾した。

 そんなベリーの様子を見ていた相手の妖精は、俺の存在に気付いていない為に首を傾げつつ、着実に今目の前にいる侵入者の排除をするために態勢を整えた。


「何か独り言でも言ってるみたいですが、ソンナ余裕がそちらにあるのでしょうか?」


 言いながら持っていた槍を構え、こちらに向けて攻撃直線まで至る。そして問答無用で攻撃。槍の先端をこちらに向けて突撃して来た。

 ベリーの身体で意識は俺に替わった瞬間、瞬時に翼を広げて飛びあがり突撃を躱した。躱した瞬間、妖精は地面を蹴って直ぐに方向を変えて再びこちらに向いた。今度は妖精が跳び、槍攻撃を仕掛けた。

 正直跳んで来るとは思わなかったので、躱すのがギリギリになり、槍の刃が肩をかすった。体は傷付いておらず、服が少し破けて程度で済んだが、ちょっと俺も油断してしまった。ベリーの身体に傷を付けた事に謝罪しつつ、次の攻撃に備えた。


「オヤ、先ほどと顔つきが変わりましたね。…マァ良いですか。」


 俺らの変化に気付きつつも、気にせず休む事無く攻撃を繰り出した。素早く、それでいて重量を感じる攻撃に、躱すのが精一杯で反撃がなかなか出せずにいる。やはり妖精種故に機敏な動きが目立つ。攻撃自体も中っても大した損傷にはならないだろうが、あれだけの手数で来られると防がざるおえない。


「ウーン、なかなか攻撃が通りませんね。さすがに兼任でも門番しているヴィッケ倒しただけはありますね。」


 相手側も攻撃が通らない事にしびれを切らしてきた様子だ。わざわざ通らない事を口にし、溜まった苛立ちを発散しているという感じか。こちらとしても早く攻撃に移りたいが、相手がそれを許さない為にこっちも同じように苛立ちが募る。

 ならばと思い切り距離を取ろうと、躱す瞬間を狙い大きく動いた。おかげで妖精の攻撃は大きく空振り、妖精の方も相手と大分距離を離れた為に態勢が崩れた。

 やっときた好機を逃さぬ様、詠唱を唱えて対抗しようと思う。


「その牙を折る!」


 短く端的に詠唱を唱え、発生した魔法の力を今見ている妖精に向けた。すると妖精の体が紫色の光に包まれ、次の瞬間妖精はフラつき、先ほどまでの今にも刺しに来そうな程の威勢が無くなった。

 ちゃんと効いたな。今のは単純に相手の身体能力を低下させる魔法だ。俺はどちらかと言えば能力向上の方が得意だから、それも相手に対しての能力変化は不得意な部類だ。それでも成功した様で良かった。

 魔法を受けた相手の妖精としては当然面白くない。侵入者の手によって自身を弱体化させられたなど、屈辱以外の何でもないからな。


「モウ!大人しくやられて下さいよ!ヤリづらいったらないね!」


 俺の行動に苛立ち、文句を言ってきたが関係無い。こちらが手こずる程の速さが鈍くなったのなら好都合だ。魔法で前回出した魔法の剣よりは小さく、振るいやすい大きさの剣を形成し、今度はこちらが攻撃の側になった。

 もちろんベリーの要求は忘れていない。傷付ける為でなく、体力を少しでも減らす為だ。いくら敏捷性や機敏さに長けた妖精でも、弱点となる打たれ弱さと体力の無さはこいつも変わらない様だ。悪いが存分に撃たせてもらう。


「空想よ放て!」


 唱えたのは攻撃の魔法。属性を含まず、純粋な魔法の力のみで放たれた魔法の弾。遠く離れた相手に向かって空気の塊をぶつける様な簡単なものだ。だが単純な魔法でも、魔法の力の錬り方で威力は変わる。刃も研げば切れ味が変わるのと一緒だ。

 俺の放った魔法を魔法で相殺しようと妖精も魔法を使い、防ごうとする。だが、咄嗟とっさだった故に魔法の錬りが足りず、魔法を発動出来たが、俺の魔法の方が威力が勝り、妖精の魔法を貫いてそのまま妖精の腹にオレの魔法が中った。

 魔法が命ちゅうして、傷は付かなかったが多少よろめきつつ、まだ立っていた。だが攻撃が中り、戦いの最初の内にかなりの猛攻を仕掛けた為か体力も大分減ったのだろう。疲れが見えた。


「もう止めとけ。急所には中てなかったが、もうそっちも限界だろう?」


 言えば、俺を一度睨みつけ、その後直ぐに降参の意で手を上げた。表情は遣り切れないと口に出さなくても丸分かりだ。


「ハァ…もう、だから交替で見張りしようって決めたのに。ヴィッケのヤツ、思ったよりも早くヤラレてんだから。」


 自分が負けて、その原因が相方であろう庭師のせいだと愚痴を零し、不貞腐れた様子だ。それを見ていたベリーが、何か思う事があるのか、俺と替われと言ってきた。

 一瞬途切れる意識、そして表に出たベリーの意識は口を開いた。


「アコニさん!ヴィッケさんの魔法はとても手強く、もしヴィッケさんの魔法に捕まっていれば、私はとても太刀うち出来ませんでした!

 何より!必死に屋敷を守ろうとする姿勢は、まさに門番といての務めを果たさんとする立派な姿だった!」


 突如ベリーは相手の魔法を賞賛し、庭師妖精の事を持ち上げる様な発言し出した。今姿が見えない庭師妖精の事を励ますかの様な言動に、聞いているアコニと名乗った妖精はどこか困惑して見えた。


「だからこそ!あなたがヴィッケさんの仇を討とうとするのもうなずけますし、あなたが必至に戦うのもわかります!だからアコニさん!わざとヴィッケさんの事を悪く言って、自分を痛みつける事はしないでください!」


 言われた事を耳から入れて頭で理解するのに時間が掛かり、反応を示しすのに間が開いた。聞いた妖精は、数秒掛けて理解し、途端に顔を赤らめて焦りを見せた。まさかと思ったが、図星だったのか。

 妖精は言い返そうとしたが、口ごもったり舌が回らなかったりで何を言っているのか分からない状態だ。何より顔の赤さはそのままで、その状態で何を言っても説得力が無いのは一目瞭然だった。

 一方ベリーは、やり切ったといった表情をして誇らしげだ。俺からしたら、突然爆弾を放り投げて場を混乱させただけに見える。

 さて、結局の所俺らの勝ちという事で、屋敷に入って良いのだろうか。そもそも勝ったら屋敷に入って良いという約束をした訳では無いから難しいか。そのなったら、俺がまた気絶でもさせるのだが、ベリーが表に出ている以上、ソレは難しいか。


「アー、もう良いよ。戦ってて分かったけど、君まだ本気出してないんでしょ?ソンナの相手にしてたらこっちが持たないから、モウ止めやしないよ。」


 など思っていたら、相手の方から降参の意が出た。さっきの庭師との戦闘と比べてあっさりと終わる現状に少し物足りなさを感じつつも、何故潔いのかベリーは気になり確認した。


「確かにボクとヴィッケは門番だからね、仕事をしないと怒られるだろうね。デモ、相手が君みたいな強敵なら、そこまで咎められる事はないだろうし、頭領サマも多分納得してくれるさ。」


 相手が自分らより強かったから負けた、と言い訳出来るから降参したとは、なんとも忠誠心の低い事か。俺が言える事ではないが。


「しかし、マサか正面から入ろうとするヤツがいるなんて、君はある意味運が良いね。」


 何やら気になる事を言ったので詳細を聞くと、どうやら例の妖精達が飛んで越えていた塀の上。そこには限られた認められた妖精しか通れず、部外者が塀を越えようとすると結界の力が働き、簡単には塀の中には入れない様になっていたとか。

 塀の上に結界が仕掛けてあるのは、考えれば当然ではあるが、ベリーの愚直な行動に助けられたという訳か。俺も少し熱くなってしまっていたらしい。そこは反省だな。


「…ヴィッケはウチらの中でも相当な魔法使いだから、君に相当な実力があるのは確かだろうね。でも、中に入ったからにはもう引き返せないよ。中にだって結構手強いおヒトが待ち構えているんだからね。」

「では行きましょう!」


 妖精の忠告も聞いているのかいないのか、ベリーは言葉に何も反応を示さず、早速屋敷に入ろうとしていた。そんなベリーの態度に異議を唱えつつ、妖精は自分の話が無視されたと思いベリーに怒りを向けた。

 しかし、そんな妖精に対して振り返り、ベリーは改めて言った。


「私は花を盗んだことの真意を知るために来ました!忠告は感謝します!しかし、だからこそ私は立ち止まらずに進むつもりです!どんな相手が来ても、私は負けませんし、頼りになる味方もいますので大丈夫です!」


 そう断言し、ベリーはきびすを返さず屋敷の中へと進んだ。俺もベリーの考えに同意だ。相手が強いなら俺としてはむしろ歓迎だ。ベリーもなんだかんだ、戦闘に関しては俺の事を信頼しているのがさっきの台詞で分かる。なら、その時になったらその言葉に応えなくてはいかないな。


「ハァ…まぁ、ソノ様子から見て予想は出来たけど、行くならもう止めないよ?忠告はしたからね。」


 最後の忠告を受け、ベリーは屋敷の中へと姿を消し、妖精によって扉は閉ざされた。


「まっ!手強いおヒトってのが、ボクやヴィッケと同じ妖精とは限らないけどね。」


 扉を閉ざした妖精が、そんな事を口にした事なんぞ、俺らが知る由が無い。

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