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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第1章 アサガオとシュロ
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30話 再び山道で争闘

 オレは自分が出来る事は可能の限り取り組む。


 山の結界をどうにかすべく、オレとアサガオ、カナイの二人と一匹はクロッカスの下に訪れた。その最中に会ったレンは、洞窟の件が片付いたという事を報告するため本部の方に戻ると、オレらと別れた。自分の元上司だったクロッカスを散々殴る蹴るの暴行を行った後で、少しばかり表情が晴れやかになっていた気がした。


「じゃあなアサガオ。元気でやれよ?後シュロも。」


 アサガオとオレとの対応の差は相変わらずだし、レンの方はもう気にする必要は無いな。オレらも報告の為に領主のカダフスの下へと訪れた。本当はそれらはカナイに全て任せたかったが、結局無理やり連れて来させられた。


「洞窟の小鬼を一定数討伐、クロッカス殿も無事…うん、無事?だったのだな。」

「気を遣わなくても良いぞ。」


 カダフスもクロッカスの悪癖は知っているし、レンとの関係性も理解しているから、複雑な心境が表情に出ていたが、こうしてオレらが戻って来た事から、大丈夫と判断したのだろう。洞窟の方も結界をクロッカスが張り直し強化したという事で一応無事として処理する事にした様だ。


「解決してすぐ、色々と事後処理がある中で悪いが、こちらはクロッカスを連れてすぐに戻らねばならない。」

「あぁ、後の事は私が責任を持とう。カナイ、そしてシュロも、セヴァティア殿の事は頼んだぞ。」


 アサガオも達者でな、とオレらと挨拶を交わし、カダフスともここで別れて屋敷を後にした。

 クロッカスの方は既にカダフスとの対面は済ませており、外で準備して待っていた。あちこち傷を治療した跡が見られるが、大丈夫そうだ。


「さて、このまま出立して良いんだな?」

「あぁ、良いぞ!しかし、西の方に行くのも久しぶりだな。あぁそう言えば、校長先生はお元気かな?あと道具屋の娘さんは達者だったかな?」


 校長やむらの女性らについて聞かれたが、カナイもオレも無視して行くぞと声を出して進みだした。アサガオもオレらの後を一生懸命に着いて歩き出した。

 クロッカスは話題を無視されたのはお構いなしに、道中ずっとベラベラと話を続け、それをカナイが受け流しつつ関所を目指した。


 関所を超え、村に一度より英気を養い、山へと向かった。その道中、イヌやらウマ、シカが襲い掛かるトラブルが遭ったが、土地守が一人、一匹といれば、そんな事は簡単にいなされ何事も無かったの様に進んだ。

 とは言え、無害であるはずの動物がヒトを襲うという事は当然無視出来ない事態だ。まさか、巨体動物や洞窟小鬼に起きた異変が他の動物にまで影響しだしたのだろうか。


「うん…レンが言ってたっていう説は合ってるとして、その元凶もどうやら相手を選ばなくなってきたのかもね。」

「それは力を奪う過程をオレらに妨害されたと、相手が認知しだしたって事か?」


 今まで見た中で一番深刻そうな表情をした土地守に一人と一匹は歩きながら今までの事を話し合い、考えをまとめていた。一方の表情は面で見えないが、そういう表情をしていると感じさせられた。そしてその話し合いは悪い方向に進んでいるという結果に至った。

 元凶は力を得るために、力を持った者にとりつき、力を蓄えていた。だが、その行為が突然自分の意思とは関係なく中断される。それも何度もだ。そうなれば、相手が意識を持って行っていたとなれば、当然妨害されていると気づく。そして、まだ十分に力を蓄えてないのであれば、事を急いて得当たり次第に力を狙う、というものだ。

 確かに、そうなればさっきの様に無害な動物まで変貌し、その被害は周囲に及ぶ。それが広がれば世間は混乱に陥るのは間違いない。もう時間を掛ける余裕は無い。

 そう考えた土地守達は速足となり、山の中腹にある瞑想の場へと急いだ。当然オレも後に続き、遅れぬ様駆けた。アサガオも負けじと走り、オレらの後にしっかりと着いて来た。


 山道に差し掛かると、道中は以前の時と比べて危険さは増した。以前襲い掛かってきた石小僧は再び群れを成して襲い掛かり、山に棲む動物や鳥もオレらは通りかかるだけでこちらに向かって来る。準備をしておいたとはいえ、コレには結構苦戦した。

 場所が場所なだけに、足場が狭く、下手に動けばこっちが崖から落ちかねない。なのだが、そこはやはり土地守だ。オレが苦戦した鳥相手もなんのその。

 クロッカスは魔法使いだが、魔法を使わずとも一応は戦えるらしく、向かって来た相手を受け流す、掴んで勢いを利用し投げ伏せるなど、体術を駆使して対抗した。これだけ見せて、自分は接近戦は弱いと言うんだから、これはレンの心境も複雑だろうな。現に言動にあれだけ切れていたし。

 カナイの方も跳んで跳ねたり、時に蹴ったり噛んだりし動物共を牽制しその場を治めていった。やっぱり最初からオレら守仕ではなく、土地守が事態を治めれば良いのでは?という疑問の声はやはりいつも通り流されるのだろう、腑に落ちない気持ちだが、今は仕舞って先を土地守達と共に先を進んだ。


 そんなこんなで、やっと瞑想の場の前まで来た。以前来た時と同様、結界の魔法が張られ、先には進めそうにない。妖精の目で見ても、以前と変わらず滅茶苦茶な術識が折り重なり、解除の魔法を使っても簡単には解けそうにない。そもそもオレの知る解除の魔法が効くかも怪しい。

 その結界魔法にクロッカスは近づき、撫でる様に結界の表面に手を付け、凝視している。面のせいで顔は見れないが、雰囲気は張り詰めており、とても悪癖を持っただらしない土地守と同一人物とは思えない。レンもこの姿を見れば少しは感心…しないと思った。何故か確信出来た。


「うん、間違いなくセヴァティアが張ったものだね。しかし、相変わらず無茶な術式の組み方をするなぁ。下手したら周囲の魔法の力を引っ張って、強い反動を起こしかねないよ。」


 オレが既に分かっている事を、クロッカスが態々口にし感想を言った。魔法を分析し、どこか感心した様な、呆れたような声色をして結界の方を向き直した。セヴァティアの事は土地守全てが承知でいる事で、どんな事にも無茶をし、ソレを押し通すという癖をもっているのももちろん誰もが知っている。オレもだ。

 心境を口に出しつつ、手は結界魔法の方に向き、何か絡まったものを解く様に手をあちこちに動かし、時折魔法の力を込めているのが妖精の目で見て分かった。その最中、カナイは黙って見ていた。アサガオはヒマそうにオレの周囲を歩き回ったり、土を蹴ったりして遊んでいた。

 少しすると、突如結界魔法が光り、ヒビは入る音がどこからか聞こえた。そしてそのヒビ割れる音が少しの間続くと、次に大きく弾ける音が響いた。ヒビ割れる音はもうしないし、どこを見ても物理的に何かが壊れた様子は無い。ならばともう一度妖精の目で結界の方を見ると、張ってあった結界は影の形も無くなり、何の障害物の無い道が続いていた。

 先ほどまであった結界魔法と向き合っていたクロッカスは、長い溜息を吐いた後、体をパキパキと鳴らしつつオレらの方に振り返った。


「終わったよ。結界が解けた反動でこの辺りで魔法は暫く使えないけど、体を動かす分は何ともないはずだよ。」


 洞窟で対面した時は薄汚れていた赤毛は、汚れを落とし日に当たって橙色に輝いていた。本当にこうして見ると、レンと対面していた、見るからにダメなヤツだとわかる人相のヒトとは思えない。それだけクロッカスの魔法の腕は評価を覆す代物だなのだろう。

 さて。今先に進めれる様になったのなら、早く先に進まねばならない。今までの事をセヴァティア本人にぶつけたくて仕方がない。

 結界が解けて、見た目は然程変化は無い様に見えるが、明らかに雰囲気がさっきと違う。今まで蓋をして塞いでいたものが外に漏れ出てきた様な、イヤな感じだ。

 カナイとクロッカスもオレの感じたイヤなものを同様に感じたらしく、うわぁと声に出したり、苦そうな表情をして先を見つめた。行きたくないという気持ちが湧いてきたが、行かなくてはオレが決めた目標は達成出来ない。少し躊躇したが足を先に向けて歩き出した。

 アサガオは怖がりはしつつも先が気になって仕方ない様だ。洞窟の時とは違い恐怖よりも好奇心が勝っているのだろう。カナイらが歩を進めるのと同時にオレも足を踏み入れた。

 鬱蒼と木が生えて先が良く見えない。何かがいきなり出て来ても可笑しくない、そんな不穏な空気が辺りを漂う。

 少し進んで音が聞こえた、渇いた物が擦れる様な、葉が沢山ざわめく音。何かが木々の間を動いているのだろうか?目を凝らしても暗くて見えない。

 カナイも辺りを見渡し警戒している。クロッカスも同様だ。

 以前にも話したがセヴァティアが結界を張っていたのは、ここにいる何かを閉じ込めるためか?まだ確証が持てない。一体何がいるのか、この目で確かめなくてはいけない。

 目を凝らした先、見えたのは木だった。そこいらにも生えているのだから当然なのだが、目に入った一本の木が異常だった。

 まず周りの木はどれも見た目が同じで、枝が細く小さな葉っぱが覆い茂った、地上の木と比べると背の低い木なのだが、今見つけた木は周りの木と比べて幹や枝は太く色が黒い黒橡くろつるばみ色で、何より葉が一枚も生えておらずまるで枯れ木の様だ。だからか一目見て他の木と明らかに違うのがわかる。

 そして更に異様なのが、その木の枝が微かに動いているという事だ。

 最初は何かが木の姿に擬態でもしているのかと思ったが、別の生き物という感じではない。確かに植物の木が動物の様に動いているのだと正直自分の目を疑った。

 そしてその木が少しして動きを止めたのを目にした瞬間、ヤバい気がした。だからカナイらがいる方へと戻るように飛び退いた。すると、オレがさっきまで立っていた場所から勢いよく何かが出てきた。

 ソレは木の根だ。異様な木の質感そのままだから同じ木のものだと分かった。

 あの異様な木が根を地面から生やし、オレに襲い掛かってきた。そして直感した。この木が結界で封じ込まれていたものであり、今までオレらを襲ってきた動物共を操ったであろう元凶と関係がある、もしくは元凶その物かもしれないと。

 今まで見たあの枯れた木の根が、この木と質感がよく見たら似ていたからだ。カナイらも気付き、戦闘する体勢になりアサガオを後ろに隠した。


「シュロ、下手に動いたり近づいたりするなよ。もしかしたらお前が『あれ』にとりつかれ、操られるという可能性だってあるんだからな。」


 動くな、近づくなとは、カナイは無茶な要求をしてくる。今動かなければ戦闘どころか対処も出来ないし、近づかなければ攻撃が通らない。弓矢や魔法を使って離れて攻撃、という手段があるが、そもそも今相手にしているヤツに攻撃したとして、ヤツに行動限界が訪れるのか?ダメだ、わからない事が圧倒的に多い。だから今は動かない、動けない状態だ。

 そうして考えている内に動く木は本格的に動き出した。ヘビの様にうねらせた枝を勢いよくこちらに伸ばしてきた。先が尖って槍でも向かって来たみたいだ。もちろんそんな危ないものは避けて、横から剣で伸びた枝を叩き切った。切れて地面に落ちた枝は動く事無く見たままの斬られた木の枝の状態になったが、本体の方は斬られた事で危機感を察した動物の様に退け、再び枝をこちらに伸ばしてきた。それも今度は一本だけではなく三本同時。さすがのオレでも三本同時はキツかったが、なんとか伸びた枝をいなしつつ、躱してていき全て剣で切っていった。

 いくら枝を切っても本体が無事なら切りがない。だがその本体も伸びる枝にジャマされ近づけない。どうするかと枝を躱しつつ悩んでいると、背後からカナイの声がした。


「そのまま『そいつ』の相手をしていろ!」


 言った意味を理解した時には、カナイは既にオレの背後からすぐ横に、それもすり抜けて枝と枝の間を潜り抜け本体へと接近した。直ぐ傍までキツネが近づいた事に、木も気付いたのか、オレに抜けていた一本を操りカナイの方へと向け直したが、それにカナイは言い放った。


「遅い。」


 どこからか取り出した片手剣を木の本体へと突き立て、何か詠唱らしい言葉を囁くと、その囁いた言葉に木が反応する様に気は徐々に生気を失い枯れて動かなくなった。

 木が完全に動かなくなった事を確認すると、剣を突き立てたソイツは片手剣を木から抜き、剣を持った腕を下ろしてオレの方に向き直った。

 いつの間にか着ていた革製の上着を羽織り、山吹茶色の長髪をなびかせて狩人の装束を着た女が立っていた。草色の目をしたその姿を見て、クロッカスとアサガオは揃って歓声を上げた。


「すまんな遅れて。久々の『この姿』だから、ちょっと時間が掛かってしまった。」

「いや最初からその姿で突撃したら良かっただろ。」

「そう言うなって。キツネの姿だって慣れると山道で動きやすかったし。」


 ふざけた様子のヒトの姿をしたカナイだが、辺りの警戒は怠ってはいないらしく、目が常に周囲へと向けられていた。

 久々に見たがカナイは元からヒトだ。普段は動物であるキツネの姿を成しているが、ワケがあってヒトではなく動物の姿に変化しているとか。

 その理由は当人はまったく口にしないためオレが知らないが、多分そこまで深刻な理由ではないだろう。


「さすがにキツネの姿のままじゃ、対処が難しくなったな。

 …やはり『侵行しんこう』は進んでいたか。」


 カナイが何かを言っているのが聞こえたが、最後辺りで声を潜めてよく聞こえなかった。

 わざわざ指摘する気にもなれず、今は先に進む事が優先だったからオレからは何も言わずにいた。しかし何故か気にはなり心に留めておく事にした。

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