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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第1章 アサガオとシュロ
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41話 ヒトリで過ごす

 たったひとつ、なくしたくないものがある。


 道は広く、そして変わらず植物の見た目で植物とは言えない不気味な色の通路が続いていた。よく見れば地面、と呼ぶべきか床と表すべきか、オレの足元にまであの気味の悪い色の植物の茎か蔓が伸びていて、壁と床全てがあの植物らしきもので覆われ、まるで木のうろの様だ。

 だとしたら、やはりオレが今いるのは、その『存在』の中でほぼ決まりだろう。オレと同様に存在の姿を視認出来るヤツも植物の木に見えていたわけだし。

 とっくの昔に覚悟をして入ったこの場所、流れる空気の様なものが、外から流れる空気と混ざって何か違うものを肌に感じた。ソレは肺の奥から込み上げて来る気持ち悪いもの、息をしているだけで吐き気と頭痛がしてくる様な不快感がして、この場からサッサと立ち去ってしまいたい気持ちがして来る。コレは『存在』とやらが過去に、ヒトの負の感情に影響を与えた事と関係しているのだろう。

 とにかく今は奥に進む事が優先だ。奥からあの不快感が一層強く感じる。進みたくない自分の意思と、進ませたくないという『別』の意思を感じるが、どれも無視して足を進めた。


 そして、恐らく奥地の手前来たのだろう。あの不快感は更に増して感じたが、ソレよりも目で見て分かる、不気味な壁や床とは違う、あの木を見て思った事の一部だ。

 不気味だが同時に感じた、だからこそ一層異様で不気味に思えたあの金色の葉っぱの美しさ。ソレと同じものが今眼前に広がっていた。


 あの美しい葉が、溜め池に落ちた葉の様に、どこかの平原に広がる花畑の様に、床一面を覆い隠す様にに広がり茂った部屋の様な開けた空間。ソレは更に奥の方から漏れる光に照らされ、まるでソレを養分にしてここまで葉を多く茂らせたかの様だった。

 そして、葉が養分にしているであろう光源は、例の核と同様に光輝いていた。その輝きは色んな色に揺らめき、虹色と呼ぶには自然のものとはかけ離れた、腐敗して出て来る異臭を嗅いだ気分にさせる異質さを感じる。だが、同時に抗いがたい力も感じた。まるで、使う事を強要された強力な武器や薬を前にした様な、どこか魅力的にも思えるそんな雰囲気を纏っている。

 どっちにしろ、これを撃つのがオレの目的だ。しかし、これだけのものを撃ったら、確かに反動でどうなるか計り知れない。そもそもどうすれば、『浄化』とやらは成功と言えるのか、そこを詳しく聞かなかったのを悔やみつつ、早く済ませようとオレはその部屋と言うか空間に、足を一歩踏み入れた。


 最初は気づかなかったが、覆い茂る葉や奥で輝く核以外にも、そこには在った。

 核の数歩前、核とオレの間にソレは立ちはだかっていた。ソレはよくよう見れば、ヒトの形をしていた。頭と呼べる部位からは髪であろう長く赤いものが伸びて、一見したら赤毛の長髪が無造作に伸びた姿をしている。体の部分は、よく見えず服を着ているのかは判断出来ないが、それよりも目を引くのは下半身。正確に下半身と呼べるのか、その部位はまるで地面に半分めり込んでいる様で、床や壁を覆い尽くす蔓か何かに覆われて下の方まで隠された様に伸びている。

 どこかで、体の半分が植物の樹木人という種族がおり、遠い昔の戦争時代に数が激減して絶滅危惧種族となったと聞くが、その姿がまるきり今見ているソレと同じだった。なら、アレは樹木人だろうか?

 考えている内に、突如地響きがした。激しいものではなく、地面の深い場所から響いた様で、そこまで体も揺れなかったが、それと同時に、目の前の核の不気味な輝きが増した気がした。コレはまずい、セヴァティアが無理やり力で抑え込んでいるという異変が再発する兆しだとしたら、早く核を撃たねばならない。そう思い、核へと急いで駆け寄った。その瞬間、目の前に立つ『ヒト型』が動いた。

 生きているのか?こんな場所で?そう思考する瞬間の隙を突いて、突如既視感のある影がオレの視界の端に映り、咄嗟に後ろに下がった。

 ソレはオレが立っていた場所に刺さり、地面に穴を開けた。刺したソレが、外で相手した木の根と同じ見た目をしていたが、伸びる根元は壁や床、この部屋を形作る不気味な植物が動いたものだった。

 一体何が攻撃してきたのか、というのは一目で分かる、あの『ヒト型』だ。アレが動き出して攻撃されたのだから当然だ。しかし、アレが一体何なのか分からない。

 更によく見たら死角になっていて見えなかったが、『ヒト型』の腹部を貫くき刺さった剣の様な物が見えた。錆びついているのか茶色くなっており、『ヒト型』の背中から深く突き刺さっていて、あんな状態のまま動いているので、それが異常性を引き立たせた。

 ヤツの見た目がどうあれ、正体がさっき考えた樹木人であったとしても、結界に張られて入られるヤツが限定されるというこの場所にいる事が異常だ。何よりオレを明らかに『敵』と認識している。見ず知らずの他人から恨まれる事は、覚えている限りやっていないハズだ。オレが放浪していた時となったら少し考えるが、少なくとも見覚えの無い種族から初手から確実に命を奪いに来られる程の事はしていない。

 耳を澄ますと、その『ヒト型』は何かを呟いていた。本当にか細い声なので、聞き取れないが。だが、よく聞こうと近づいて後悔した。再び攻撃であろう枝攻撃がきた。外でやり合った時よりも太い植物の枝が、棍棒で叩いたかのような激しい音を立てた。

 そのほんの一瞬だけ、『ヒト型』が何を言っていたのか聞こえた。正直これも聞いて後悔した。聞かなきゃ良かった。


「ころす」


 たった一つの言葉を何度も、何度も何度も変わらず呟き続けていた。そして俯いていたのと前髪らしきもので隠れていた『ヒト型』の目が見えた。

 目らしきものは間違いなくヒトの目の形をしていた。遠目だから細かくは見えないが、色は薄紅色だ。ただ、全く生気を感じられず、まるでヒトの亡骸でも見ているかの様だ。動いた、とは言ったがとても生きたヒトとは言えない、ぎこちなくまるで糸と繋がり操られる人形だ。

 その『ヒト型』が腕を上げ、オレに向かって指を指す動作をした。ソレと同時に大きな植物の根が次々出てきて、オレに向かって波の様に襲い掛かって来た。左右に転がる勢いで躱し、難を逃れたがソレは数秒の間だけ。すぐに次の攻撃が来た。

 一体何なんだ!っと困惑する中、カナイの言葉を思い出した。

 『あの子』と呼ばれていたカナイの知り合いらしき人物。ソイツは『存在』の下へと一人赴き、結局帰って来なかったという。まさか、あの『ヒト型』がその人物なのか?

 いや、だとしてももう千年以上昔の話だ。話の通り既に亡くなっているとして何故腐敗する事無く残って、今こうして襲ってくるのか。

 不死種、という見た目が屍体の不思議な種族は確かに存在するが、アレはそういうものではない気がした。妖精の目で見たが、『ヒト型』には何やらの強い力が集まっているのが見えた。ソレが何なのか判断出来ないだ、あまり良いものとは言えないのは確かだ。

 こうして考えている最中も『ヒト型』は周囲の植物を操り、襲い掛かって来る。アイツが攻撃しジャマしている限り、『ヒト型』の後ろにある核には近づけない。なら倒し、止めるしかない。

 生き物の命を奪うのは最大級のご法度。だが、今はそんな場合ではない。先に倒さねば、こちらが危ない。

 とは言え、現状あの『ヒト型』にさえ近づけない状態だ。どうやら離れて距離を置いてる間はこちらに攻撃をして来る事はないらしく、まるで植物の反応だ。植物の一種で、接触すると何かしらの反応を見せるものがあったハズ。ソレがあの『ヒト型』が見せる反応だとして、どうやって近寄るか。

 ここはもう少し策を講じる所だが、あのセヴァティアやカナイらに鍛えられた為に、こういった場所で出来る事、やる事は一つだと考えてしまう。

 やられる前にやる。あの植物が攻撃してきて、あてる前にこちらの攻撃を相手にてる。それだけだ。非常に頭の悪そうな戦法だが、今はコレが確実だ。何より、もう考えている時間が無さそうだ。

 地揺れがした。恐らく抑えられていた異変が活動しだしたのだろう。いくらあのセヴァティアの力でも、やはり時間の問題なのだろう、早く倒して核を撃たないと危険だ。

 もう考えるのは止めだ。剣を構え、オレはすぐにでも駆ける体勢をとる。そして、地面か床か敬称しにくいものを蹴り、『ヒト型』に向かった。

 オレが近寄り、『ヒト型』が反応した。すぐに植物の根共がオレに向かって伸びて来て、突き刺そうとしたり、叩いたりと様々な形容でオレを攻撃して来た。オレに向かって来ると分かれば、オレが今立つ場所から動けば良い。という考えの基、オレが左右、前後、時に斜めにと躱して行き、なんとか攻撃を耐えた。が、攻撃の中の一つがオレの頬を掠った。中ってしまったと自覚した瞬間、声が頭の中から聞こえた。


「なんで邪魔だおいお前どうしてヒドイこいつ嫌だきらいだお前がどけよ何なんだ」


 ヒドく吐き気を催す言葉の洪水だった。性別はバラバラ、年と若いのや老いたものまで様々で、最早何を言っているのか判断できない大勢の罵声、怒号などが頭の内側を響かせて中身を無理やり出そうとしている様だ。

 気持ち悪い、それしか考えられなくなり、立ち止まってしまった。その瞬間を狙い、植物がまた攻撃を仕掛けてきた。しまった!と思い動くがさっきの言葉の洪水のいんのせいで上手く方向感覚を掴めない。いくつかは躱せたが、また一度攻撃を喰らい、再びあの言葉の洪水が襲う。


「もういや気持ち悪いサッサと消えろ許さないクソなんで私のお守りが」


 一瞬、聞き覚えがある様な声が聞こえた。どこで聞いたか短い時間で思い出そうとして、そして思っていたより早く思い出した。

 学校へと赴いた時、洞窟で魔法傀儡が誤作動を起こし、そこから逃れる途中で落し物をした生徒、ソイツの声だ。なんで今ソイツの声が聞こえたんだ?そう思ったが、次の攻撃を躱すのに精一杯でそれ以上考える余裕が無い。

 足に攻撃を喰らったのと、声の洪水の余韻のせいで上手く立ち回れない。もう『ヒト型』に近づく事も出来ず、距離だけが開く。また揺れが起きた。さっきより大きな長い。急がなくてはいけないと、気持ちが急いて体勢を立て直せない。

 自分でも自覚している。落着け、冷静になれ、このままじゃダメだ、ちゃんとしろ!オレの頭の内側から自発的に言葉が出て来て、逆に落着けずにいて更に焦る。

 また攻撃が来て喰らった。横っ腹に植物が槍の様に掠り、痛みでもだえるヒマも無く、あの言葉の洪水が襲い掛かって来る。


「また来た汚いあっち行け見るんじゃねぇお前なんか売って近寄るなどうせ消えたって誰も二度と来るな」


 他にも声が聞こえたのに、何故かその言葉がやたら大きく聞こえた。そしてその声が、過去にオレが実際に言われたものだと思い出すと、攻撃を受けていないのに声が聞こえた気がした。


「ひどいよ…あんなになぐって、わたしのこともそんなふうにするの?」

「こわいこわいこわいこわいこわいこわい」

「あくとうのばけもの」


 気づいたら逃げていた。痛む場所に手を当て、見えない何かから遠ざかる為に足を引きずりつつも走った。おかげで『ヒト型』から距離が離れ、攻撃が止んだ。本当に植物の反応だ。おかげで安心した。

 フと思った。全てのヒトが植物だったら良かったな、と。植物ならば手を出さない、足でヒトを蹴らない、そもそも言葉を発さないから罵られる事も無い。顔も無いから見たくない表情を見る事も、目を向けられる事も無いな、と。

 実を言うと、この考えは過去、放浪していた時も考えていた事だ。親の顔など覚えているワケも無く、まともに育てられる事もそもそも食べさせてもらう事さえ無い毎日にうんざりして、仲の良さそうな家族の姿なんて、全てウソか幻に過ぎないとさえ思っていた。

 実際、本当に幸せなヒトだっているんだろう。だが、自分自身の背景を考えたら、それらを肯定する余裕なんて無いし、夢を見るなんて、バカにしか出来ない事だと決めつけていた。

 ヒトの人生は半分が不幸で、もう半分は幸福である。だから、例え今が不幸でもいつか幸福が訪れる。何て言葉は誰が言ったか。それも誰かおめでたいヒトが考えたデタラメではないのか?

 そもそも、幸福や不幸とは、感じて分かるものなのか?実際に感じたとして、コレが幸福だ、コレが不幸だと判断出来るものなのか?

 そおそも、オレの幸福って何だ?今そんな事を考えている場合じゃないと思っていても、今まで考えなかった事ばかりが何故か頭に中を占める。

 放浪していた時やあの孤児院での出来事が不幸だとしたら、オレの幸福は何か。やっぱり無いのでは無いか?だとしたらヒドい人生だ。考えるだけで生きる気力を失う。

 …そういえば、なんで今もオレは生きているのか。オレがこんな状態に、こんな状況になるまで生きていた理由。

 思い出したのは、あの過酷な降雪の土地を帰還中、気分が沈んでいる最中のあの出会いだった。

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