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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第3章 クレソンとカルミアともう一人
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21話 情報が集まる

 異変の情報を入手する為に訪れた魔法協会東支部の研究所にて、三人はそこで再び謎の物体に襲われ、しかも研究所も謎の物体の襲撃を受けており、極めて危険な状況となっていた。

 その中、研究員らしき人物を救出したものの、事情によりカルミアとスズランはクレソンと別行動をする事となった。助けた研究員を連れて、クレソンは研究所で分かったという異変の情報を入手すべく移動していた。一方のカルミアとスズランは―


「迷った!」


 スズランが研究所内で気になる事があると率先して研究所内を歩き回っていたが、結果として自分らが今どこにいるかも分からなくなり、研究所内で迷子となってしまった。

 カルミアはスズランに対し怒り事こそしなかったが、その表情には意気消沈した事がみられ、スズランはカルミアに対して何かをしようと慌てふためいた。

 そんな混乱状態の二人の事など顧みないようにして不定形の物体が再び群れを成して襲い掛かる。


「もー!こっちはタイヘンな目にあってるっていうのにー!」


 目的の場所も、クレソンらを見つける事が出来ない鬱憤を晴らす為に、感情を込めた攻撃を不定形の物体達に向けて放つ。一体二体と倒していき、粗方撃破すると開いた場所からスズランの手を引き走ってその場を離れた。

 数を減らしては退散を繰り返し、かなりの距離を歩き回ったと二人は実感していた。


「ウーン…スズちゃん!もっかいユビさして!」


 言われてスズランが指したのは、上のどこか虚空だった。それはさっきもやった同じ方向、同じ動作だった。

 どういう原理かはカルミアには、もしかしたらスズランにも分かっていないかもしれないが、スズランが指差し、目指す場所には何かがあるという理由の無い確信があった。

 スズランは案内役だ。そう言った、別れる直前に言った隊長の言葉を今もカルミアは覚えていた。確かに今までの場所でも、大雑把ではあったが魔法晶の場所を当てた。もしかしたら、スズランには魔法の力が感じる事が出来るのか、もしくは肉眼で見えているのかもしれない。

 今スズランが追っているのが何かはカルミアには分からないが、スズランが自分から動いているのなら、それはスズランにとって大事なものなのだろう。ならば一緒に行くしかないとカルミアはスズランを守りつつ、スズランの差し方へと進んだ。


 一方のクレソン、研究員と共に情報を入手すべく、情報が保管されているとされる部屋を目指している最中であった。研究所内は研究員が『精霊』と称している敵対物体が至る所に徘徊しており、移動が難しい。研究員が非戦闘員である事も移動を難しくしている一因ではあるが、そういった事に文句は言っていられなかった。

 とある一室まで辿り着き、研究員は一足先に中に入り、棚の中の書類を漁った。クレソンは入り口付近に立ち見張りをした。現状精霊は視認出来る場所にいないが、そもそもが生き物とは違う存在だ。油断は出来なかった。


「あっありました!確かこれです!」


 研究員が叫ぶようにして言い、手にしたのは探していた場所から引き出した紙束だった。研究員の声を聞いて、辺りを一度見渡してから部屋へと入って研究員の持つ紙束を一緒に見た。


「これは…魔素の濃度か。思ったよりも減っていないな?」

「はい。今まで魔法が不発してしまうのは、魔素が何やらかの原因で減っていると考えられていました。しかし、実際は魔素は減少していない事が判ったんです。」


 クレソンが考えていた事は、研究員が言った事そのままで、異変は魔素が減少しているせいだと思っていた。今その考えが否定され、クレソンは次にあの『精霊』と称されたもの達についての話をした。


「あの『精霊』って呼ばれている奴らと、俺が知っている魔法の力の根源である『精霊』は本当に同一なのか?」


 気になる所はまずそこだった。クレソンが知る『精霊』は一目でに見る事の出来ない存在で、魔法の力である魔素を放出するむしろヒトに力を貸す、助ける存在である。

 しかし、今自分らの目の前に現れた『精霊』は一目でも見えるし、更には自分らに害を及ぼす存在だ。あまりにもクレソンが知る『精霊』とはかけ離れた存在だと思われる。

 『精霊』と『魔素』はどちらも目に見えないという共通点があり、どちらも存在自体はの認知されてはいるが詳細が良く知られていないのも同じだ。

 しかし、その見えない存在に関して重要な事があるのだと研究員が告げた。


「あなたは、魔法が使えなくなったのと同時に妖精種が病で倒れたというのは知っていますか?」


 それは以前から聞いていて、ここへ来る途中に御者から話題された事だった。何故妖精種だけが病にかかるのか、医者にも分からず原因究明も治療も進まずにいた。


「魔法不発と同時期に発症が見られた事から、我々は妖精種の特性を調べ、他の種族との違いを模索しました。そして妖精種とそれ以外の種族との一番の違いに、我々は気付きました。

 それが、妖精は精霊を知覚出来る、という能力です。」


 『精霊』を知覚、つまり存在を認知出来る能力があるのはクレソンもある程度知ってはいたが、どれほど知覚出来るのかまでは知らなかった。

 研究員が言うに、妖精種の知覚の程度は近くに居る精霊の存在を察する程度のものらしい。元来生き物とは違う存在『精霊』には実体という概念が無くただ在るだけ存在である精霊を察知出来るのは確かに凄い事だ。

 そもそも妖精種は魔法の設計図とも言える『術識じゅつしき』を視認出来る訳だから、『精霊』の存在を知覚出来るのは納得だとクレソンは後々になって納得した。


「つまり、その『精霊』が今俺らでも見えているのは病気同様異変の一角だと?」

「はい。『精霊』に何らかの異変が生じた事で、『精霊』を唯一知覚出来る妖精種にも連鎖的に異変を傍受してしまっているというのが見解です。」


 妖精種というのは魔法に対して感受性が高く、『精霊』に生じた異変に対して強く影響を受けやすい故に病気と言う形でうつった異変が表面化したのだと研究員は語った。

 そして『精霊』の異変により『精霊』から放出される魔素にも悪い影響が出て、魔法も不発してしまっている事らしい。燃料に不純物が混ざって火が燃えにくくなる、または燃えなくなってしまうのと同一の現象であるとクレソンは知った。


「じゃあ今回の異変は『精霊』をどうにかしないといけない、という事か。でも、見えない触れない『精霊』をどうにかする事なんて」

「する必要あるゥ?」


 クレソンと研究員以外の声が背後から聞こえ、クレソンと研究員は声の方へと勢い良く振り返り見た。そこにはクレソンのは見た事ある、そして見たくなかった存在がまるで随分と長い間暇をしていたかの様に足を降らしながら立つメーデンがいた。


「話は終わったァ?んじゃあ、消えようかぁ。」


 言い終えて直ぐにメーデンは音も無くクレソンの直ぐ傍まで近づき、鎌でクレソンの首を斬ろうとしたが、間一髪でクレソンは持っていた銃器で防いだ。本当にぎりぎりだった為、少しだけ髪が切られた。

 研究員は直後も何が起きたか把握出来ず、大きな鎌が自分の直ぐ近くにあるのを見てやっと襲撃されたと気付き、悲鳴を上げて尻餅をついた。


「いやいや、まさかこんな早く再会するとは、もしかして君俺らの追っかけ(ファン)かな?」

「えへへェ、何言ってるか分かんないやァ。」


 会話をするが、実際はクレソンにそんな余裕は無く、何とか隙を見つけようとしていたが見つからない。むしろ相手の方が余裕があり、その分隙が見つけ辛くなっていた。

 その余裕は油断ではない為に、相手は全力でクレソンに攻撃を仕掛けた。今の攻撃もほんの数秒遅れていたら首と胴体が永久的に分かれていたとクレソンは直感した。

 攻撃を防がれ、メーデンの方が下がった。その瞬間銃器でメーデンに向かって撃ったがあたらない。鎌の刃で弾かれ跳弾し、一発が研究員の頬を掠った。研究員は短い悲鳴を上げ、物陰へと非難した。

 狭い室内に居るとは思わせない鎌捌きに、クレソンは銃器を構えながらも次の攻撃の機会を掴めずにいた。だが銃器を下ろす事はしなかった。


「ところで、何しにここに来たのかな?俺に用事があるのかな?」

「あァ、ここには待ち伏せで来たんだよォ。ついでにここで色々と消せば『こっち』の都合が良いからねェ。」


 案外簡単に口を開いたが、話を聞きメーデンの目的がこちらの妨害なのを確信した。理由は分からないが相手を無力化しなくてはいかないという明確な目標が出来た。

 クレソンは落ちていた書類束をメーデンに向かって投げた。自分に向かって投げられた紙にメーデンは驚く事も無く紙を鎌で一振りで細切れにした。

 そんなメーデンの動きは分かっていたクレソンは、持っていた点火具で火を点け、それをメーデンの方へと投げた。細切れにされた紙に火が点こうとした時、メーデンは躱すどころか飛んできた火をその手で掴み取った。


「うわすごっ!火直接触って大丈夫なの?」


 驚くクレソンにメーデンは自慢げに笑った。


「うんそうだよォ!こんくらいの火じャ、怖くも何ともないよォ。」

「そっかぁ…じゃあ、もう少し大きめの火はどうかな?」


 言った直後、クレソンは研究員の方へと駆け寄り直ぐに伏せた。次の瞬間、部屋の中で大きな火花が散った。

 火花が収まった後、部屋の中は火花が散った事により発生した煙が充満し、クレソンと研究員は煙で咽て咳き込んだ。


「げほっげほっ!今…ぐっ、紙に何か点けてから投げてましたね?」

「へっふ!…そう、ちょっと持ってた火薬を、けふっ!紙に擦り付けたものでね。山小人の所で買った奴だから、結構良い感じに弾けたな。」


 自分が投げた火薬の威力に感心しつつ部屋を見渡した。部屋は紙など火が点けば大惨事になるであろう状態だったにも関わらず、火花が収まり煙が少し晴れてきてから見ても無傷だった。それは自分らの状態も変わらなかった。


「さすが魔法を取り扱う建物の一室だ。これくらいの火じゃ、簡単に資料に使われている紙には燃え移らかったか。」

「当たり前です!今でこそ魔法陣による魔法の展開も難しくなっていますが、ここの部屋に施された術識は簡単にはなくなりません!…多少動作に不備が見られますから、正直今のもひやひやしましたが。」


 自分らも伏せて躱しはしつつも、多少火傷をして体の所々が痛みはするが、どれも掠り傷程度で済んでいた。しかし魂台となる部屋の方は、さっき研究員が言った通り、魔法不発による魔法具の不備も見られるが、資料を守る部屋に彫られた術識そのものは健在だった。

 もちろんクレソンはその事を事前に知っていて、だからこそこんな無茶な行動をとれた。しかし、相手はどこかヒト離れした動きをし、言動にもヒトならざる箇所が見られた。だからクレソンは、部屋を見渡している最中もメーデンが立っている場所への注意を怠らなかった。

 そして煙が晴れていき、メーデンが立つ場所を注視した。

 そんなクレソンに肩に、鎌の一撃が加えられた。

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