表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第1章 アサガオとシュロ
26/150

26話 岩洞で行進

 まちから洞窟の距離は、離れてはいうものの歩いて数分でその入り口が見えてくる程だ。

 凶暴と言われる洞窟小鬼が棲んでいるから、まちからもっと離れた距離にあるべきだが、そもそもこの洞窟から流れて来る水がまちのすぐ傍を流れる川と繋がっており、謂わばこの洞窟が川に水を流している注ぎ口の様なもの。

 つまりこの洞窟そのものもまちにとって生活する上では欠かせない場所となっている。そこに後から棲みついたのが洞窟小鬼なのだ。だから今更まちを離れる事も、洞窟を封鎖するもの難しい。

 そこに現れたのは土地守のクロッカス。洞窟を守りつつ、洞窟小鬼が洞窟を出てまちに被害が出ない様に瞑想の場を設けて結界を張ったというのが経緯だ。

 本来であれば、洞窟小鬼を討伐してしまうのが一番の解決策だが、そこには土地守として、どうしても洞窟小鬼に手出し出来ない理由があるのだが、どういった理由かの説明は今は割愛。現状は洞窟を守る事でまちを守るという形式になっていた。


 洞窟の前、茂みを盾にし入り口を様子を見ている最中で今は軽く食事をしていた。カナイらは干し肉を分けて噛りいき、オレは干したイモを食っていた。妖精族は『自然の仲間』である動物の命を奪う事は出来ないし、食すことも出来ない。だからオレ一人だけ皆とは違う物を食べていた。


「さて?お前たち、戦闘前の食事は済ませたな。」

「一人まだ済ませてないヤツがいるが。」


 カナイに言われて、オレは干し肉を今も齧っている最中のアサガオを見ながら呟いた。さすがに子どもの歯では硬い干し肉は噛み切る事が出来ず、小さく分けたとは言え、未だくちゃくちゃと干し肉に噛みついている最中だった。それでもアサガオは干し肉を噛み切れない事に不満を感じていないらしく、むしろそれ自体を楽しんでいる様な笑みを浮かべてさえいた。本当に幸せそうなヤツだ。

 しかし、そんなアサガオの食事が終わるのを待っているワケにはいかない。小さいからそのまま口に入れてしまえと言って、口を大きく広げて口の中に残りの干し肉を押し込み、誤ってノドを詰まらせないか確認しつつ、カナイとついでにレンとで洞窟の方を見た。


「見張りは見えないが、警戒を怠るなよ?洞窟小鬼は、森の小鬼よりも残虐且つ狡猾こうかつだからな。」

「それくらい、散々教えられて知ってる。」

「土地守さまは相変わらずの心配性だなぁ?」


 オレは悪態を、レンは呆れた様な表情で答え、カナイに対して敬意の影も形も無い態度を見せた。それにカナイはやはり納得しないと思い、それは表情にも出てはいたが、オレとレンはそれを無視して洞窟への侵入に関して話し出した。カナイは突然自分を蚊帳の外に出されて焦ったが構わず話を進める。


「オレは殿しんがり、お前が前へ出て先導しろ。」

「そんな立派な鎧を着た騎士サマが、前じゃなくて後ろかよ。」

「そちゃあお前、物陰に隠れた小鬼が後ろから襲ってくる恐れがあるからな。オレが後ろから見守ってやるって言ってるんだよ。」


 よくもまぁいけしゃあしゃあと言いのけたものだ。しかし、正直前に出るのは仕方ないか。背はレンと比べるとオレの方が小さいし、動きやすいヤツが前に出て探る方がやりやすいか。理由は理解しているが、ソレをレンに指示されてやるのが気に食わない。結局はオレの好みの問題ってだけだ。だからやるしかない。


「ところで、アサガオはこのまま連れていくんだな?」

「あぁ、安全な所に置いてったってすぐ後追いかけて来るからな。言っても聞かねぇし。」


 アサガオの同行に関してレンに言われ、既に用意していたかの様に口からサラっと出た言葉をレンに聞かせた。オレらが話している最中も干し肉を齧っているアサガオを見て、レンは不思議と納得した様子だった。

 結局隊列は前から順にオレ、カナイにアサガオ、そしてレン、となった。話も終わり、それぞれ洞窟への侵入の位置についた。カナイは自分だけ話に加われなかった事に腹を立ててはいるものの、内容に不満が無いため、黙って共に位置に着く。

 そしてそのまま合図らしい合図も無いまま洞窟へと向かって駆けた。まちにまで被害が出た話を聞いていたが、洞窟の入り口付近には今の所洞窟小鬼の気配すら無い。

 身を隠しつつ首だけを動かし、洞窟の中を伺った。さすがに入り口からでは奥の様子はわからないが、このまま入っても問題は無さそうだ。レンの方もそう判断したのか、オレが動くよりも先に洞窟へと足を踏み入れた。


「オイ!オレが前じゃなかったのかよ。」


 声を潜めつつレンに向かって意見を言ったが、気にする素振りも無く念にためだと言い返された。


「そう思ってるなら、俺よりも速く動けよ。それと、物陰だらけだからな。気を付けてくれよ。」


 わかっていると思いつつ、オレも洞窟に入り、レンの前へと出て先を進んだ。その後にカナイがアサガオを連れて洞窟へと入り、辺りを見渡しながらレンも後に続いた。

 持っていた松明に早々に火を点け、物陰になっている場所を粗方照らして見た。レンもオレとは反対の方を確認しつつ、再び後ろに下がり後方を警戒する事に戻った。

 オレらが今通っている洞窟の通路は、そこそこ広いが歩いている場所自体の幅は狭い。すぐ隣は川になっており、この水がまちの傍を流れる川へと流れて行く水路になっている。その自然の水路は幅も深さも結構ある。足をとられて落ちないよう、足元に目線を落としつつ前方を見ながら進んだ。

 洞窟小鬼が棲む洞窟である事を抜きにすれば、水の流れる音が耳に心地よく、涼しく程よい居心地の場所だ。気を緩む事を許さない状況であるのに、オレらが進むその場所が逆に警戒心を持たせない不思議な雰囲気をしていた。それはどこか森の中の小川にも似ていた。


「気配は確かにするが、こちらに向かっては来ないみたいだな。」

「いきなり外からヒトが近づいてきて、警戒してるんだろう。まだそこまで理性は失ってはいないのかね。」


 未だ小鬼の姿が見えなく、待ち伏せでもしているのかと思っていたから拍子抜けしたが、さすがにまだ警戒を解くワケにはいかない。カナイの言う通り警戒しているのは考えられるまちを襲っておいて、こっちが近づいた途端大人しくなるとは、どうにも可笑しな動きをする。


「お前らの話から察するに、例の暴走する奴ってのは群れの中でも力が強い方、大将格の奴らだったんだろう?それじゃあ、今可笑しくなっているのは洞窟小鬼のボスの方で、他は影響を受けただけの下っ端って事になるのか。」

「あぁ。まちを襲ったってのも、その可笑しくなったボスの命令で動いたと考えられるが、問題の洞窟の中がこうも静かだと洞窟小鬼がいるのか疑っちまうな。」


 洞窟小鬼がカナイの言った通りの危険な種族というのは知ってはいるが、詳しい生態はわからない事の方が多い。群れを成す事も知ってはいるが、その群れの中でそれぞれどういった動きをするのかはオレの知識の圏外だ。洞窟小鬼の相手なんて、滅多にしないからな。

 レンと互いに意見を言いつつ、先に進むと開けた場所に出た。真ん中には森でも見た広い舞台の様な石造りの台座が鎮座しており、ここがクロッカスの瞑想の場であるとわかった。

 瞑想の場の周りには先ほどの水路へと流れる水が貯まっており、ここがどこか湖の中にある浮島の様に思えた。それによって土地守の瞑想の場という事実と合わさり、更に神秘性を増した。

 カナイは瞑想の場へと駆け寄ると、真ん中に立ち魔法陣の様な光る円状の模様が浮かび上がり、カナイがソレを手でいじり何かを視ている素振りを見せると、粗方見た後納得した様子も見せた。


「あぁ、結界の何か所かに穴が生じている。小鬼共はここから抜け出たんだろうな。」


 判明した事をカナイは口にしながら、更に魔法陣の様なものをいじる、何か手を加えている様だった。守仕のオレでも、土地守の事はあまり知らないが、カナイが何かしら張られている結界に補強を行っている事を察し、黙ってその様子を見ていた。

 フと視界に入ったレンの表情が、一瞬だけだが舌打ちでもしてそうな悔しそうな、何か忌々しげな目でどこか遠く見ている様な表情をしていたのが目に入ったが、レンの方に向き直るとレンの表情はいつもの見ている方がムカついてくる笑みに変わっていた。一体何なのかと考える暇は、どうやら無いらしい。ソレはこの洞窟に入ってから知っている事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ