36話 成り行きで昔話
それは、本当に遠い昔の事だ。
遥か昔の事、既に世界には数多の種族、生物が存在した。
それらは互いに支え合い、共存して生きてきた。しかし、永く時間が経ったある日、違う種族同士で諍いが起こった。ほんの小さなその争いは、いつしか他者へと広がり、次第に争いは大きなっていき、遂には互いの命を奪い合う『戦争』にまでになった。
戦争は争いを生んだ当人だけではない。関係の無い者や弱いヒトや動物も巻き込み、多くの生き物の命を奪っていった。
そうした争いが何故起こったか、それはヒトの心を操る『マオウ』が『出現』したからだ。マオウは多くのヒトの心の中の『負の感情』を高ぶらせ、穏やかな性質を持つ者まで攻撃的な者に変えてしまう恐ろしい存在と言われ、マオウの『出現』に人々は絶体絶命の状況に追い込まれた。
そんなある日、ヒトの中にマオウと相対出来る存在が『出現』した。人々はその存在を『ユウシャ』と称し、ユウシャに世界の行く末を託した。
この話の結末は知っているな?そう、今の私たちの現状がそうだ。マオウはユウシャによって倒され、世界は平和になった、ってな。
だが、この話の真実はそんな良いものじゃない。そもそもマオウが出現して世界は争いが起きた、とされているが、それこそが間違いだ。
逆だ。世界に争いが起きたから、マオウは『出現』したんだ。
世界には数多くの種族が存在し、それぞれは個々の強い意思を持っている。故に、互いの意思の齟齬が起き、そうした意思がぶつかり合って争いは起きてしまう。それがただ拡散して世界規模へと広がった。それだけなんだよ。
そして『マオウ』、これは人物を指す名称でも肩書でもなんでも無い。『マオウ』とは『現象』だ。ある『存在』が人々の『想い』を汲み取り、現実の物となった災害を指す言葉だ。
戦争が激化し、幾人もの命が散っていく中、突如『見えない何か』に人々が襲われ始めた。更に、戦いに参加していない非戦闘員までも凶暴化し、命の奪い合いが始まった。これが戦争が激しくなった一連だ。
そして人々の『感情』や『想い』を汲み取り、現実の物へと変えたその存在こそが、今回の異変の核だ。
それは、ヒトが生まれるまえから存在していたとされる。大地深くまで根付き、世界を支え、その根から人々の『想い』と汲み取り、叶える力を持っていた。
最初こそ、誰かを助けたい、家族を守りたい、といったささやかな願いだったのだろう。
次第にヒトが増えていき、願いは欲深いものへと変え、結果として『他者に滅び』なんて願いが生まれてしまった。それも、数多くのな。
当然、その存在は叶えたさ。そして実現した。それが戦争中に起きた最悪の異変の真相だ。
結局は、ヒトが争いを始めて、異変もヒトが原因で、何から何までヒトが起こした事。ヒトそのものが背負う責任とでも言うか。
だが、それでも世界を救わねばならない。私達が生きてきた土地、環境全てを。そして、誰にも代えがたい『あの子』の為にも、救ってやらねばならない。




