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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第1章 アサガオとシュロ
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16話 麓で再会

 ヒト付き合いは苦手だ。ソレはよく自覚している。


 もう会わないと決めていた人物、セヴァティアに会いに行く事になった。ソレだけでやる気が削がれる。

 セヴァティアは土地守の一人であり、オレの剣の師匠でもある。まだオレがケンカ慣れしているだけの一般人と変わりない実力を持っていた時期、魔法の基礎をカナイの知り合いが経営する学校で教わる事になり、戦闘っと言うか剣の扱い方を昔馴染みだというセヴァティアから教わるという事になった。最初は何故剣術に限定していたのか疑問だったのだが。


“何?妖精族なら相性の良い弓の扱いを教わるのが良いって?そんな事は無い!妖精だって鍛えれば剣や大剣、両手剣から巨人の包丁だって使える様になる!

 謙虚になるな!わたしが一から面倒をみようお前もこれで立派な剣士の仲間入りだ!”


 イヤそういう問題では無い。

 何なんだあのヒトの剣へのこだわりは。声こそ聞こえはしなかったが、セヴァティアの台詞に抗議する声がオレ以外にいくつも聞こえた気がした。

 たまに、では無かった。セヴァティアはしょっちゅうヒトの話をちゃんと聞いていたかと疑問になる言動ばかりして、こんなのが剣術の師匠で大丈夫かと何度もカナイらに訴えた。だが何故か一斉に目を逸らされて、結局話は流れてそのまま剣の修行をする事になった。めちゃくちゃ不本意だった。

 とは言え、おかげで多少手強い相手でも一応は応戦出来る様になったワケだし、そこは感謝している。しかし、、修行期間のほとんどを剣術の修行に駆り出されて、結果魔法の方は基礎しか教わる事が出来なかったのは未だ不満だ。まぁ基本を教わっているから自己流でも魔法の応用は出来た。妖精族故だろうか。


 オレから見たセヴァティアに関しての事柄はこれくらいか。とにかく剣術の師匠であり、かつ変なヒトという事だと言いたい。他の土地守もセヴァティアとの付き合いには難儀しているらしく、そんなヤツ相手にオレが苦労するのは当然だ。それだけでも苦労していたのに、実際苦労した相手は他にもいる。オレの上司に当たるカナイだって結構我が儘な性格だし、学校内では付き合いの長いファイパもあんなだし。思い出すとオレの周り、濃い性質のヤツらばっかりだ。そういうヒトに会うという道筋でも無意識に歩いてしまっているのか。だったらイヤな筋書きだ。本当に。

 とは言え、会いに行かなくて話は進まない。行かなくても結局カナイに行かされるワケだし。本当に下っ端立場はツラい。話が逸れた。森でのオオカミの事、そして学校での傀儡。そんな騒ぎに関してセヴァティアは土地守としてどうしてたか確認しなくてはいけない。そうなればセヴァティアのいるであろう『山』に行くしかない。そこにいないと最早探すのは至難だ。なのでいてくれないと困る。そんな思惑で今、山に向けて足を進めている。後ろからアサガオも当然着いて来ていて、歩幅の違いからくる距離感を広げない様にこっちも少し歩くのを遅くしている。向かう目的が目的だから歩みが遅くなってるのもあるが。アサガオとしてはこれから向かう場所に対して楽しみがあるのか、常時笑みがこぼれている。いや、いつも笑ってるか。


 山は川を超え、村を抜けて学校へ向かう道中を少し逸れた場所に山の入り口とされる場所がある。以前行った学校の裏手まで山が広がっていて、この西の大陸の北側は山に囲まれ、壁の様になっている。そのためこの辺りの土地に山から降りる様に風が吹いて涼しい気候になっている。暑いよりは寒い方がマシだし、ここはオレにとっては住みやすい場所だ。

 さて、やる気も無く歩いて来てようやっと山の入り口が見えてきた。次は山を登る作業になるのだが、どうしてセヴァティアは坂道しかないこんな山の中に住んでいるんだか。いや、理由は聞いている。全ては修行のためだと本人が口にしていた。オレと出会う前から修行しているらしいのに、一体いつまで修行をするのか。寿命がくるまでですね、ハイ。セヴァティアと言うか、土地守らは皆何年生きているんだ?そこが謎だ。

 そんな事によりもサッサと山を登って、セヴァティアがいるであろう山の中腹に行かなくては日が暮れる。ここまで結構な距離を歩いては来たが、アサガオは一向に疲れを見せない。幼く体も標準より小さいのに底抜けの体力だな。

 入り口辺りには、入り口の目印として小屋が建てられている。以前来た時は山に着いたらそのまま登山開始して休むヒマすら無かったから、あまり覚えていないが確か小屋の中に休憩出来る部屋が用意されているハズ。ここまでずっと歩きだったから、中が少し休んで行くか。


「ホラ、アサ。お前も結構歩いたろ。ちょっとあの小屋に寄って来ぞ。」


 言ったらアッサリと言う事を聞いて、オレの後に続き小屋に向かった。アサガオは我が儘な所があるが、基本的には素直でヒトの言う事をちゃんと聞く事の方が多い。そういう所をもう少し留守番する事にも回してほしい。

 セヴァティアに会う前の休憩として、小屋のドアノブに手を掛け回した。ここはあまりヒトの来ない所だから、中はきっとホコリが貯まっているだろうから、念の為鼻と口を押えてドアを開けた。

 中を見て最初に目に入ったのは案の定と言うか、散らかっているとは言わないが整えられているとも言えない部屋だった。真ん中に置かれたテーブルにはやっぱり薄っすらとだがホコリが積もっていたし、棚の中はほとんどが空で物が置かれていた形跡だけがあった。保存食は一応見つかったが、今は手を付けず念の為に持って来ていたビスケットで食事をする事にした。アサガオは一足先に椅子に座ってテーブルに向かっていた。何故か楽しげに足を揺らしていた。

 オレも椅子に座ろうと部屋の中を進むと、隅に設置されていた寝具から何かが動く音と布の擦れる音が聞こえた。何かいるのは明白だった。油断していた。ヒトの少ない場所だからといって、危険の無い場所ではないのはわかっていたハズなのだが。とにかくアサガオの前に立ち、寝具の方に目を凝らした。そしてすぐに警戒を解いた。なんだと安堵の息を吐き寝具に所へ歩いて行き、寝具の中のソレの頭をはたいた。


「んっ…んん。…いってぇ、なんだよいきなり。」


叩かれたソイツは布団からゆっくりと頭を出し、そのまま肩、そして半身を起して出てきた。薄花色の頭髪をかき、大きく欠伸をした。顔をこちらに向けて、白藍しろあい色のメッシュがやっと見えてから先ほどと変わらず気の抜けた声を出した。


「…あぁ、シュロか。なんだよいきなりたたくなよ。こっちはねてたんだぞ?」

「寝てたじゃねぇよ、クーディ。いるんならいるってメモか何か置いとけよ。」


むちゃ言うなとクーディは愚痴を言う。長く右目が完全に隠れた前髪をどかす様に目をこすり、未だ眠気の抜けない表情のまま欠伸をしてオレに向き直った。その顔色は人間にしては色が良くないが、ソレはクーディに関しては関係無い。


「っつか、ここにいるって事は仕事か?」

「そーそ。ラサさんからセバさん宛てに届け物があってな。」


 あちこち体をかきつつ、息を吐きつつ目線を下げて言葉を吐いた。まるで喋る行為そのものさえも面倒だと聞き取れる雰囲気がダダ漏れだ。今にも再び布団の中に入り、眠りにつこうと準備している様にもとれる。

 クーディはオレと同じ土地守に仕える守仕ではあるが、同時に他の土地守などの有力者に言伝や物資を届ける任務を請け負う立場でもある。それは土地守のラサ、ライラァ・サラが鍛冶師でもあり、そちらの仕事の補助のためにあちこち動き回っているのだが、当の本人は大変な物臭で事ある毎に居眠りをしてサボる癖がある。要は問題児ってヤツだ。

 補足だが、クーディはセヴァティアの事を『セバ』と縮めて言う。長い文章や単語を発するのも面倒臭がっているのが丸わかりだ。因みに説明ではオレはセヴァティアと本名で言っているが、口では『セティー』と呼んでいる。さすがにオレもセヴァティアという名は長いと思っているし、正直誰の名前も覚えるのは苦手だ。クーディの名前だってオレが縮めた呼称だし。


「そういやお前は?シュロが山に来るなんて、何かやらかした後か?」

「何だよその前提は。こっちだって仕事みてぇなモンだ。」


 また何か勘違いされるのもイヤだから、クーディにここに来た目的の他に今まで起こった異変の事を話した。やっぱりと言うか話している途中で頭をかきながら欠伸をし出し、話を半分ほど聞き流している様子が見れた。聞け。

 オレらが話しているのを見ていたアサガオも、話に加わりたいといった様子でオレらに近寄り見上げながらオレらの様子を見てウロチョロしていた。そんなアサガオに気付いたクーディは、アサガオに話し掛け自分の近くへと誘った。


「おーちびすけ、お前も来てたか。そりゃそうか、シュロがいるんだもんなぁ。」


 アサガオに気付いた瞬間から、クーディは楽しげにアサガオに向かって口を開いた。そんな軽い調子クーディの言葉を聞いて、アサガオは頬を膨らませてクーディに文句を言った。アサガオは『小さい』と言われるのが何より気に入らず、クーディからよく自身が小さいという意味で『ちびすけ』と呼ばれる事に怒り、攻撃力のまったく無い平手打ちを繰り出して反論をしている。そんな光景はこの二人にとっては日常茶飯事で、クーディは慣れた様子でアサガオを宥めていた。そんな時も顔は楽しげにしている様子から、反省してちびすけを改めるという気は無さそうだ。

 ところでオレの話は聞いているか?


「あぁ聞いてる聞いてる、ようするにお前もおれと同じ目的で来たってことだろ?」


 ちゃんと話を理解していて何よりだ。もし聞いてもおらず理解もしていなかったらクーディの顔面に向かって拳を突きだすつもりでいた。

 するとならばとクーディが提案して来た。


「そんじゃさ、セバん所までいっしょって事でもいいよな。」


 確かに他人と同行する分には問題は無い。この山は土地守が駐在している場所でもあると同時に、あの修行漬けのセヴァティアが今現在修行の場として使っている場所だ。山登りには危険が付き物だが、そういう事情でより一層危険度の多い場所と捉えておくべきだ。だからオレは来たくないと思っているし、来るなら人手は欲しい。物臭が目立つ相手クーディではあるが、いて助かるのが正直な答えだ。何よりクーディは仕事内容に反して戦闘能力もある。そこはオレは認めている。そういう点でオレ自身クーディとの同行を願っている気持ちがある。


「んじゃあ、たたかう事になったら代わりにたのむわぁ。」

「言うと思ったわ、ちゃんと動け!」


 結局不安の多い提案に乗ってしまったが、今はあれこれ注文を言うヒマは無い。先を急ぎたいし、今山の天気が良い状態で進みたいから話はそこで終わっておいた。

 さて、危険だとわかっている場所に行くにあたって、アサガオを見た。当然の様にこうして一緒にいるのだからこのまま山を登るについて来る事になる。アサガオが山登りに耐えられるかという事に関しては先ほどの通り体力はあるし、嬉々としてオレらについて来るのは間違いない。戦闘は危険となればさすがにオレから離れる事も勝手にうろつく事は無いはず。クーディも一緒になるワケだし、オレとしては問題は無い。何よりこの場に残すなど目を離す事自体が後先が見えなくて怖い。一緒にいる方が安心する。心労的な意味でな。

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