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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第1章 アサガオとシュロ
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22話 古い橋で走る

 大分川に沿って歩き、川を下って行った。そして今は周りを木に囲われた状態にいる。

 進んだ先で木が密集して生えていたため迂回し、遠回りをしていき、結果として川は林の奥へと隠れ、現時点で川を見つけるためにその林の中を歩いている最中だ。

 街道としての役割をなくしたというだけあって辺りに生える草は腰程の高さまで伸びている。歩く度に草を踏む渇いた音が響く。周りはカナイの森よりも暗く、影が濃く見える。


「この辺りまで来る事も無くなったが、変わっていないな。『あの時代』では、こういった場所も貴重な資源の宝庫だったから、今目にしていると、考え深いよ。」

「…へぇ、そうかい。」


 カナイの話に適当に相づちを打つと、カナイに睨まれた。カナイが言う『あの時代』とは、千年前の『戦争時代』の事を指す。カナイが昔の話をすると、いつも『戦争時代』の話になる。

 余程その時代に思い入れがあるのか、正直聞き手としては飽きがきて返事に困るが、カナイの話は続いた。


「『あの時代』ではありとあらゆるものが武器として使われたんだ。鉄はもちろんだが、当然木材も消耗品として大量に消費された。物だけじゃなく、沢山の『ヒト』もこき使われ、その光景は酷いものだったという。」


 大抵の内容は以前話した事のある話ばかりで、カナイの事を一時期記憶が喪失したかボケてきたかと疑った。言ったら怒られたから口に出す事は止めた。

 アサガオは理解しているかは分からないが、カナイの話に律儀に反応して見せていた。

 そんなやり取りをして少し経った頃、耳をよくすました。遠くから生き物の気配が辛うじて感じ取れたが、カナイの森で見る様な無害な動物の気配ではなく明らかにコチラに敵意を向ける生き物の気配は肌にヒシヒシと感じる。

 アサガオもソレを感じたらしく、怯えていつかの様にオレの足にしがみついている状態だ。

 今戦闘になったら木の枝が邪魔で不利な状況だが、ソイツらはカナイという土地守の存在を警戒してか、今はこちらに襲い掛かって来る様子は見られない。

 カナイも口を閉ざして辺りを見渡して警戒している。相手が襲って来ないのであればそのままでいてくれと、オレは心の中で念じて先を進んだ。

 先に進むと先の方から水の音が聞こえてきた。やっと川辺に戻れたと一息ついた。ここまでヒトの手が入らなくなって長い時間が経ったとはいえ、おかげで結構な回り道をしてしまった。

 とにかく、川が見つかったとなれば、橋はすぐに見つかるだろう。

 カナイの言っていた通り、速かった川の流れは確かにこの辺りでは緩やかで、なんなら子どもが川遊びでもしてそうな程だ。ただ深さだけは穏やかとは言えず、水が透き通っているのに底はまったく見えない。相当の深さなんだろう。アサガオがうっかり川に近づいて、結果足を滑らせて川に落ちでもしたら大変だ。

 フとオレは最近の騒動やら忙しさやらで今まで頭の隅追いやっていた事を思い切って今目の前にいるこの土地守に聞く事にした。


「しかしよ、この前森に出たオオカミと言い、今回の橋を壊した川の何かと言い、どうも最近可笑しなヤツらが出て来ては暴れてる。そういうヤツらを出さないための土地守なんじゃねぇか?」


 学校での魔法傀儡の暴走は学校側の不手際として片付くが、今回の事を含めて3件の暴走事故は、事故と言うには違和感を感じる。山でも土地守の所在不明の時に巨体の鳥は現れる、というのは偶然が過ぎる。


「もしかしてだが。土地守の力が弱くなってる、とかないか?」


 今までの事を考えて真っ先に思った懸念を口にした。確かに今までだって騒ぎやら異変は起きたが、それは本当に些細な事だ。オレが一人で片付いた事も多いし、どれも原因は判明したし再発する事も無かった。

 そして今回の原因は、オレが目にした枯れた木の根だが、それだって崩れて灰の様になり、何時何処でそれが発生したか、詳細はわからないままだ。それとなくカナイにも聞いたが、カナイがその問いに答える事は無く濁された。

 わからないから答えられない、ならしょうがないが、その時一瞬見せたカナイの表情はわからないという雰囲気ではなかった。オレの勘だが、カナイはわかっていて答えない、気がする。


「一体何が起きている?知っているならサッサと答えろよ。」


 カナイは黙っていた。一瞬だが目を逸らしたのが見えた。

 やはりどこか体調を悪くしているとか、力が弱まっているからそれを悟られないため、とかか?そう考えてはみたものの、それは考えられない。カナイにそんな気遣いは出来ないハズ。


「失礼だなお前!」


 心を読むな。土地守自体に何があって、結局この土地で何か起きているんだ?


「…今は話し込んでいる場合じゃない。ひと段落したら話す。」


 知っているらしい。この様子からしれいつもの冗談というオチは無さそうだ。いつだったか勿体ぶっていたと思ったら結果、大したことでは無かった事柄が多々あったが、ここまで固い表情をしているのは初めてだ。

 今はカナイの言う事を信用しておこう。

 そうしてカナイと話している内に目的の橋が見つかった。辛うじて以前人が通っていた名残であろう道が草に隠れていたが見える。その地面を踏みしめてジャリっと音が鳴った。

 橋は確かに古めかしく、新しい方の石橋と比べてこちらは木製。草やらこけが生えて正直この上に乗って渡るのを躊躇ためらうが、試しに足を一歩乗せた。怪しい音が響いたが、今の所大丈夫そうだ。

 アサガオはオレは橋に足を踏み入れたのを見て、同じ様に足を橋に乗せた。軋む音が楽しいのか、アサガオは橋に全体重を乗せて足踏みを繰り返し、遊んでいる様だ。さすがに遊ばせている場合ではないので止めた。

 途端、関所の橋で感じた気配がした。すぐさまアサガオを抱き上げ橋から離れた。カナイも気配を感じたらしく、オレよりも先に動き、近づいてきた直後に出てきたソイツに何か攻撃らしき光をソイツにぶつけ、弾いてソイツの動きを止めてから跳ぶ様に離れていた。


「よし。アサガオに怪我はないな。」

「心配するのそこだけかよ。まぁ良いが。」


 カナイの台詞につい反応してしまったが、今は目の前のコイツだ。水飛沫と言うか最早それは波となってソイツは出てきた。

 ソイツはとにかくデカい。だが今まで襲ってきたヤツらのデカさと比べたら小さい方だ。今まで見た魚と比べてもデカい。毛は生えておらず耳も見えない。目らしきものは辛うじて見えた。体は黒く青緑色の凹凸おうとつの無い大きな岩かの様。微かに水面に魚のヒレらしき影が見えた。


「コイツは川クジラか。またえらいもんだ。」


 代わりにカナイが情報を出したが、川クジラなる生き物の名前を聞いても情報が乏しいから生態の検討がつかない。

 気配からしてこの川クジラが橋を壊した犯人だというのは分かるが、当然の出現に頭が追いつかない。ただそんな混乱状態でもわかったのは、このまま行くとまた橋を壊される、という可能性だった。

 何せこの川クジラという生き物、正しく今までのヤツらと同様暴走している。見るからに見境無しに突っ込んでいる様子だ。

 カナイが魔法か何かを使って防いだおかげで一瞬だが動きを止めたが、それも一時的だろう。また動きだしてこちらに突っ込んでくるか、橋の方にまた突っ込んで行きそうだ。

 どちらにしろオレらの状況は最悪だ。あの巨体で水の中を動かれたら太刀打ち出来ない。


「さすがのシュロでも、アイツ相手は無理か?」

「姿を見せているが水中の戦闘訓練は未経験だからな。アンタならどうする。」


 目配せしつつカナイに話し掛け、次の行動を聞いた。そのオレの問いに対しての返事か、口角を上げて余裕のある笑みを浮かべてから口を開いた。


「そんなの…アイツに壊される前に橋を渡り切るぞ!」


 言いながら橋に向かって走り出した。駆けだすのを目に捉えて、オレもアサガオを抱え上げ直ぐに走り出した。


「いきなり走んな!ってか倒させねぇのかよ!」

「生憎と私の力は戦闘特化ではないからな!今は向こう岸に渡る事だけ考えろ!」


 確かにそうだ。川クジラが体を揺らすだけで波が立ち、その波だけで木製の橋が壊されても可笑しくない。現に石橋を壊したのもコイツだ。

 だからこそオレ自身が相手にすらならない可能性が高い。ならここは無視して先に進む方が良い。

 ふと、オレに抱きかかえられているアサガオが何やら声を上げて手を伸ばしている。どうやらここに来る前に拾ってポケットに入れてたものがこぼれ落としたらしい。いつもなら拾ってるところだが、残念だが今はそんな場合ではないからアサガオには落ちたものを諦めてもらう他ない。

 そう思っていたら、カナイがアサガオの落しものを見て、急に止まって戻りだした。オレも思わず止まってしまいカナイの方を見た。


「オイ何してんだ!クジラだか何だかが動き出しちまうぞ!」


 怒鳴るオレの声をものともせず、落しものを拾ったカナイは直ぐに戻って来てオレに拾ったものを押し付ける様に渡してきた。


「シュロ!お前火魔法使えるな!?」


 いきなりの問いかけに一瞬戸惑いはしたが、使えると答えた。っと言っても小さい火を起こす程度であまり得意ではない。

 それでも良いとカナイが言い、拾ったものを火の魔法で燃やしつつ川クジラに向かって投げる様に言ってきた。

 そうこうしている内に、カナイの術で止められていた川クジラが徐々に動き出しそうとする。突然のカナイからの要求に困惑を隠せないが、仕方なしと言われた事をするため魔法の詠唱をする。


「微かな火種、弾け!」


 再び走り出したカナイに合わせてオレも走り出し、詠唱と同時に親指と人差し指を擦り合わせ、合わせた所に火が点った。

 川クジラもこちらに向かって再び動きだした。このまま突進でもして橋を壊そうとしているのは明白だ。走る最中カナイが合図をこちらに送った。すぐさまカナイに言われた通りにものに火を点けて燃やし、熱で手に火傷を負う前にすぐ川クジラに向かって燃えるソレを投げた。

 今まさに橋を渡っているオレらと、川に突撃する寸前の川クジラという光景が一瞬止まった様に感じた。

 それもオレが投げた燃える何かが当たるところで現象が起きた。突如思いもよらない程激しく火花が散り、弾ける音を何回も響かせ、川クジラの眼前で見えたソレは完全に爆発そのものだった。急には止まる事の出来なかった川クジラは、突然起きたその爆発をかわす事も出来ず、巻き込まれて再び動きを止めた。

 川クジラの突進攻撃を受ける事も無く、無事橋を渡り切ったオレらは足を止め、川クジラのいる川の方を振り返った。カナイはその光景に出来上がって満足気ではあるが、オレは状況の把握が出来ず今不満が顔に出ているだろう。抱えたままだった

 アサガオを下ろし、カナイに説明を求めた。


「結局カナイが拾った、もといアサが落としたものは何だったんだ?」


 オレがアサガオの落しものを見たのは一瞬だったから、何を持っていたのかわかっていない。だが、カナイは一目でソレが何かわかっていた様に見えた。しかも、ソレであの大きな川の生物を退けてしまう威力があるものだったのも初めて知った。


「あぁ、あれはただの木の実さ。見た目は。」


 わかりやすく含みのある言い方をして、オレを試しているかの様に聞こえて少しイラついた。だから結局何だと声には出さず表情に出す事にした。


「あれはな、実の種の中に油が入ってるんだ。外側は簡単に燃え尽きるし、最終的にあんな風に弾けるんだ。しかもお前に持たせたのは小さいものでも5個位か。それだけあれば火花だってあんなにデカくなるし、火傷だってするさ。」


 まさかあの木の実の中身がそんな危険なものだとは知らなかった。どうやらあの木の実はカナイの森でのみ見つかっており、数は少ないが聞いての通りの危険物なため、持ち出すのも禁止にしており、それは村でも周知の事だと言う。当然の事であると同時に危険なものだから、どの本にも記されていないとか。


「…オレが知らなかったのは。」

「私が伝え忘れていただけだ。」


 胸張って言うな。

 しかもソレも見つけたはのアサガオだ。下手をしたらアサガオが怪我してたかもしれないんだぞ。


「いやいや、基本あの森の中では火気厳禁なワケだし、数が少ないと言っただろ?まさか見つけるとは思わなかったんだ。アサガオは運が良い。」


 呑気に言ってるが、オレへの謝罪が軽く正直オレへの伝達忘れなど色々言いたいが、まずはカナイがしなければいけない事が一つあるだろう。


「しなければいけない事?…あっ!」


 言ってからカナイも気付いた様だ。そう、あの木の実はアサガオが見つけたものだ。

 つまり危険物であれどあの実はアサガオの所有物だったワケだ。そしてソレをオレはカナイに指示で勝手燃やし、なくしていまった。現にアサガオがさっきからオレらを睨み、目を潤ませて睨んでいる。相当ご立腹だ。


「あぁすまんアサガオ!代わりにまちに着いたら食べたい物を食わせてやるから!」


 慌ててアサガオに謝罪をし、それでも許してもらえないらしく、アサガオはそっぽを向いてしまった。オレもカナイと一緒に謝罪した。燃やすよう指示を出したのはカナイだが、実行したのはオレなワケだからな。当然オレも許してもらえそうにない様で、頬を膨らませイヤとしか言わなくなったアサガオに、オレらは手こずらせられる事になる。

 爆発をモロに喰らって気絶している川クジラを背にし、忘れた目的を思い出すまでその状況は続いた。

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