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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第2章 ベリーとスパイン
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2話 向こうから挑む

 向かった先である森の入り口には直ぐの到着した。そもそも隣接しているのだから、わざわざ急ぎ飛んで来る必要も無い気がする。もういちいち指摘する気も起きないが。

 この森は、このまちがある土地、大きく言えば西の大陸の中でもかなりの広さがあり、まちはその森を背にしている状態だ。この森には強い魔法使いが住んでおり、その魔法使いの恩恵を受けてこのまちは生活しておる、例の花祭りは、その恩恵へと感謝の印として始まったとされる。

 言わばこの森はこのまちの守護者とも言える場所なのだ。どこかでは『かみ』と呼ばれる者が各地の森や川といった自然やヒトの住む場所を守っていると言われるが、このまちではその魔法使いが土地守の様なものか。

 魔法使いに関しては、まちの住民皆は知っている話だ。ベリーの当然知っている。そんなまちの住民にとって大事な森に件の花泥棒が逃げ込んだとなれば、ベリーが取る反応は決まっていた。


「花を盗むだけでなく、この森に足をふみ入れるなんて、とんでもない事が続いて腹が立つ以上に悲しみが湧きます!早くここから連れ出さなくては!」


 悲しんでいるにしては、とてもはきはきしていて活発的に見えるが、まぁ良いか。それよりも確かこの森は立ち入り禁止のはずだ。中に泥棒が入ったとなれば、その辺りはどうするのか。


「確かに、勝手に入るなどとても褒められる事ではないです!しかし、だからと言って泥棒をほっておく理由にはなりません!入ったら早く先に進んで、早く出て来ましょう!」


 まるで暗示でも掛ける様に自分に言い聞かせて、ベリーは立ち入り禁止の森に自ら足を踏み入れた。当然俺も一緒だ。

 森の中は、外感じた長閑のどかで穏やかな、どこにでもある森の雰囲気とは異なり、何かに見られている様な、緊迫した雰囲気がある。

 まるで森そのものから歓迎されていない気がする。そんな敵対心がどこからか漂っていて、あまり長居したい気分にはならない。

 しかし、ベリーはそんな雰囲気を察していないのか、さっきまでの申し訳なさはどこへやら、翼を閉じて地面に降りたつと、ずかずかと奥へと足を進めていた。


「ここのどこかに泥棒が潜んでいるのですね!一体どこにいったのか。」


 おい、あまり大声を出すなよ。っと言っても、その返事で既に大きい声量に呆れつつ、俺も辺りを見渡し警戒した。雰囲気は悪くとも、何かが今襲ってくる気配も無い。じれったい気持ちになる。

 良いから、不審者が来たと思ったら遠慮なく襲って来いって。そう思いつつ、目的が泥棒探しである事を忘れず、気配を探る。かすかにだが、俺ら以外の何かが森の奥へと進む気配を感じた。

 それをそれとなく伝えた。泥棒かもしてない、なんて言えば大騒ぎしてぶっ飛んで行きそうだと思ったからだ。


「なるほど、もう少し奥ですね!行ってみましょう。」


 なるべく音を立てるなよ、と言っておいたおかげか、ベリーは翼を折りたためた状態のまま、徒歩で森の奥へとすすんだ。ヒトの手が全く入っておらず、道らしい道も無く、長く伸びた草むらが行く道先をほとんど隠していて進みづらい。

 草をかき分ける音や草を踏みしめる音、小枝を折る音が空間に響き、無音になる難しさを物語る。何よりもこんな森の中で鳥や他の動物の鳴き声が近くから聞こえないのが、他に誰も居ない気がして警戒心や恐怖心を煽る。

 本当にここに泥棒が入ったのか?と疑問に思ったところで、やっと気配を感じた。ベリーに止まる様に言い、気配を目で追う。そこにいたのは光る玉だった。

 それは魔法の力で発行しているものなのは見て分かった。どうやらその光の玉は俺らに気付いておらず、どこかへと向かって揺らぎながら飛んでいた。


「あれは、この森に住んでいるのでしょうか?」


 その光の玉の正体を察したベリーは、光の玉の後を追いつつ聞いて来た。俺も既に正体を知っており、既に俺もそこについて考えていた。予想が当たっていれば当たっていれば、あの光の玉は今回まちで起きた花泥棒に関係しているだろう。

 とにかく、今は光の玉を見失わず追う事が優先だ。まだ気付かれずにいるらしく、有り難く音を出来るだけ立てずに後を追う。

 少し先に進んだところで、光の玉が止まったのでこちらも止まる。すると、少し経ってからまたどこからか光の玉が来た。更に他にも光る玉が寄って来て、光る玉の群れが出来た。そんな光景をベリーと一緒に茂みの中から覗き見る。

 見ていると、光の玉は次第に形を変えて、光が弾けるとそこには小さなヒトの形をしたものがいた。


「おい!お前の方はどれだけ集まったんだ?」

「ざっとこんだけだよ。今森の外のまちにたくさん集めてあったのがあってさ。簡単に集まったよ。」

「そこの花畑の花も全て回収したよ。早く運んでしまおう。」


 光の玉の正体は、虫の羽を背に生やした小さな背丈をした妖精種だ。羽の形や姿はそれぞれ異なるが、共通の特徴である長く尖った耳に色鮮やかな髪色は遠目でも分かった。こいつらは森の奥深くに住んでいると聞くが、何やら森の外にまで出て何かをしている様だ。

 その何かは、話の内容や妖精共の姿を見て一目瞭然だった。妖精共は皆両手で抱える程の量の花を抱えていた。更にまちに沢山集められた花という話は、間違いなく花屋にあったはずの花の事だ。そしてまちの花壇の花の事でもあるだろう。その花をこいつら妖精が盗っていったという事だ。

 まさか森の妖精がヒトのまちから花を盗んでいたとは、正直驚いた。小さな羽族の妖精は悪戯好きで有名ではあるが、ヒトの多く住むまちで盗みを働くなど、そんな大それた事をするのは滅多にないはず。

 一体花を集めて何をするのか?どうやら花は森の更に奥の方へと運ぶようだが、この森の奥と言えば例の『魔法使い』が住んでいるという奥地を指すのか?


「待ちなさい!そこの妖精たち!」


 思考している最中、突然聞こえてきたベリーの怒号に正気づけられ、見たらベリーが茂みから姿を現し、妖精共の前に堂々と立っていた。

 何をしているんだこいつは!?ベリーの行動に俺は吹き出し、一瞬混乱に陥ったが直ぐに立て直し、ベリーに一喝した。何姿見せてんだ!折角気付かれずに奇襲なり後をつけるなり出来ただろうが!

 言いはしたが、こうなる事は予想出来ていた。何せこのベリー、今までの言動を見て分かるが曲がった事が大嫌い。そして正々堂々と立ち向かう事を当然とし、自分が信じた事を貫き動く、そういう奴だ。だから、妖精共の話を聞いたらどう動くは予想出来ていた。だが、考え事に集中していたが為に止め損ねた。失態だ。


「なっ!なんでここにヒトの子が!?」

「やべぇ!話聞かれたか!?」


 どこからか飛び出してきたベリーに妖精共は驚き、動きを止めていたが、話を聞かれたという可能性に気付いた妖精の一人が声を上げると、他の妖精も狼狽うろたえ出した。

 すると妖精共は一目散に森の奥へと飛んで行った。


「あっ、逃げました!」


 三人程いるだろう妖精共が飛んで行ったのを見て好機と思った。妖精は悪知恵は働くが、戦闘には慣れていない為に、自分より大きく手強そうな相手からは逃げる事がほとんどだ。だからこうして自分の住処へと逃げ帰って行く。

 ご丁寧に三人共一緒の方向へと飛んで行ってくれるから、間違いなさそうだ。知恵も働かせる場所でちゃんと働かさねば無いのと一緒だ。


「なるほど、あの妖精たちを追えば花を集めている場所がわかるんですね!」


 そういう事だ。速さはそれ程速くもなさそうなので、ベリーの飛行速度でも追いつけるだろう。ベリーは翼を広げ、大きく空を切る音を立てて飛び出した。

 案の定、妖精共にはすぐに追いついた。妖精共の背を見つつベリーに拘束こうそく魔法を使う様(うなが)した。


「しかし、今使えば妖精たちに怪我をさせてしまうのでは!」


 言っている場合か!ベリーの他人を優先する性格は優しさではあるが、時と場合によっては短所だ。


「おい!何同じ方に逃げてんだよ!アイツ追っかけて来るじゃんか!」

「どうしよう!」

「しかたない!こうなったら魔法で一斉攻撃だ!」


 こちらの追う姿に気付いた妖精共は、止まったと思うとこちらに狙いを定めて魔法の詠唱を同時に始めた。これは不味いと思った。

 ベリーは魔法の心得はあるが、まだ自分から放つ事しかまだ使え熟せておらず、相手から使われた時の対処にまだ慣れていない。それも多数から同時に魔法を喰らうとなればただでは済まない。


「烈々なる熱、矢の如き速さでもって放ちて穿うがて!」


 三人同時に詠唱を唱え、同時に火が燃え、真っ直ぐに飛ぶ矢の様な赤い三つの光がこちらに向かって放たれた。ベリーも飛行中だったが為に速度のある魔法に対応出来ず、動けず棒立ち状態だった。

 結果、三つの魔法は一点、ベリーの下であたり延焼して煙が立ち上り、魔法が中ったであろうベリーの姿は隠れてしまった。


「よしっ!あたったぞ!」


 三人の妖精が魔法が中ったと勝った気でいた。当然こちらの様子など見えていないのに、短絡的な奴らだ。


「…まっ、そもそも『俺』が最初から出ていれば良かった訳だがな。」


 突然聞こえた声に、妖精共は驚いているだろう。それもそうだ。魔法が中り気絶でもしているだろう相手がそこにいるはずなのに、まるで魔法になんぞ中らなかったとでの言う様に無傷で立って喋っているのだから。それも先ほど茂みから出て来た時とは打って変わって、目つきや雰囲気が変わって見えるだろう。

 俺はベリーの『身体』を動かしつつ、妖精共の様子を伺う。当然、相手の様子が変わって混乱しているのだろうが、互いに見知らぬ者同時である妖精共の事はどうでも良い。あちらが先に攻撃してきたのであれば、もうこちらから攻撃をしても問題無いという事なのだから。

 スパイン!怪我をさせず、ちゃんと手加減してやるのですよ!

 聞こえてきたベリーの声に、無駄に耳を塞ぎつつもへいへいと軽く返事を返し、お前はヒトの心配よりももう少し魔法の訓練を積めと言っておいた。


「なっ!あいつ、あたる寸前に防御魔法を張ったの!?」

「あんな一瞬でおれらの合体魔法を防ぐ程の魔法なんて!」


 分かりやすい状況説明を有難う。お礼代わりにこちらも魔法をきちんと説明する必要がある。


「防御魔法ってのは、相手の魔法の力を利用して、受け流す形で使用出来るんだよ。そうすれば、詠唱も短く済むんだ。」


 言いながら次の魔法の準備をする。ベリーの注文通り、攻撃系ではなくただ相手の動きを制限する拘束魔法の詠唱を早口で唱えた。


「兇暴な獣の尾を掴め。」


 妖精共に向けて片腕を伸ばし、何かを掴む様にして拳を握る。瞬間、三人の妖精の周りに光の帯が現れ、意表を突かれた妖精共は一足逃げ遅れ、そのまま素早く光の帯に締められ、宙に飛んでいた為にまとめて縄に縛られたようになって地に落ちた。


「いってぇ!何するんだよ!」

「そりゃあ、さっきやられたお返しだ。それよりも。」


 魔法で一緒に拘束されて身動きとれず、もぞもぞと身を捩じらる三人の妖精共に、花を盗んだ事に関して聞き出そうと近寄ると、別の気配と魔法の力を察して咄嗟に後ろへと跳んで下がった。

 下がった直後に俺が立っていた場所に魔法の矢が刺さった。魔法の矢が飛んできたであろう方を見上げると、そこには大きな蝶の羽を背から生やした妖精が浮いていた。

 さっき拘束した奴らの仲間だろうか。装飾品を身に着け、他の妖精よりも着飾った印象を受ける。


「お前たち、早く逃げて邪魔者が出たと『あのお方』に報告するんだ!」


 言って再び矢を放ち、妖精共を拘束している魔法に矢が中ると、拘束が弾ける様にして消え、妖精共は自由の身となってしまった。


「ありがとーザクロ!」

「こいつらなんて、ちゃちゃっとのしちゃえ!」


 拘束が無くなり、妖精共は各々こちらに散々言ってから森の奥へと飛んで行ってしまった。まあ逃げてしまった奴は仕方ない。それよりももっと大物らしい奴が来たから、そちらに集中する事にした。

 この方は、あの妖精たちの主導者りーだーでしょうか?ベリーの疑問に、俺は多分なと返事をしておいた。確かにさっきの妖精共よりは強い魔法の力を感じるが、まだそれ程でもない。妖精共を纏める奴らの一角といったところか。


「さて、私の仲間に危害を加え様とするお前には、ここで退場してもらう。」


 見事に型にはまった台詞を吐き、俺らに向けて魔法を放つ素振りを見せる蝶羽の妖精を前に身構えた。仲間を怒らせてしまったと嘆くベリーに遠慮せず戦う事を伝え、それを聞いて止めようとするベリーの声を聞かずに飛んだ。

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