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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第1章 アサガオとシュロ
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17話 山中で遭遇

 少し経って十分休む事も出来たし、そろそろ出立しようと立ち上がる。クーディは相変わらず面倒くさそうな表情で文句でも言っているのか、口からボソボソと小さく声を漏らすながらゆっくりと立ち上がっている。

 アサガオはオレらよりも早く立って既に入り口の前に立っている。落ち着かない様子で扉の前をウロチョロと歩き回り、たまび扉を少し開けて外を見ては閉じたりしてる。更にコチラをチラ見しつつオレらが動くのを待っている状態だ。何か急かされている気がする。クーディもそんな様子のアサガオ相手にさっきまでの気だるさを少し潜ませ、アサガオの頭を乱暴に撫でるなどをして構っている。痛いのがキライなアサガオは、ソレ程痛がっていないしむしろ楽しそうだ。

 装備を見直し、大丈夫だと判断してからクーディに目配せをした。またすぐの気だるげになるも、仕事に関してはやらない選択を選ばないヤツだから準備はオレ同様済ませてあった。ならばと扉に向かい、ドアノブに手を掛け颯爽と開いた。


 途端外のどこか遠くから、何かの生き物の鳴き声らしき甲高い音が聞こえた。ソレを耳にしてオレは開けた扉を閉じかけた。ソレはダメだと正気に戻り踏み止まったが、クーディの方はサッサと諦めた風に小屋の奥へと引き返していた。正気に戻ったオレは咄嗟にクーディの上着の後ろ襟を引っ掴み引き留めた。ぐえっと声を上げるクーディからの非難の目は無視し再び外への出立の決意を固め足を踏み出した。

 外に出て山を見れば、何かイヤな気配が漂ってくるのがわかる。妖精の目で見なくてもソレは認知出来る。クーディもそうらしい。普段から物臭故に誰が近寄っても気にせず態勢も整えずいるアイツがオレと同じように山を見てしかめっ面をしている。オレが見ているのに気づくとオレを睨んで更にしかめっ面を深めた。クーディは自分の顔を見られるのをキラっている。ソレを思い出しオレは直ぐに目を逸らし目的の方へと向けて、さて、と言った。


「セティーがいるとしたら、やっぱ中腹かな。」

「そうだろ。じゃねぇと困るのおれらだろ。」


 ソレもそうだ、とオレとクーディとで納得し合った。聞くと仕事を頼んだクーディの上司である土地守、山守のラサから頼まれた荷物を頼まれ、来る前に事前にラサの方からセヴァティアに宛てて交信魔法で荷物を届けると言う旨を伝えてあるとの事。

だがあの無類の修行好きで考えるよりも動く事を優先するセヴァティアが、荷物が届くのを知っていてジッと待機しているなんて考えにくい。それこそ奇跡だが、こちらとしてはジッとしていてくれないとオレらではセヴァティアには追いつけない。だから大人しく知っている場所で待っていてほしいというのはオレらの願望だ。

 土地守がその土地を守るために力を行使するために瞑想する場、その場所はその土地、土地守によって決まる。森を守る土地守のカナイももちろん瞑想の場を決めて森中の気配を察知したり、危険から守ったりと活用している。そしてセヴァティアも瞑想の場を決めており、その場所がこの山の中腹に位置する所にある。あのセヴァティアが果たして瞑想なんぞをするのか疑問だが、場があるのなら当人が必要としてあるのだろう。多分。

 一応の目的地も定まり、早速山道へと歩を進めた。アサガオはオレらの先頭を歩き、殿しんがりをクーディが余所見をしながらのんびり歩いている。オレとしてはもう少し速度を速めてほしいが、クーディ相手にソレは贅沢だ。もう諦めている。せめて日が暮れない内に終わる事を祈る。


 木々が密集にして生えている道を抜け、山肌の岩壁が露わになった。山道は緩やかではあり先は見えど、それが遠くに続いているのを目にして少し焦燥した。本当になんでこんな場所をセヴァティアは土地守の場にしたのか。

 いや、そもそも土地守が場を選ぶワケではない。場として適した場所がたまたまそこだった、といのが正しい。なので土地守自体は悪くはない。だが相手がセヴァティアだというだけで色々考えてしまう。

歩きながら彼是が頭を過り、ソレが山歩きの疲れによるものか、それとも以前から蓄積している疲れによるものか今のオレには判断出来ない。横目に入ったクーディは相変わらず欠伸をしたり、空かどこかを見たりして何を考えているのか思いつかない表情をして見える。アイツだって色々考えてはいるだろうに。やはり疲れのせいでいらない事ばかり考えてしまっているのか?まだそこまでの距離を歩いてはいないハズだが。どうも腑に落ちない気分だ。

 一方、先頭を歩くアサガオの様子はずっと変わらない。ほんの少しオレらから距離が離れているものの、注意を呼びかける程離れてはいない。たまに立ち止まっては振り返り、オレらの姿を確認してから再び前を見て歩きだす。時には突然しゃがみ足元に落ちてる物を拾ってポケットに入れたりをしている。そして歩くのを再開し楽しげに声を出して何かを口ずさんでいる。ここからじゃよく聞こえないが、どこかで聞いた旋律だが思い出せない。オレよりも離れていて聞こえないハズのクーディは、アサガオに向けて声を上げ、歌っている歌の題名を言った。なんで歌っているのが分かったのか知らないが、何を歌っていたかを当たったからか、アサガオは振り返り嬉しそうに手を叩いた。そんななりとりを見ていたら、先ほどまであれこれ考えてイヤな気分になっていたのが薄れた気がする。

 クーディもアサガオとのやり取りでさっきより表情が明るくなったのがわかる。こういうアサガオとのやり取りはいつもの事だ。なので気にしないし、むしろ少し安堵がある。だが山登り最中なのを思い出し、アサガオとクーディに注意を促し山登りに意識を戻した。クーディはまた面倒くさそうに頭をかき、オレに手を引く様に言って来た。絶対にイヤだ。アサガオは変わらず前を歩く。いつもの事だ。


 そんなこんな山登りは思っていたよりも順調ではあった。が、やはりと言うか危険が付き物なのはさっき言った通りだ。突如岩影の影から小さいものが飛び出してきた。一瞬飛び退いたが、ソレをよく見て拍子抜けした。

 出てきたのは生き物と呼ぶには既存の生物とも違う、無機物とも言えない不可思議な物体だ。目がある。だがとても小さく豆粒程だ。口や鼻は見た限り無い様に見える。それではどうやって呼吸しているのか、ソレはオレも知りたい。手は無い。足はあるが目と同様小さくてただの突起に見える。何よりその見た目はほぼ石だ。カボチャ程の大きな石に目と足があるソレをオレは知っている。


「あぁ、石こぞうか。」

「こんな見た目で『小僧』ってのは理解しがたいがな。」


 『石小僧』は所謂呼称で、正式名は『微元素生物プチ・エレメンタル』という以前遭遇した粘体生物スライムと似た不思議生物のたぐいだ。本来生命を持たない無機物が生物化している、ソレの今回の場合は岩型といったところか。

 ソレがこの山に出るのは知っていたし、見かけても可笑しくは無いワケだが、どうも奇妙な感じがする。

前にいたアサガオはオレらの異変に気づき、走り寄ってから石小僧共の存在に気付いた。そして物珍しそうに石小僧の姿をあちこち見てから一体の石小僧を指で突いた。見た目が小動物に見えたからか、警戒心がまったく無く楽しげに石小僧に触っている。

 そんなアサガオにオレはすぐさま走り寄り、そのまま抱き上げ石小僧から目を離さずアサガオを連れて下がった。アサガオはまだ触りたがって手を伸ばしている。呑気だな。


「はぁー?こいつらが自分から出て来るなんで珍しいなぁ。」


 さっきからクーディがオレの肩越しに出て来た石小僧を見て言った。確かに警戒はしたがコイツら微元素生物は総じてビビりと言うかさっきのオレ同様に警戒心が強く、物陰から姿を現す事はほとんど無い。

 そこまで考えてイヤな予感がした。予感が頭を巡ったとなれば考えられる展開は一つだ。

 周囲を見渡せばいつの間にやら石小僧共の数が明らかに増えており、オレらを囲うようにして集まって来ていた。そして石小僧共は一斉に震えだし、オレらに向かって突進を仕掛けて来た。ギリギリ躱す事が出来たが、数が多く反撃は難しい。


「逃げる素振りが見られないな。コイツらにぶつかったらヤバいぞ。」

「あぁ?ぶつかる前に受け止めればいいだろ?」

「お前から見たら石ころでも、オレらから見たらコイツら岩だからな?」


 どうにも感覚がずれているクーディに言い聞かつつ、再び襲い掛かって来る石小僧共の攻撃をいなしていく。

 オレはアサガオを抱えた状態のまま横にすぐに移動し、石小僧の衝突を回避していく。クーディは回避では無く、飛んできた石小僧を今まで背中に背負っていた長柄の槌を片手で持って叩いて落としていった。さすがと言うか。そう感心している場合ではない。まだ石小僧共はオレらに襲い掛かって来る様子だ。一切逃げる様子を見せず再びオレら目掛けて突進して飛んできた。

 石小僧との衝突で怪我する話はよくある。だがそれらは全て石小僧が攻撃の意で行ったワケではなく転んだり何かの拍子に坂を転げ落ちた事による事故によるものだ。しかし今、コイツらは明確な故意でオレらに攻撃を行っている。コレは森で襲い掛かって来たオオカミや洞窟の傀儡と同じだ。コイツらも同様に異変によって攻撃的な性質に変わっている事になる。


「このままだとらく石事故ならぬ、らく石事件になるな。いや、この場合らく石じゃなくて突石になるか?」

「言ってる場合か。」


 防御力のあるクーディはアサガオと同様に呑気な性格をしている。

 ちなみにアサガオは、先ほどの石小僧の突撃にビビりはしたが、オレらが難なく防いだからか今では怖がる様子は無くむしろオレの速い動きが楽しくて笑っていた。本当に呑気なヤツらだな。

 構わずオレは急いでアサガオを岩陰に避難させ、収納魔法を使い剣を仕舞う代わりに仕舞っておいた別の武器を取り出した。取り出したのはクーディのものよりも小さい鈍器だが、この場で適応なのはわかっているが両手持ちだから両の手が塞がり落ち着かない。


「おい、かまえがなってないぞ。肩が力んでる。」

「うっせ!わあってるよ。」


 慣れない武器故に、動く前の姿勢すらなってないのはオレでもわかる。だが今はそんな事を気にしている場面ではない。クーディと共に今目の前にはすぐにでもこちらに攻撃を仕掛けようと石小僧共が待ち構えている。


「かくにんだが、『微元素生物あいつら』への攻げきはご法度にはならないんだよな?」

「あぁ、アイツら生物の名を冠しているが明確には生物では無いらしいからな。その辺りの基準はオレにもわからんが。」


 生物の殺生は第一の御法度。コレはこの世界の常識だが、例外がある。その一つがさっきクーディが言ったヤツだ。

 微元素生物は呼称のため生物と称されているが、生物としても機能は無く、不明な点は数多い。一つ確かなのは生殖機能が無くアイツらは自然発生で増えている事くらいだ。それ故に他の生物とは異なり微元素生物への攻撃、殺生は禁止されていない。

 なんの脈絡も無く石小僧の突進攻撃が繰り出された。今度は躱しつつソレを持っている鈍器、固い木製の槌で叩き落とす。木製ではあるが岩相手でも効果はあるらしい。損傷を与える事は出来ている様だ。

 隣でオレ以上に石小僧共の猛攻に反し槌を振り回して次々に叩き落としているクーディの様は、先ほどまで歩く事すら面倒くさがっていた人物と同一とは思えない勇ましさだ。攻撃の合間にだらけた様子を見せて、やっとソイツがクーディだと思い出す位だ。

 しかし、結構な数の石小僧を倒していったハズだが、一向に減っている気がしない。これでは戦闘によって足止めされて先に進めない。だからオレからクーディに提案をした。


「コイツら突っ切って先行くぞ。」

「えっいやだ。」

「即答してんじゃねぇよ!」


 作戦とも言えないオレの考えは、最早群れとなった石小僧共の中を走り、もとい無視して突っ走るというものだ。内容が無い様だけに、クーディが如何にも面倒くさい表情をするのは当然。だが、もうこうなっては相手をするだけ体力を消耗するだけだ。幸い石小僧の体は岩なだけに動きは遅い。だから山道を登って高い位置に行けばアイツらも追いつけないハズ。問題は走った先にもアイツらがいるかもしれないという事だ。


「だからクーディ、盾になれ。」

「だからいやだっつってんだろ。」


 クーディは文句を言うが、最適な采配だとオレは思っている。何せアイツの丈夫さはよく知っている。ソレはその種族からくる特性であるからコレは有効活用だと言いたい。

 クーディは半分ではあるが竜人の血を引いている。竜人は強固な身体を持つヒト型種族で、その表面には竜のうろこ、そしてあらゆる攻撃にも耐えうる皮膚を持っている。クーディの場合は混血、片親が竜人とは別の種族であるから、クーディの持つ竜人としての特徴は丈夫さと後は眼位か。

 説明したが、クーディであれば岩の硬さにも耐える事は容易い。最初オレが石小僧を危険視している時にアイツだけ楽観視していたのが良い証拠だ。なのでヤツには盾役として先陣をを切ってもらいたい。っと言うか決定事項だ、してもらう。


「イヤならここに残って一人で群れの相手してろ。」

「うわ、それはそれでいやだ。」


 オレの説得にやっと納得してくれたらしく、すごすごと陣形を立て直した。オレは隠れてヒマそうにしていたアサガオを片手で脇に挟むようにして持ち上げ、走る準備をした。オレらが何をするのかわからず、それでも何かするのか楽しみにしてアサガオは笑ってた。やっぱり呑気だなホント。

 互いに準備が整ったのを目配せし、せーのの声を合図に動き出した。

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