12話 校外で騒ぐ
何事だと他のヤツも騒ぎ出し、廊下に出て行く者がいた。オレもその一人だ。アサガオもだが、ファイパも何何!?と大声で騒いでウルサいから横っ腹に再び手刀を刺して黙らせた。
さすがに騒ぎが起これば、騒ぎの起きた様子や原因を見たくなるものだ。騒ぎの発生源であろう場所に走り出したオレの後を当然アサガオは着いて来た。遅れてファイパもオレの後に続いた。この騒ぎのせいで食事をとり損ねる事になるが、まだ動けなくなるほどではないから大丈夫だろう。たまたま近くにいた教師は騒ぎに同様する生徒を宥めつつ他の先生に知らせてくるとか、皆は外に避難しろだの言ってオレらから離れた。
オレはそんな教師の言葉を無視して騒ぎ声がする方に向かうと、出所は外の訓練所からだというのがわかった。訓練所がある方へと出る扉から出ると、どこからか走ってきたヤツらが集まって肩で息をしていた。走って来た方を見ると洞窟が見える。確かあそこも訓練用として使われている場所だったハズだ。と言う事は息をきらしているヤツらは皆その洞窟から出てきたばかりか。
「何があったんだ?」
「ハァッハァ…わかんない。なんか…急に外に出ろって言われて、奥の方…何かいたようには見えたんだけど。」
本当に当然過ぎて、周りは何が起きたか把握する前にここまで来てしまった状態の様だ。少し経つとまたヒトが来た。明らかに怪我をしているヤツがいる。ソイツに何があったか聞くと、憔悴した様な顔でポツリポツリと事情を話した。
どうやらコイツらは課題の為に、同じ用件のヤツらと組んで洞窟で採取をしていた所、突然大きな影が視界に入ったと思ったらソイツが自分らに襲い掛かってきたとの事だ。
「あれって確か、試験なんかで使われてる大型の魔法傀儡だったハズよね。」
「あぁ今度、洞窟での実戦試験で使うからって先に洞窟には置いてあるって聞いたけど。あれって勝手に動いちゃようなやつだっけか?」
「いや、結局は魔力はを込めないと動かない仕様のはずだから、そのままにしても勝手に動くなんてないっしょ。」
一緒に話を聞いていた他の生徒がそんな会話をしていた。魔法の道具が暴走を起こすなんてのはよき聞く話だが、今回の物はそんな単純な話ではなさそうだ。
そうこうしている内に教師が来て、生徒を集めて安否と状況を確認していた。
「今対処出来る先生が出払っているので、戻って来られるまで結界を張って置きます。中に残った生徒はいないのですね?」
中から出てきたヤツが皆が首を縦に振った。それを見て教師は生徒にあれこれ言った後、洞窟に入り口に向かい立って詠唱を始めた。特にこれと言ってオレが手出しする事も無いだろうと、そんな光景をファイパと並んで見ていた。
そんな光景を中に、女生徒二人の片方が何か慌てた様子をしているのが目に留まった。もう片方がソイツを宥めている様だが、終いには慌ててる方が洞窟の方に向かってソレを周りのヤツが止めようとし出した。一体何があったんだと思いつつ、他人事だと決めて見守る事に徹していると、何時の間にかファイパが女生徒二人の傍に立っていた。
「何があったの?」
突然のファイパの登場に二人は意表を疲れた表情をしたが、相手がファイパだと気づくと直ぐに立ち直り事情を話した。聞いている間、ファイパの顔からいつものお調子者は無かった。オレも聞き耳を立てると、どうやら慌てた様子を見せていた方、彼女が洞窟内に落し物をしたのだと言う。隣の友人から後で先生に言って取ってきてもらおうと提案したが、とても大事な物でもしも中で遭遇したヤツに壊されていたら気が気ではないと先ほどのやり取りになっていたと。
そりゃ友人が言った通りが良いだろうとオレの中でもそちらに同意した。それでも彼女の方はそれでは納得がいかないと言いたげな表情に出ていた。周りのヤツらもさっきの様に飛び出して行きそうで内心焦るが見られた。そんな気まずい空気の中、ソレは風船を針で刺す様な声だった。
「洞窟、どこまでもぐったの?」
まだ二人の傍に立って話を聞いていたファイパが質問をした。彼女は少し戸惑いつつも自分が洞窟のどこまで進んだかをファイパに伝えた。
そこまで聞いたファイパは分かったとだけ二人に言い、そのまま走り出し、振り返らずに洞窟の方に向かった。止める間もなく走り出したからオレも二人も誰もファイパに何も出来ないまま茫然と立ち尽くしていた。
「では、結界を張りましたので暫くは洞窟には近づかないよう。…ってちょっと!?」
そりゃあ走って洞窟に向かって来るヤツが来たら戸惑うのは当然だった。教師は魔法を使った後で少し油断していた事もあり、ファイパの洞窟侵入を許す事になった。
「今入ったら駄目ですって!」
「ただの通りすがりです!お気にせずに!」
「何言ってるんですか!?」
教師の制止にも振り返らず、結局ファイパは洞窟の奥へと進んで行ってしまった。洞窟で当然の事故なのかも詳細がわからない事態だって言うのに、ただでさえ不穏な雰囲気の中でアイツの行動に皆不安顔を徐々に表に滲み出した。
オレはまたか、とただただ呆れてアイツが入って行った洞窟を見つめていた。フーと息を吹き、特に意味も無く頭をかいてから、助走をかけずオレも走った。
「通りすがり其の二だ。」
「えっちょっ!あなたまで何ですか!?」
ファイパとは逆の方から教師のすぐ横を通り、ちょっと!?と声を張り上げる教師の声にオレも振り返らず洞窟に侵入した。オレの後をアサガオが着いて来てるのは承知済みだ。今はファイパに追いつくのを優先にして足を速めた。
洞窟の中、まだ入り口からの空気の流れが近い位置にファイパは立ち止まって一休みしていた。何か独り言を言っているのがここからでも聞こえた。
「あーどうしよ…入ったら思ったりこわいなぁ。ここでつごう良くシュロ来てくんないかなぁ?」
そんな事を呟いている人物の出会い頭と言うか挨拶代りと言うか、とりあえず背後を見せているファイパ目掛けて走り、勢いのまま横に伸ばした腕でファイパの頭を打ってやった。ソイツが地面に頭を突っ込んだ様に倒れたのを見守った。
「さて、まず言う事があるんじゃないか?」
「ものすごく痛い!」
だろうなと表情で返事をしてやった。だが言った通り来てやったんだから、文句は流す事にした。こっちから軽く不意打ちをかました事を謝罪すると、続けてファイパの口から弱弱しく謝罪の言葉が出た。
「ったく…話を聞いて直ぐに突っ込むって、計画性の無いしそもそもお前の学生レベルの実力じゃ無理だろ。」
「だけどさぁ、困ってた感じだったから見てて気になるじゃん?だから体が動いたって言うか、気づいたら足が動いてたって言うかさぁ。」
もごもごと言い訳にもならない事をを言うコイツに、そんなコイツの後に続いてしまった自分にも怒りとも言わない感情が湧きつつ、どう言えばコイツは引き返すかを考えながら聞いた。
「さっき話してたヤツ、お前の友人か何かか?」
「えっちがうよ?」
話はよくするけど友人呼びする程では無いよーと、学校前で会った時の様な笑い顔を見せて断言した。コイツって出会った瞬間からもう友人だ!と言いそうなお調子者ではあるが、意外と線引きはしっかりするタイプだ。他人に対して違う時自分は違うと断言出来る正直者である。そういうヤツが、こんな無茶な事を自分からするのは何故か。聞いたら答えた。
「知ってて何もしないってのが、いやだったから!」
要はコイツはただのお節介ってだけだ。関係が無い事にも首を突っ込む面倒な性格だ。そんなヤツを放っておくとどうなるかは一目瞭然、コイツと関わりがあるオレにも何かしらの巻き添えを喰うに決まってる。ソレは御免蒙る。
「…言っても戻る気は無いんだな?」
「無いよ。」
またハッキリ即答しやがって。オレは別に何かと戦っていたワケでは無いが降参の意としてファイパの進行を許す事にした。アサガオと同様に、コイツをほっておいておく方が危険だ。
「だからシュロも一緒に来てほしいな!」
「本当に正直だなお前。…ハァ、わかった。だが先走るなよ?」
わかった!と言うファイパの声が洞窟の狭い空間に響いた。
その時後ろにいたアサガオがいつの間にかオレらの間に立ち、指を三本立ててヤル気に満ちた表情をしていた。一瞬指を二本立てている様に見えたが、直ぐに三本に直した。コレはアレか?オレがさっき『其の二』とか言ったからソレを真似したつもりか?アサガオはしょっちゅう意図の読めない事をする。一先ずオレの後ろにいろとだけ言っといた。
「よーし!シュロやアサガオちゃんも仲間になったし、先生が追いかけて来る前にちゃちゃーっと探索しに行くぞ!」
大分調子づいたファイパは声をや腕上げ、鼓舞して前へと勢いをつけて進んで行った。ちなみに道はうろおぼえだから!と言ってきたファイパに、前になら出過ぎるなとオレは背後から気合を込めてファイパの背中に回し蹴りを喰らわせた。




